ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

The Sperm / Pekka Airaksinen / Samsa Trio-Works 1968-76

Pekka Airaksinen - Wikipedia

フィンランドアヴァンギャルド楽家、Pekka Airaksinenの重要な初期音源が5Vinyl Boxとしてリイシューされました。John GageやStockhausenに影響を受けた彼は、60年代後半にThe Sperm(何とも凄い名前ですが)というバンドを始めます。名前のごとく猥雑なライブ・パフォーマンスで、メンバーが逮捕されるなどで1970年に解散してしまう。その後、本人名義での活動を始めます。併せてSamsa Trio、Gandhi-Freud、Ajraxin、そしてコラボレーションなど様々なスタイルや名義でサイケからジャズ、そして電子音楽まで奏でているアーティストであります。

 

The Sperm / Pekka Airaksinen / Samsa Trio-Works 1968-76(5Vinyl Box)

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メディアでの露出を避けていたことや、90年以降は自らのレーベルでCDrによる新作やリイシューが中心だった為、入手困難でした。 私がPekka Airaksinenで持っているのは、2003年にCDでリリースされたコンピレーション盤「Madam I'm Adam」です。の足跡を知るうえでの最適なアルバムであります。もちろん、このBoxに収録されているThe Sperm「Shh!」やファースト・アルバム「One Point Music」からも選曲されています。ただ、全盛期を深く知る為には、このBoxを買うしかなかったのであります。

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今回リイシューされたのは、

1)Sperm&Omar Williams / 3rd Erection、Pagoda

1968年のThe Spermの7インチ3rd Erection+ボーナス音源、1973年のOmar Williams&Pekka Airaksinen名義の7インチPagoda

 

2)Sperm / Shh!

1970年の The SpermのアルバムShh! 

 

3)Samsa Trio

1972年のSamsa Trioというジャズ・ユニットのアルバム

 

4) Pekka Airaksinen / One Point Music、Prem

1972年のPekka Airaksinenのファースト・アルバムOne Point Music Premは、Sperm / Shh!の1998年CDrでリイシューした時のボーナス音源

 

5)Pekka Airaksinen / Golden Age、Afrodite

1976年Pekka Airaksinenのセカンド・アルバムGolden Age Afroditeは、Golden Age制作時のアウトテイクなのかな?17分の大作

 

以上の5枚であります。オリジナルそのままの音源から7インチのコンピレーション、そして、未発表音源までも収録されています。これがこの時代に録音されたすべての音源かと思いきや、実はこのBox、6枚組もあるんですよ。Afrodipankaraと題された未発表音源集が追加になっています。6枚Boxの方が欲しかったですけどね。Afrodipankaraは単品リリースもされているようです。各アルバム・ジャケットはオリジナルではなく、Boxとしての統一された白黒のデザインに変更しています。

 

この中で、衝撃的なのはThe Spermの7インチ3rd Erection+ボーナス音源であります。呪縛に執り付かれたヴォーカルを起用してサイケデリックで危ないサウンドを展開しています。どうやら、ここにクレジットされているメンバーが逮捕されたようです。その後にリリースされたアルバムShh! では、メンバーを変えてヴォーカル無しのドローン展開を行なっています。昔、この曲Korvapoliklinikka Hesperiaを初めて聴いた時にも衝撃が走りましたが、7インチ3rd Erection+ボーナス音源を聴いてしまってからだと、ちょっと霞んでしまいますね。でも、Shh! がドローン、実験音楽として歴史に残る1枚であることは確かです。The SpermでPekka Airaksinenは、ギターやエフェクトを担当しています。

 

そして、The Spermのメンバーと3人でジャズのアルバムを作ったのがSamsa Trioであります。フリーインプロビゼーション的なノリでギター、チョロ、ピアノ、パーカッション、トロンボーン、サックス、フルートと各メンバーのマルチプレヤーとしての実力を発揮。フィンランドの民族楽器カンテラを使うのは彼らならでは。

 

その後にリリースされたのが、Pekka AiraksinenのファーストアルバムOne Point Musicであります。カオスティックに鳴り響く得体の知れないサウンドは、怪しけな異空間を構築してクラウトロックな雰囲気をも感じさせます。素晴らしい1枚です。続くGolden Ageはシンセサイザーやピアノにサックスを絡めた摩訶不思議な世界です。

 

今年はこのBoxの他にも、リイシューの要望が多かった1984年のBuddhas of Golden Lightもリリースされています。ちょっとしたブームなのかもしれません。Buddhas of Golden Lightもオーダーしていますので、こちらも楽しみであります。尚、Pekka Airaksinenは今現在も多数の音源をデジタルオーディオとしてリリースしています。ジャズバンドにケスト参加してライブも行っているようです。