ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

フランスの鬼才Luc Ferrariの未発表音源集「Photophonie」、彼を知る上でのベストな1枚! 

Luc Ferrari Photos (7 of 23) | Last.fm

フランスの鬼才Luc Ferrari(1926~2005)との出会いは、David Grubbsが主宰するレーベルBlue Chopsticksからの「Interrupteur/Tautologos 3」でありました。1999年にリリースされたこのアルバムがBlue Chopsticksの最初のリリースです。当初はよく分らず、どうしてこれなのかなと思っていました。それで、David Grubbsが何故魅了されてしまったのか、何枚か手当たりしだいに聴いていくうちに、Luc Ferrariの摩訶不思議な魅力に取り付かれてしまったのです。

 

50年代初期から音楽活動していた彼は、浜辺の環境音を録音し、それを編集して作品にしてしまうテープ音楽、いわゆるフィールドレコーディングスのオリジネイターとしてミュージック・コンクレート界の巨匠として君臨することになる。彼の音楽は、古典的なオーケストラから、ラジオドラマ、シアター音楽、そして、ミニマル、アンビエント、ドローン、ノイズ・コラージュ、DJリミックスなど、幅広く活動するなかで、David Grubbsがフェバリット・アーティストとして掲げるのも納得である。

 

Luc Ferrari / Photophonie(Vinyl)

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昨年生誕90周年を記念した'73~’92の間に制作された未発表音源を収録した「Photophonie」がリリースされました。Luc Ferrariの様々な要素を取り込んだ全4曲。Luc Ferrariには数々の名作があるけど、彼の全体像を簡単に把握するのであれば、このアルバムで充分に確認の出来るベストな1枚です。今回は4曲それぞれにコメントを書いて紹介します。

 

Photophonie(1989)

A面はアルバム・タイトル・ナンバー「Photophonie」の1曲のみの収録で、フランスの写真家Alain Willaumeの写真展へ捧げた作品です。写真展のBGMとして使用され、写真と音楽によるインスタレーションを実践したようです。Luc Ferrariの全ての要素を取り込んだ傑作です。Alain Willaumeについて、写真を4枚アップします。写真を見ながら曲を聴くと不思議な世界へと導いてくれます。

Alain Willaumeの写真

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La photographie, un chant orphique, par Alain Willaume – Le blog ...

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Alain Willaume - Echoes of Dust and Fracturing - Phases Magazine

 

Il était une fois(1973)

B面1曲目「Il était une fois」は、同じくフランスのエレクトロ・アコースティック集団G.M.E.B.から委託された曲です。G.M.E.B.は作曲家Françoise BarrièreとChristian Clozierが設立した集団です。Luc Ferrari、Brunhild Ferrariのアルバム「Programme Commun」のミックスを担当したのもG.M.E.B.でした。フィールドレコーディングスされた音源を駆使しながら、映画のサントラのような曲です。素晴らしい!

 

Trans Voices(1992)

B面2曲目「Trans Voices」は、女性のヴォイスをレイヤーにサンプリングした51秒と短い曲です。アルバムのアクセントとして、さり気なく挿入する辺りは、流石Luc Ferrariといった感じです。

 
Tu m’écoutes(1975)

B面3曲目「Tu m’écoutes」はカメラメーカー・ライカの広告音源です。ミニマル・ドローンをベースにフィールドレコーディングスされた音をコラージュして作り上げています。ライカをイメージして聴くと臨場感が溢れます。格好いいです。

 

Luc Ferrariを初めて聴くリスナーにお勧めです。もちろんヘビーリスナーも同様です。未だに、こんなに素晴らしい音源があることに驚かされるに違いない!必聴アイテムです。