ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

現代音楽作曲家John Luther Adamsがエオリアンハープの音に影響を受けた“Arctic Dreams(極北の夢)”の世界とは

John Luther Adams: Become Ocean (promo trailer) - YouTube

1953年生まれのJohn Luther Adamsは、1978年から2014年まで住んでいたアラスカの自然にインスピレーションを得たアメリカの現代音楽作曲家です。2014年にピューリッツァー賞と2015年にグラミー賞の両方を受賞しています。現在はニューメキシコとNYを拠点にしていますが、今でもアラスカをテーマにした作品をリリースしています。今回は2021年リリースの最新作 "Arctic Dreams" を取り上げたいと思う。

 

John Luther AdamsArctic Dreams

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本作はJohn Luther Adamsの友人でエッセイスト、ネイチャーライターでもある作家Barry Lopez(1945ー2020)に捧げられており、彼の著書 “Arctic Dreams(極北の夢)” がタイトルとなっている。極北の大地、海、動物たち、氷と光、エスキモー、そしてこの土地をめぐる人々の夢について書かれたノンフィクション本です。日本翻訳版も発刊されています。

 

アラスカのツンドラ地域で聴いたというエオリアンハープの音に影響を受けて、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、ダブルベースによる4人の弦楽器奏者によって再構築したサウンドになっています。そこにアラスカ先住民族イヌイットやグウィッチンで歌われる歌をモチーフにして4人のウィスパーヴォーカルを取り入れた作品です。まさにJohn Luther Adamsならではの世界を披露しています。

 

4人の弦楽器奏者 Robin Lorentz(ヴァイオリン)、Ron Lawrence(ビオラ)、Michael Finckel(チェロ)、Robert Black(ダブルベース)はそれぞれ個々に活動を行っており、クラシック、現代音楽、ジャズ、ロックと幅広く音楽に精通したメンバーが集まっています。一方、4人のヴォーカルMicaela Haslam、Amanda Morrison、 Heather Cairncross、 Simon Grantは声楽アンサブル集団Synergy Vocalsのメンバーでもあり、これまでSteve Reichのアルバムやライブに数多く参加してるグループでもあります。Synergy VocalsとしてJohn Luther Adamsのアルバムに参加するのは今回が初めてです。

 

この総勢8名が織り成すサウンドは、ミニマルを中心に音をレイヤーに重ね合わせて、優しく、時には厳しく、幻想的に鳴り響かせている。民族音楽をベースにしたヴォーカルアンサブルはサウンドに染みこむようにウィスパーしています。プロデューサーやレコーディングなどのスタッフには、毎度お馴染みのNathaniel Reichmanやリリース元Cold Blue MusicのオーナーJim Foxらがクレジットされており、ここ最近の盤石な体制です現代音楽というと小難しさが先行しますが、ドローン、アンビエントニューエイジミュージックのファンにも聴いて欲しい。アラスカの大自然を感じられるパノラマサウンドを堪能してみて下さい。 

 

 

エオリアンハープとは、フレデリック・ショパンの「練習曲 変イ長調 作品25-1」を聴いたロベルト・シューマンが「まるでエオリアンハープを聞いているようだ」と言ったことから、この曲の愛称としても知られている。ウインドハープとも呼ばれており、自然に吹く風によって音を鳴らす弦楽器の一種です。19世紀には実在した楽器なんですね。


 

John Luther Adamsについては、これまでも取り上げています。