ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Alan Vega、一夜限りのロックンロール・セッション!

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パンク、インダストリアル、エレクトロなど様々な要素を駆使していたNYのアンダーグランド・シーンを象徴するユニットSuicideのAlan Vega(1938-2016)。彼の音源については、Suicide、ソロ、コラボレーションなど多数の未発表音源があるようです。今年はそれらがリリースされるAlan Vegaの年になるとも言われています。すでにAlan Vegaの1995~96年にかけて録音した秘蔵アーカイブが “Mutator” としてリリースされました。本日は、その第2弾としてリリースされた、2015年のロックンロール・セッションによる未発表音源の紹介です。

 

Alan Vega / After Dark (A Late Night Rock 'n Roll Session)

本作は亡くなる前年の2015年にフィラデルフィアのロックバンドPink Slip DaddyのメンバーであるBen Vaughn、Barb Dwyer、Palmyra Delranと行った一夜限りのロックンロール・セッションの6曲を収録しています。ギター、ベース、ドラム、キーボードのシンプルな演奏にAlan Vegaのヴォーカルが小気味よく絡む。深夜遅くまでバーボンを片手に酔いしれて、妖しく甘い雰囲気をも感じさせられるサウンドとなっています。

 

元々Alan Vegaは伝統的なロックンロールやブルースをこよなく愛していたのです。Martin RevとSuicideを結成したときに、化学変化が起きたのでしょうね。彼の1980年のソロ・デビューアルバムは、その反動なのか、よりシンプルなロックンロールを演じている。その後はSuicideの呪縛と対比しながら、試行錯誤の中で様々な活動を行っていた。

 

録音から6年を経てやっとリリースされた “After Dark” は、Suicideとは全く関係なくAlan Vegaの心の赴くままに原点回帰した清々しさを感じる。自らの死を感じながらセッションを行っていたのでしょう。アルバムタイトルも色々と興味深いです。きっと、あの世でリリースされたことにホッとしているに違いないと思う。

 

 

 

Alan Vegaは2012年に脳卒中で倒れたが、病苦に耐えながらアルバム制作を続け2016年7月16日に78歳で静かに永眠。翌年の2017年にAlan Vegaのラスト・スタジオアルバム “It” がリリースされます。2010年から亡くなる直前まで録音されていたようです。プロデューサーは妻のLiz Lamereが担当しており、Suicideの呪縛を吹っ飛ばした、まさに俺がSuicideであることを証明した力作です。 “After Dark” は “It” の制作中に一息つく感じで行われていました。聴き比べてください。彼の様々な思いが伝わってきます。