ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

ウクライナ、ロシア、エストニアとソ連の3カ国を渡り歩いてきたヴァイオリン奏者Valentina Goncharovaのアヴァンギャルドなアーカイブ音源!

Valentina Goncharova 写真 (1 / 5 ) | Last.fm

ウクライナキエフ(キーウ)出身の音楽家Valentina Goncharova。16歳からレニングラード(現サンクトペテルブルク)で、ソ連クラシック音楽研究に没頭しヴァイオリンを学ぶ。1984年にエストニアに移り、この頃よりクラシックのみならず、フリージャズ、電子音楽、実験的なロックに興味を持つようになっていた。これまで彼女の音源は1989年に8枚組CD BOX “Document - New Music From Russia - The 80's” の1枚として “Ocean” がリリースされていただけでした。

 

2020年にソ連アーカイブ音源をリリースしているウクライナのレーベルShukaiよりValentina Goncharovaの1987年から91年に残されたその貴重音源を ”Recordings 1987-1991 Vol. 1(2LP)” として、2021年に ”Recordings 1987-1991 Vol. 2(LP)” としてリリース。レコードはすぐに完売となったが、今年になってカセットとしてリイシューされた。両方ともカセットで購入することが出来たので紹介します。

 

Valentina Goncharova / Recordings 1987-1991, Vol. 1

ヴァイオリン、チェロなどの室内楽器にシンセサイザーやフェクターの電子音を融合させて、自宅で改造したオープンテープレコーダーを使用して録音されてた音源10曲を収録。Stockhausen、Xenakis、Ganelin Trio、そしてPierre Boulezに影響を受けて、電子音楽、現代音楽、フリージャズ、クラシックまでと音楽性を発展させたValentina Goncharova。それらの様々な要素を、ソ連アヴァンギャルドな世界との合体によって生まれた怪しいアルバムです。

 

Valentina Goncharova / Recordings 1987-1991, Vol. 2

第2弾は3人のアーティストとのコラボ・ジャムセッション集です。1曲目がラトビアのマルチインストゥルメンタリストで劇場監督でもあるAlexander Aksenov、2曲目から4曲目までがロシアのサックス奏者Sergei Letov、そして後半3曲がなんとフィランドの実験音楽家Pekka Airaksinenとのコラボレーション。劇場、ジャズカフェ、アートギャラリーを使用して、ゲリラ的に即興で行われたのでしょうか?ソ連崩壊が近づく中でのジャムセッションだけに凄さを感じるアルバムです。

 

Valentina Goncharovaは今もエストニアに住んでおり、この数十年間は首都タリンの音楽大学で講師を行っています。ポスト・ソ連のポピュラー音楽について研究しつつ、エストニアやロシア・フィルハーモニー協会と協力してコンサートやチャリティーイベントなども開催していたようです。ウクライナ、ロシア、エストニアソ連の3カ国を渡り歩いてきた彼女は、今も昔も音楽でつながりを表そうとしていたのでしょうね。早く平和になって欲しいです。