ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Spiritualizedの新作は、名盤 “Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space(宇宙遊泳)” の第2章と言える傑作!

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Spiritualizedはイギリスの伝説的なバンドSpacemen 3のメンバーであったJ SpacemanことJason Pierceを中心に1990年に結成。1997年にリリースされた3枚目 “Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space” が彼らの人気を不動のものとした名盤になった。2005年Jasonは重病を患い生死の境を彷徨う。2008年にこのことを題材とした復活作 “Songs In A&E” をリリース。異色作であったが、個人的には大好きなアルバムであります。そして、今年4月に9作目となるアルバム “Everything Was Beautiful” をリリース。本日はその新作を取り上げます。

 

Spiritualized / Everything Was Beautiful

アポロ11号の送信ビープ音?のあとに女声がアルバム・タイトルをアナウンスしてモールス信号が流れる中、1曲目 “Always Together With You” がスタートする。最初に聴いたときすぐに “Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space” を思い出した。同じ手法で再現したのであった。これを行ったのがPierceの娘であるPoppyです。この曲のみの参加でPoppy Spacemanとしてクレジットされています。彼女はミュージシャンじゃなく、コロナと戦っている医療従事者みたいですね。

 

アートワークも “Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space” と同じMark Farrowが担当。面白いことにアルバム・ジャケットはどちらもピルボックス(薬箱)を用いたデザインであり、明らかに意図的に取り入れたように思える。前回はCD12枚組ピル・ボックス仕様が有りました。昔、新宿にあったRough Tradeで購入したことがあった。通常のCDを持っているので、開ける必要がないにも関わらす、封を切ってCDを取り出してしまった。今考えると本当にバカですね。今回も有りそうかな? 7曲収録なので、7錠個別のパッケージでしょうか(笑)

コロナの為、ロックダウンや孤独の中にある人もいたが、逆境の中、成長した人もいた。すべての人々に対する愛のメッセージとJason Pierceは、本作を語っています。娘であるPoppy Spacemanを始として、Spiritualizedに欠かせない毎度お馴染みのJohn Coxon、コラボレーションを行ったことのあるOneidaのドラマーKid Millionsなど、30人以上のミュージシャンやシンガーなどを起用して作られています。

 

Jason Pierceによるとミステイクが幾つもあって、その中からより完成度の高い物をよりブラッシュ・アップしてSpiritualizedらしさ追求しているとのこと。ラフなライブ感覚を持ちつつも繊細で丁寧に作り上げられたサウンド。Jason Pierceの本作に対する拘りを感じる。名盤 “Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space” との類似点を含ませながらも、それとの比較対象ではなく、何か別な次元でのベクトル勝負に臨んでいる気がする。新たなる展開はありません。これまで築き上げてきたことを一度解体しながら、一つ一つの音を積み重ね再構築することで、これこそSpiritualizedというべきサウンドを作り上げています。集大成を表した傑作アルバムだと思う!

 

今年10月に日本でライブが行われます。10月6日の東京Spotify O-EAST、10月8日~9日の朝霧JAMに出演することが決定しています。1998年5月、今は無き新宿リキッドルームのオールナイト・イベントの初来日を観ている自分としては、もの凄く行きたいのは山々であるが、この状況で東京だけは行きたく無かったので泣く泣く諦めてしまった。トップにある写真は私が撮ったフジロック2012年のです。