ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

多彩な要素を含んだSix Organs Of Admittanceの新作「The Veiled Sea」 近年のアルバムの中では1番の傑作です!

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アメリカのギタリストBen ChasnyによるソロプロジェクトSix Organs Of Admittance。2000年代前半のフリーフォーク・シーンの中心的存在として名を知られるようになり、エクスペリメンタル、サイケディリック、ドローンなどの要素も取り入れアルバムごとに変貌しながら活動を行っています。新作がThree Lobed Recordingsよりレコードでリリースされました。

 

Six Organs Of Admittance / The Veiled Sea

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本作はこれまでになく多彩な要素を含んだ全6曲を収録しています。A面B面と分けて紹介します。

 

A面1曲目「Local Clocks」でパーカッションと脈打つようなノイズを絡めた不穏な曲からスタートです。2分半の短い曲で音が途切れることなく2曲目「Somewhere In The Hexagon of Saturn」へと突入します。8分を越える曲でBen Chasnyのゆっくりとしたインプロギター・ワークが徐々にヒートアップしていくのが伝わってくる曲です。3曲目「All That They Left You」も音が途切れることなくヘビィーでサイケなギターのリフでスタートします。この曲はBen Chasnyが影響を受けたギタリスト達の思いをヴォーカルも取り入れてアクティブに表しています。

 

B面はジャーマンロック、クラウトロック的な雰囲気を感じさせてくれる3曲を収録。B面1曲目「Old Dawn」はアンビエントドローンで瞑想的な世界を構築。続く「Last Station, Veiled Sea」ではアンビエントに鳴り響くシンセの音をバックにささやかにヴォーカルが入り、エッジの効いたギターが絡んでいます。この2曲で往年のジャーマンロックの持っている美しさを感じさせます。極めつけはラスト曲にFaustのカヴァー曲「J'ai Mal Aux Dents」をもってきたことです。原曲よりもヘビィーでノイジーに鳴り響かせています。

 

ノイズ、ギターインプロ、ヘビィーサイケ、アンビエントクラウトロックが混在したアルバムです。どの曲も完成度が高く素晴らしいのですが、統一感がないといった批判もあります。しかし、ストイックなまでにギターを抑えて、A面B面もとにラスト曲「All That They Left You」「J'ai Mal Aux Dents」のギター曲に繋げたかったBen Chasnyの思いも感じる。2000年代にアコースティックギターを中心としたフリーフォークの傑作が何作もありますが、今回はあえてアコースティックギターを封印してアルバムを作り上げています。エレキギターはしっかりと掻き鳴らしていますが、Six Organs Of Admittanceとしては少し異色の感じです。単なるギタリストで終りたくないという意欲を感じると共に、でもギタリストであることを再確認させられるサウンドを巧く纏め上げたアルバムだと思う。個人的に近年のアルバムの中では1番の傑作です。

 

Six Organs Of AdmittanceがカヴァーしたFaustの「J'ai Mal Aux Dents」です。

 

 

何と今年11月に初のBen Chasny名義によるアルバムがリリースされます。今のところ1曲しか公開になっていませんが、楽しみです。