ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

孤高のギタリストSteven R. Smithの “In The Spires” 、今後を占う重要なアルバム!

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ロサンゼルスを拠点に活動している孤高のギタリストSteven R. Smithの本人名義による新作 “In The Spires” がリリースされました。彼について当ブログでも何回か取り上げていますが、まずは簡単におさらいしておきましょう。

 

90年代中頃よりソロ活動を行いながら、サイケデリック・バンドMirzaのメンバーでもありました。このMirzaには、カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになったGlenn Donaldson、そして現在Dire Wolves、Angel Archerとして活動を行いながらソロ・ユニットOld Million Eyeとしても活躍しているBrian Lucasらが参加していました。Mirza が解散した2000年代初めにはGlenn Donaldsonが立ち上げた音楽集団Jewelled Antlerの中心的バンドThujaにも参加。その頃にSteven R. Smithはソロ・ユニットHala Stranaとしても活動しています。2000年代後半からはUlaan Khol、Ulaan Markhor、Ulaan Passerine、Ulaan Janthinaとアルバムよって名義を使い分けながら、毎年アルバムを定期にリリースして、現在に至っています。

 

私が彼のことを孤高のギタリストと呼んでいるのは、ライブ活動もせずにひたすら自宅スタジオに籠もり、ギター以外の楽器も全て自分で行いながら曲作りに没頭しているからです。他者との交流もあまり行っていない彼が、近年になってGlenn DonaldsonやBrian Lucasとの親交を深めています。2019年にはこの3人によるユニット43 Odesでアルバムをリリース。更に今年10月リリースのOld Million Eyeの最新アルバム「The Incandescent Switch」にパーカッションニストとして参加しています。Mirzaの頃からフォローしてきたファンとしては、内に籠もるよりは外に目を向けたことで少しホッとしています。

 

Steven R. Smith / In The Spire

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Steven R. Smithとしては2年振りの新作。ギター、ピアノ、ベース、パーカッションの他、ブズーキ、スパイクフィドル、チェロ、ハーモニウム、ハーディ・ガーディといった楽器なども駆使して彼一人での録音です。マスタリングはCauliflower AudioというスタジオのオーナーでもあるAdam Booseが手掛けています。リリース元はブルックリンのCold Moon Recordsで、Steven R. Smith関連としては初リリースです。レーベルではすでに完売ですね。

 

本作はSteven R. Smith初期のユニットHala Stranaの東欧フォーク的な雰囲気とUlaanの様々な名義で実践してきたドローン、アンビエント、ノイズを巧く組み合わせた感じです。冒頭1曲目 ”Needle In The Pin Field“ は、Ulaan Passerine名義で2020年リリース ”To NRDC With Love From Qvästlafve.“ のV.A.盤に収録されている1曲です。この曲をUlaan PasserineではなくSteven R. Smithのアルバムに収録したことにもの凄く意義を感じる。個人的にはこのアルバムを象徴する1曲だと思う。

 

それと、昨年リリースされたUlaan Janthinaでは、あえて通常のギターを抑えたアルバムを作りました。でも今回は違います。9曲目 ”The Bishop Sea“ でのギターワークが素晴らしいです。最初の1分ぐらいのアルペジオ奏法はジミー・ペイジを思い出してしまったw  マルチ・インストゥルメンタル奏者であるけど、基本はやはりギタリストであることを再確認してくれるアルバムでもあります。

 

ギターを中心として多彩な要素を含んだ全11曲収録の “In The Spires”。もはやUlaan云々と言ってる場合じゃないのかもしれません。すべて纏めてSteven R. Smithでいいかと思う。様々な名義を使うことで隠者的なイメージを持たれていたが、いよいよ表舞台に出てくる日も近いと感じた。Steven R. Smithの今後を占う重要なアルバムであることに間違いない。

 

本作には12ページの小冊子もセットになっています。一部Gagik HovhannisyanやDenis Poltoradnevの名前がクレジットされていますが、大半はSteven R. Smithによる作品です。これまでも何作か小冊子が付いていました。彼のフィジカルに対する拘りは半端ないです。

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Steven R. Smithの以前に書いた記事です。                                     

 

 

Alan Vega、一夜限りのロックンロール・セッション!

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パンク、インダストリアル、エレクトロなど様々な要素を駆使していたNYのアンダーグランド・シーンを象徴するユニットSuicideのAlan Vega(1938-2016)。彼の音源については、Suicide、ソロ、コラボレーションなど多数の未発表音源があるようです。今年はそれらがリリースされるAlan Vegaの年になるとも言われています。すでにAlan Vegaの1995~96年にかけて録音した秘蔵アーカイブが “Mutator” としてリリースされました。本日は、その第2弾としてリリースされた、2015年のロックンロール・セッションによる未発表音源の紹介です。

 

Alan Vega / After Dark (A Late Night Rock 'n Roll Session)

本作は亡くなる前年の2015年にフィラデルフィアのロックバンドPink Slip DaddyのメンバーであるBen Vaughn、Barb Dwyer、Palmyra Delranと行った一夜限りのロックンロール・セッションの6曲を収録しています。ギター、ベース、ドラム、キーボードのシンプルな演奏にAlan Vegaのヴォーカルが小気味よく絡む。深夜遅くまでバーボンを片手に酔いしれて、妖しく甘い雰囲気をも感じさせられるサウンドとなっています。

 

元々Alan Vegaは伝統的なロックンロールやブルースをこよなく愛していたのです。Martin RevとSuicideを結成したときに、化学変化が起きたのでしょうね。彼の1980年のソロ・デビューアルバムは、その反動なのか、よりシンプルなロックンロールを演じている。その後はSuicideの呪縛と対比しながら、試行錯誤の中で様々な活動を行っていた。

 

録音から6年を経てやっとリリースされた “After Dark” は、Suicideとは全く関係なくAlan Vegaの心の赴くままに原点回帰した清々しさを感じる。自らの死を感じながらセッションを行っていたのでしょう。アルバムタイトルも色々と興味深いです。きっと、あの世でリリースされたことにホッとしているに違いないと思う。

 

 

 

Alan Vegaは2012年に脳卒中で倒れたが、病苦に耐えながらアルバム制作を続け2016年7月16日に78歳で静かに永眠。翌年の2017年にAlan Vegaのラスト・スタジオアルバム “It” がリリースされます。2010年から亡くなる直前まで録音されていたようです。プロデューサーは妻のLiz Lamereが担当しており、Suicideの呪縛を吹っ飛ばした、まさに俺がSuicideであることを証明した力作です。 “After Dark” は “It” の制作中に一息つく感じで行われていました。聴き比べてください。彼の様々な思いが伝わってきます。


 

 

2人のSamが奏でるサックスとベースのための音楽、その2

ともにLAを拠点とするアンダーグラウンド・ジャズ・シーンで活躍するサックス奏者Sam GendelとベーシストSam Wilkes。2人の存在感を示したのが、2018年の傑作「Music for Saxofone and Bass Guitar」です。その第2弾がLeaving Recordsからカセットでリリースされました。2017年から2021年にかけての録音とクレジットされており、前作のアルバムタイトルそのままで、最後にMore Songsが付いています。2人の盟友であるInc. No WorldのDaniel Agedも数曲でゲスト参加している。

 

Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone and Bass Guitar More Songs

サックスとベースの音を中心にパーカッションやエレクトニックス、そしてフィールドレコーディングされた音がさり気なく絡んだスピリチュアルアンビエントジャズの世界。サックスの音色が変幻自在に鳴り響き、ギターノイズを思わせるような曲もあります。一方でベースはしっとりと、時にはファンキーにサウンドを支えています。前作を踏襲しつつ、より自由でエクスペリメンタルなサウンドに仕上がっています。

 

全9曲収録で様々な試みを行っているにも関わらず、そのトーンや全体的な空気感が同じでグイグイと瞑想へと導いてくれます。絶妙にくぐもった音像が気持ちいいです。彼らのサウンド構築に対する巧さを感じる。何時間でもエンドレスに聴いていたいと思う1枚です。

 

前作についても書いています。

 

 

 

今年色々と注目を集めているSam GendelとSam Wilkesの2人ですが、特にSam Gendelが大人気です。「Music for Saxofone and Bass Guitar More Songs」の少し前にリリースされていたのが、Sam Gendelのアーカイブ音源「Fresh Bread」です。3本組カセットで2012年から2020年にかけて自宅で録音されたパーソナル・アーカイブとライヴ音源で構成されています。日本国内盤のみ3枚組CDとのことです。まだ、しっかりと聴けていませんが、いい感じです。あと、今月にSam Gendelが結成していたジャズトリオIngaの封印されていた音源も日本企画としてCDでリリースします。今後もしっかりとフォローしていくしかないですね。

Sam Gendel / Fresh Bread

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2021年9月のディスカホリック

にほんブログ村に登録して、「音楽ブログ」 と 「洋楽」 のバナーをこのブログに設置してみました。アクセス数を増やすブログじゃないけど、今に拘った音楽をもっと色々な人に知って貰いたいと思ったのです。今のところアクセス数にあまり変化はないですけどねw

 

2021年9月のディスカホリック(購入履歴)は12タイトルの実績でした。このところカセットの購入が増えています。マイナー系はカセット+DLコード付きのアーティストやバンドが多いのも確かです。デジタルで聴くのであれば、使い易いのかもしれませんね。ただ、自分はPCにDLしているけど、デジタルで聴くことは殆ど無いです。今更だけど、CDがどうなっていくのか少し心配になってきました。

 

Zement / Rohstoff(CD) 購入先Amazon.co.jp(Inandout_Japan) 購入価格3,325円

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ドイツ・ヴュルツブルクのChristian Büdel、Philipp HagerによるZementの新作。


 

Matt LaJoie / Pan-Gaia(Cassette) 購入先The Jewel Garden Bandcamp 購入価格$20.00 USD(2,289円)

レーベルFlower Roomオーナーとしても活動しているギタリストMatt LaJoieのThe Jewel Gardenよりリリースの新作カセット。

Matt LaJoieは以前に取り上げています。


 

Rauhan Orkesteri / Tampere Biennale 2018(Cassette) 購入先Tobira Records 購入価格1,462円

フィンランドの大御所フリージャズバンドRauhan OrkesteriのリユニオンとなるTampere Biennale2018でのライブ音源。

 

 

Club Sound Witches / BDTD 269(Cassette) 購入先Tobira Records 購入価格1,632円

Club Sound Witchesの2020年リリースのカセット音源。アップサイクルカセットということで、他のアーティストが制作販売したカセットにそのまま録音しています。録音の空いている所は、ヴォーカル入りのポップスを中心とした元の音源がそのままになっています。もう笑うしかないです。

 

 

Club Sound Witches x DJ White Pimpernell / BDTD 242(Cassette) 購入先Tobira Records 購入価格1,632円

2018年リリースのコラボレーション音源。

Club Sound Witchesは以前に取り上げています。


 

Black Twig Pickers / Friend's Peace(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格3,332円

フィドル(ヴァイオリン)とギター、バンジョーを中心としたBlack Twig Pickersの新作。

 

 

Sir Richard Bishop & Ed Yazijian(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格776円

Sun City GirlsのSir Richard BishopとKustomizedやCul de SacのメンバーでもあったEd Yazijianとの2019年リリースのコラボレーション・アルバム。


 

Alan Vega / After Dark “A Late Night Rock 'n Roll Session”(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,476円

元SuicideのAlan VegaがPink Slip Daddyのメンバーと2015年に行った一夜限りロックンロール・セッション。

 

 

Martin Rev / 3 Raw Takes(Vinyl) 購入先Meditations 購入価格2,555円

元SuicideのMartin Revの08年のアルバム「Les Nymphes」からの未発表テイクを収録した2020年リリースの12インチEP。

 

 

Sam Gendel / Fresh Bread(3Cassette) 購入先Meditations 購入価格4,704円

新進気鋭のサックス奏者Sam Gendelによる2012年から2020年にかけて自宅で録音されたパーソナル・アーカイブとライヴ音源で構成された3本組カセット。

 

 

Sam Gendel & Sam Wilkes / Music For Saxofone & Bass Guitar More Songs(Cassette) 購入先Waltz Online 購入価格2,160円

サックス奏者Sam GendelとベーシストSam Wilkesによるコラボレーション・アルバム「Music for Saxofone and Bass Guitar」の2作目。

1作目は以前に取り上げています。


 

Jeffrey Alexander And The Heavy Lidders(Vinyl) 購入先Diskunion.net 購入価格3,300円

Dire Wolvesの中心メンバーでもあるJeffrey Alexanderのバンド編成による新作。

 

 

人間と自然のつながりをテーマとしたGreen-Houseの生活空間のための音楽!

Green-House makes music for plants and people on Six Songs for Invisible  Gardens

ノンバイナリージェンダーであることを公言しているアーティストOlive ArdizoniのプロジェクトGreen-House。ロサンゼルスを拠点に活動を行い、2020年リリースのデビューEP作 “Six Songs for Invisible Gardens” が、ニューエイジミュージック界の新星として注目を浴びました。そして遂にフル・アルバム “Music For Living Spaces” がLeaving Recordsよりカセットでリリースされました。本日は“Music For Living Spaces”について紹介していきます。

 

Green-House / Music For Living Spaces

”生活空間のための音楽” と題された本作は、日常生活の中で起こり得るちょっとした事柄をOlive Ardizoniの審美眼を通じて再現された作品です。元々Green-Houseのプロジェクトは人間と自然のつながりをテーマとしてスタートしています。それは自宅の庭の片隅で人知れず発芽した植物だったり、ハムスターが野原で楽しそうに踊っているような、そんな身近なことをピアノとフルート、シンセサイザーを中心に構築されたサウンドスケープの世界です。オーガニックに鳴り響くアンビエントが心地よく包み込んでくれます。目新しさは無いけど、Olive Ardizoniの優しさや温もりが十二分に伝わってきます。コロナ渦の真最中に録音されており、様々な憂鬱やストレスの溜まる中、まどろみながら穏やかにコーヒーを啜る時間も必要なのです。そんな心のBGMとして最適な1枚だと思う。

 

Olive Ardizoniはあらゆるものの壁を少なくするという目的も音楽活動の根底にあると語っています。人間と自然の一体化を模索しているのです。Music For Living Spacesは、すべての垣根を乗り越えて無邪気に自分の感覚の思うまま音楽を行っているようにも感じる。このことはノンバイナリージェンダーであることに繫がっているのかな?

 

 

 

Olive Ardizoniは、Diva Dompé、Ami Dang、Nailah HunterといったミュージシャンとニューエイジアンビエントグループGaldre Visionsとしても活動しています。こちらも興味深いです。

Galdre Visions

 

 

Liilaの奏でる禅ミュージックの世界とは

Liila - by mc - Flow State

USホートランドのDanielle DavisとSteven WhitelyによるデュオLiilaは、禅宗寺院での共同生活で出会い結成されます。Liilaとは、サンスクリット語で「創造的な遊び」といった意味だそうです。2人はインドや東南アジアの文化や宗教に興味があったことで禅宗に繫がったのでしょうね。その寺院の片隅にあったシンセサイザーサンプラー、ラップトップで音楽を作り始め、彼らの自宅スタジオで様々なアコースティック楽器を駆使して作り上げたデビュー作 “Soundness Of Mind” が、Not Not Fun Recordsよりカセットでリリースされました。コロナの影響もあって制作には3年近く掛かっています。Liilaのデジタルとフィジカルを融合させたニューエイジミュージックを堪能してみてくだい。

 

Liila / Soundness Of Mind

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本作はアンビエントでミニマルに鳴り響く全7曲を収録しています。シンセを中心としたエレクトロニックなサウンドですが、トランペット、ピアノ、ハーモニウムマリンバなどのアコースティック楽器をモザイクのように散りばめ、温もりのある瞑想の世界を築いています。オープニングナンバー “Appa Wú Wéi” では、トライバルなパーカッションがガムラン音楽をイメージさせ、3曲目“Not One Not Two” では鳥の鳴き声を背景にピアノとシンセが絡んできます。その場面での風景をサウンドにて再現しながら、ラスト曲 “silent illuminating” でスペーシーなミニマル・ミュージックへと発展し、安らぎへと導いてくれます。

 

Liilaの音楽は全体的にオリエンタルな雰囲気が漂っています。彼らの原点となっている禅宗の影響が大きいのでしょうね。そしてカセットケースの中に押し花を封入するという「創造的な遊び」にもホッとしました。このことはアルバムタイトルSoundness Of Mindにも繫がっています。まさに心が洗われる素晴らしいアルバムです。

 

Liilaのインスタグラムです。アルバムデビュー前の2019年にはライブ活動も行っていますね。今後も注目です!

https://www.instagram.com/liila_sounds/?hl=en

 

 

多彩な要素を含んだSix Organs Of Admittanceの新作「The Veiled Sea」 近年のアルバムの中では1番の傑作です!

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アメリカのギタリストBen ChasnyによるソロプロジェクトSix Organs Of Admittance。2000年代前半のフリーフォーク・シーンの中心的存在として名を知られるようになり、エクスペリメンタル、サイケディリック、ドローンなどの要素も取り入れアルバムごとに変貌しながら活動を行っています。新作がThree Lobed Recordingsよりレコードでリリースされました。

 

Six Organs Of Admittance / The Veiled Sea

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本作はこれまでになく多彩な要素を含んだ全6曲を収録しています。A面B面と分けて紹介します。

 

A面1曲目「Local Clocks」でパーカッションと脈打つようなノイズを絡めた不穏な曲からスタートです。2分半の短い曲で音が途切れることなく2曲目「Somewhere In The Hexagon of Saturn」へと突入します。8分を越える曲でBen Chasnyのゆっくりとしたインプロギター・ワークが徐々にヒートアップしていくのが伝わってくる曲です。3曲目「All That They Left You」も音が途切れることなくヘビィーでサイケなギターのリフでスタートします。この曲はBen Chasnyが影響を受けたギタリスト達の思いをヴォーカルも取り入れてアクティブに表しています。

 

B面はジャーマンロック、クラウトロック的な雰囲気を感じさせてくれる3曲を収録。B面1曲目「Old Dawn」はアンビエントドローンで瞑想的な世界を構築。続く「Last Station, Veiled Sea」ではアンビエントに鳴り響くシンセの音をバックにささやかにヴォーカルが入り、エッジの効いたギターが絡んでいます。この2曲で往年のジャーマンロックの持っている美しさを感じさせます。極めつけはラスト曲にFaustのカヴァー曲「J'ai Mal Aux Dents」をもってきたことです。原曲よりもヘビィーでノイジーに鳴り響かせています。

 

ノイズ、ギターインプロ、ヘビィーサイケ、アンビエントクラウトロックが混在したアルバムです。どの曲も完成度が高く素晴らしいのですが、統一感がないといった批判もあります。しかし、ストイックなまでにギターを抑えて、A面B面もとにラスト曲「All That They Left You」「J'ai Mal Aux Dents」のギター曲に繋げたかったBen Chasnyの思いも感じる。2000年代にアコースティックギターを中心としたフリーフォークの傑作が何作もありますが、今回はあえてアコースティックギターを封印してアルバムを作り上げています。エレキギターはしっかりと掻き鳴らしていますが、Six Organs Of Admittanceとしては少し異色の感じです。単なるギタリストで終りたくないという意欲を感じると共に、でもギタリストであることを再確認させられるサウンドを巧く纏め上げたアルバムだと思う。個人的に近年のアルバムの中では1番の傑作です。

 

Six Organs Of AdmittanceがカヴァーしたFaustの「J'ai Mal Aux Dents」です。

 

 

何と今年11月に初のBen Chasny名義によるアルバムがリリースされます。今のところ1曲しか公開になっていませんが、楽しみです。