モロッコの伝統楽器ゲンブリを演奏するベーシストとして存在感を示すマルチ奏者Joshua Abrams。90年代後半にシカゴを拠点としたポスト・ロックバンドTown And Countryでの活動を行いつつ、ソロ活動やSam Prekop、Rob Mazurek、David Grubbsらの作品に参加してきました。あの伝説的なアウトサイダーミュージシャンJandekのライブサポートをJohn McEntireと務めたこともあります。2010年には自身の音楽を追求するためのプロジェクトNatural Information Societyを立ち上げます。本日はベルギーのAguirre RecordsとアメリカのEremite Recordsにより共同リリースされたNatural Information Societyの2年振りの5作目となる新作アルバムを紹介します。
Natural Information Society / Since Time Is Gravity
Natural Information SocietyはJoshua Abramsの演奏するゲンブリを中心に恍惚のミニマリズムを追求することで結成されました。デジタル化された産業が急速に進む中で、音楽における人間性と人道的なものに特別な重点を置きながら新たなる民族音楽を模索してきた。それを理念にして様々な要素をアルバム毎に重ね合わせ来たのであります。メンバーは流動的でありますが、ハーモニウムのLisa Alvaradoがアートワークを含めてこれまのアルバムすべてに参加しています。
本作はベテラン・テナーサックス奏者Ari Brownやコンガやタブラ演奏に定評の高いドラマーHamid Drake、そして日本からは若手のアルトサックス、フルート奏者Mai Sugimotoなど、総勢11名が参加しています。これまでで最も多くのミュージシャン達が、世代を超えて集まり製作されました。特にAri Brownについては、アルバムタイトルSince Time Is Gravityの後にCommunity Ensemble with Ari Brownと明記されています。Ari BrownはNatural Information Societyの2作目にも参加していますが、今回は6人の管楽器奏者がいますので、そこから繰り出されるアンサンブルの象徴的な意味合いもあるのでしょうね。
ゲンブリ、ハーモニウム、ハープと言ったこれまでの定番的な楽器を軸にしてエスニックに鳴り響くパーカッシブなリズムセクションが絡んでいます。そこにAri Brownと中心とした管楽器によるフリージャズ部隊とのアンサンブル対決といった様相です。カオスティックに絡み合った中からドローン・ミニマルミュージックの巨匠達の影響を感じるのも素晴らしいです。Joshua Abramsのゲンブリによるソロ演奏2曲 “Wane” と ”Wax“ を含めて全8曲が収録されています。ソロ演奏曲からはゲンブリに対する彼の思いも伝わってきます。
Alto Saxophone – Nick Mazzarella
Alto Saxophone、Flute – Mai Sugimoto
Bass Clarinet – Jason Stein
Bass、Guimbri – Joshua Abrams
Congas、Tabla、Tar (Drum) – Hamid Drake
Cornet – Ben Lamar Gay
Cornet – Josh Berman
Drums – Mikel Avery
Harmonium – Lisa Alvarado
Harp – Kara Bershad
Tenor Saxophone – Ari Brown
Bandcampでは2曲しか公開になっていません。ユーチューブでJoshua Abramsのゲンブリによるソロ演奏2曲 “Wane” と ”Wax“ をアップしておきます。