ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Peltの新作 “Reticence、Resistance” は、故Jack Roseと正面から向き合った傑作!

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USバージニア州を拠点にドローンやノイズミュージックを奏でるPelt。9年振りとなる新作がThree Lobed Recordingsよりリリースされました。1993年に結成され、伝説のギタリストJohn Faheyの後継者とも言われていた故Jack Rose (1971-2009) も結成時から参加していました。現在はオリジナル・メンバーのMike Gangloff、Patrick Bestに加えて2000年代中頃より参加したMikel Dimmick、Nathan Bowlesの4人編成となっています。各メンバーは個々に様々な活動も行っており、今年はそれらのPelt派生バンド、Black Twig Pickers、Spiral Joy Band、Eight Point Starの新作もリリースされています。その締めとしてPeltの新作ですから、ファンとして盛り上がるしかないです。

 

Pelt / Reticence、Resistance

PELT - Reticence/Resistance

本作は2017年2月にロンドンのCafé Otoで行われたライブ音源です。Café Otoからの依頼を受けてのライブとのこと。リリース予定は無かったが、内容が良かったので音源として保管していたようです。バイオリンのMike Gangloff、ピアノとハルモニウムの Patrick Best、ハルモニウム、ボウル、ベル、ゴングの Mikel Dimmick、パーカッションとバンジョーの Nathan Bowlesのラインナップでアコースティックな楽器を駆使して収録されています。

 

A面全体を締める “Diglossia” はピアノの鍵盤を叩くように掻き鳴らされた音をベースにバイオリン、バンジョーが自由奔放に絡んできます。後半ハルモニウムが静かに曲を落ち着かせるような展開でフェイドアウトしながら最後はボウルの音で締めくくっています。動と静を巧く組み合わせた曲で瞑想へと導いてくれます。B面は “Sundogs”、 “Chiming”、“The Door In The Hill” の3曲メドレー展開です。特に1曲目の “Sundogs” はJack Roseの2008年リリースのソロ・アルバム “I Do Play Rock And Roll”に収録されている曲です。原曲の22分にも渡るギター・ドローン曲をギター以外の楽器でコンパクトに纏め上げています。各メンバー思うままに音を掻き鳴らしてインプロヴィゼーションを楽しんでいる様子が伺える。

PeltにとってJack Roseは大きな存在であることは確かです。彼が居ないPeltを聴かなくてもいいと思うリスナーも多い。しかし、“Reticence、Resistance” はJack Roseと正面から向き合ったアルバムでもあり、Peltの傑作と言ってもいいでしょう。もっと多くの音楽ファンに聴いて貰いたいアルバムです。

 

Peltに後から参加したMikel DimmickとNathan Bowlesのインタビュー記事です。もの凄く興味深い内容です。


 

 

今年リリースされたPelt派生バンドについても少し触れておきましょう。

 

Black Twig Pickers / Friend's Peace

2001年より活動しているBlack Twig Pickersの新作。本作にはMike GangloffNathan Bowles、Isak Howell、Sally Anne Morganが参加。バイオリンとギター、バンジョーを中心にヴォーカルも取り入れ、牧歌的なカントリーフォークの世界です。VHFより4月にレコードオンリーでリリース。

 

Spiral Joy Band / I Was Born Under A Wandrin' Star 

2005年より活動しているSpiral Joy Bandの2012年に録音された未発表音源による新作。本作にはPatrick BestMikel Dimmick、Troy Schaferが参加。ギター、コントラバス、サックスを駆使してドローン・サイケを奏でています。Feathered Coyote Recordsより7月にカセットでリリース。

 

Eight Point Star

Mike GangloffMatt Peyton、Isak Howell、Tim Thorntonによる新たなバンドEight Point Starのデビューアルバム。コズミックでサイケデリックサウンドと土着的なフォーク、カントリー、ブルースがいい感じで絡んでいます。Black Twig Pickersと同じくVHFより7月にレコードオンリーでリリース。

 

Three Lobed Recordingsはあまり活動を行っていなかったPeltに、派生バンドの動向を察しして声を掛けたのでしょうか? Three Lobed Recordingsとしても20周年アニバーサリーで、これまでにSunburned Hand of the ManやSix Organs Of Admittanceをリリースして来ました。レーベルとして気合いが入っているは言うまでもありません。 “Reticence、Resistance” が10月にリリースされたことを考えると、この流れに乗りたかったのも理解出来ますね。Peltの次なる展開が非常に気になります。