ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

新旧多彩なメンバーを集めたSunburned Hand Of The Manの新作 “Nimbus”

ボストンを拠点にして90年代中頃より、サイケデリックなフリーミュージックを追求し続けてきたSunburned Hand Of The Man。これまでプライベート・レーベルManhandを含めて何百もの膨大なアルバムをリリースしてきました。どこから聴き始めたらいいのか分からない新参ファン、アルバム量が多くて付いていけなくなった古参ファンにもお勧めで出来る新作が、Three Lobed Recordingsよりリリースされました。

 

Sunburned Hand Of The Man / Nimbus

本作 “Nimbus” はプロデュースを担当しているAdam Langellottiのマサチューセッツ州ターナーズフォールズにある自宅兼スタジオにて1週間のセッションを行っている。自然豊かな居心地の良い環境の中で、メンバーが自由に出入りし、食事を作ったり、読書をしたり、古い写真を見たりと、家族的な雰囲気に包まれていた。そんな状況で制作されている。今回もバンド結成時からのJohn Moloney と Rob Thomas を中心に新旧多彩な面々が参加したラインナップによって制作。総勢12名以上のメンバーが名を連ねています。去る者は追わず来る者は拒まずといったバンド風土が、Sunburned Hand Of The Manに根付いている。その風通しの良さから生まれてくるアイデアサウンドに反映できることが魅力でもある。これまで培ってきたSunburned Hand Of The Manのサウンドに様々な要素がバランスよく組み合わせた構成となっている。

 

詩人、エッセイストであるPeter Gizziをフューチャーした 曲 “Nimbus”、“Consider The Wound” では、彼のポエムリーティングに演奏が絡む不思議な世界。これに影響を受けて過去にレコーディングに参加したことのあるマルチ奏者Matt Kreftingも “Hilltop Garden Lament” でポエムリーティングに挑戦している。そして、元メンバーであったPhil Franklinは、”Ishkabibble Magoo“ でソロ・ユニットFranklin's Mint的なフリーフォークを展開。彼はもう一つカヴァー曲も提案しており、”Lily Thin“ はモロッコのシンガーYounes Megriの曲 ”Lily Twil“ をカヴァー。この曲はSun City Girlsも ”Cruel & Thin“ としてカヴァーしていることで、双方に敬意を払って曲タイトルを ”Lily Thin“ にしている。この曲でオルガンを弾いているは、Pat Gubler(PG Six)であることも見逃せない。このように新旧メンバーが力量を発揮するなかで、この10年近くSunburned Hand Of The Manのサウンドを支えてきたJeremy Pisaniのギターワークが、“Walker Talker” でサイケデリックに鳴り響いているのもカッコいい!

アルバムジャケットは、David Bowie、Tony Conradとのコラボレーションなど行ってきたインスタレーションアーティストTony Ourslerによるものです。印象的なデザインで心に残ります。

 

Sunburned Hand Of The Manは、その場に集まったメンバーのモチベーションによってアルバムの質が左右されることもある。それらを含めてすべてリリースすることをバンドとして行ってきた。それ故に何百もの膨大なアルバム数になったのも確かです。彼らにすれば、その時々の記録でしかないと思っている部分もある。統一的なセオリーはないし、あるべきでもない。これが実践を通じて築き上げてきたSunburned Hand Of The Manのスタイルなのです。彼らの名盤は色々とありますが、これも傑作の1枚ですね。