フランスの女性シンガーLeonore Boulangerは、民族音楽や現代音楽、シャンソン、フォークなどを様々な要素を組み合わせたエクスペリメンタルなポップミュージックを展開しています。彼女の3年半振りとなる5作目が、昨年11月にフランスのレーベルLe Sauleとベルギーで新たに設立されたレーベルSlouch Hatの2社でリリースされました。今回はデビュー時より、二人三脚でアルバム制作に関わってきマルチプレイヤー Jean-Daniel Bottaとの共同名義となっています。
Léonore Boulanger & Jean-Daniel Botta / Un lièvre était un très cher baiser
本作はオーストリアのアウトサイダー・アート詩人Ernst Herbeck(1920-1991)が残した詩をモチーフに曲が作られています。20歳で精神疾患になり病院に入院して、亡くなるまでの生涯をそこで過された。その中で多くの詩を書き綴ったとのこと。彼の精神科医で作家であるLeo Navratilの設問に対する応答としてイラストや詩を書いたのが切っ掛けだったようです。亡くなる2年前ぐらいにErnst Herbeckは、1,000枚以上の手書きの作品ををオーストリア国立図書館に寄贈していました。
Léonore BoulangerとJean-Daniel Bottaの2人は、Ernst Herbeckの作り出す詩の世界から童謡をイメージしたとされ、そこから彼ら自身の創造力を駆使して音楽と結びつけたようです。短い曲を中心に全19曲も収録しており、短編小説の映像でも観ているかのような雰囲気を感じる。これまで培ってきたLéonore Boulangerの様々さ要素を組み合わせて、Ernst Herbeckの世界を構築。Ernst Herbeckの詩がドイツ語だったこともあって、すべて曲をドイツ語で歌っています。Bandcampのプレスリリースには、幼稚園で奏でられるクラウトロックと書かれていた。
2人以外の参加メンバーは、パーカッションにLaurent Sérièsが参加しており、彼も長くLéonore Boulangerを支えてきた1人です。曲によって2人と親交の深いBégayerのLoup Ubertoなどもゲスト参加しておりチームLéonore Boulangerとしての最強の面々で製作されたことが伺える。ギター、シンセ、ドゥドゥク、グロッケンシュピール、コントラバス、サックス、トランペットなど様々な楽器を駆使して、多彩で妖精のような歌声との組み合わせは、トイポップ的な趣も感じる。前作 “Practice Chanter” について、おもちゃ箱をひっくり返したような不思議な世界と書いた私ですが、その流れを踏襲しつつ、小作品を組曲として纏め上げた傑作。小さいお子さんと一緒に聴いて貰いたいと思う1枚です!
前作“Practice Chanter” について書いています。