Nein Rodereはベルリンを拠点に活動しているDavid Roederの音楽ソロ・プロジェクトです。画家や精神保健福祉士でもあるという経歴から、様々な芸術を熟考、制作、促進することによって、日常の経験をより深い心理的構造と結びつける取り組みも行っている。ベルリンのアウトサイダー・アート協会の理事としても活動しているようです。音楽については、Nein Rodereとして2017年頃からひっそりとカセット音源をセルフリリースしていた。そんな彼を取り上げたのがロンドンの実験的なフォークを中心とした新興レーベルHorn Of Plentyであった。最近になってレコード2枚とカセット1本を購入しているので紹介したい。
Nein Rodere / Catch Up With What Party +
2022年1月にHorn Of PlentyよりLPレコードとしてリリースされた本作は、2020年のカセット “Catch up with Social” から全13曲と2017年のカセット “What Party?” から3曲を選曲し、これに未発表音源7曲を追加した全23曲を収録したアルバムです。ベッドルームポップ的なフォークからフィールドレコーディング、インプロ、エレクトロニクスなど変幻自在にコラージュしてくる展開。セルフリリースや未発表音源の寄せ集めでありますが、多くのゲストをヴォーカル、ヴォイスなどで起用しています。これまでのNein Rodereの音楽を総括できる内容となっている。個人的に興味深いのは、11曲目のC O Dです。Thinking Fellers Union Local 282の名作Strangers From The Universeの収録曲Cup Of Dreamsをモチーフに作られたとのこと。TFUL282を取り上げる辺りは、只物ではないですね。
Nein Rodere / Sketches from Summer
2022年12月にFreuyd & VerdruszよりカセットEPとして限定75本でリリース。このFreuyd & Verdruszは、以前David Roederが参加していたバンドMordwaffeのリイシューもカセットで行っており、自身でレーベルを立ち上げたのかな? この年は “Watercolor of Jandek Debut:Music Texts2015⁻2020” という音楽本も発刊しており、音楽レビューや音楽に対する様々なことを書いているようです。本のタイトルにもなっているJandekは70年代後半より活動している伝説のアウトサイダー・ミュージシャンのことで、本作が彼の影響を受けていることを感じる。David Roederのヴォーカルとギターの奏でるローファイなアシッド・フォークにフィールドレコーディングされた日常の風景か絡む全7曲を収録。紙袋に入った特殊なパッケージも含めて激ヤバですよ!!
Nein Rodere / Form & Feeling
2023年3月に再びHorn Of PlentyよりLPレコードとしてリリースされた本作は、アメリカの哲学者Susanne Langerの1953年に発刊された著書Form & Feelingからのインスピレーションを落とし込んだ1枚です。この本のなかで、音楽は従来の言語では表現するのに苦労していた感情を伝えることができると提唱していた。これを考慮したDavid Roederは、実験的なサウンドとローファイなフォークなどを組み合わせた全15曲を収録しています。今回も多くのゲストがヴォーカル、ヴォイス、ギターなどで参加。様々な要素を混在させながら、一つのコンセプチュアルなアルバムに仕上げている。咳き込む音を入れたり、意味不明のノイズ音が流れたりして、異形な雰囲気も醸し出ています。ただ、これがアウトサイダーであるNein Rodereの魅力なのでしょう。素晴らしい1枚です。
David Roederのビジュアル・アーティストとしての世界です。
David Roederの著書 “Watercolor of Jandek Debut:Music Texts2015⁻2020” について書いていて、注文も出来るようです。
WATERCOLOR OF JANDEK DEBUT: MUSIC TEXTS 2015-2020 by David Roedergoodpress.co.uk