ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

90年代インディーズ・シーンの異端児Kramerが、2021年に新作をリリースしていました。

Kramer – Shimmy-Disc

2020年頃よりKramerがShimmy Discを復活させていたことを今頃になって知った。その中で、1998年以来となる自身のソロアルバム “And The Wind Blew It All Away” を2021年にリリースしていた。本日は、このアルバムを取り上げたいと思う。

 

Kramer / And The Wind Blew It All Away

プロデューサーとしてGalaxie 500やLowを見出したことは、Kramerの功績だと思う。以外と知られていないのが、Daevid AllenとHugh Hopperを90年代に結び付けたのも、彼の人脈があってのことである。一方で女性を含めた人間関係や金銭問題で色々とトラブルを抱えていたのも確かで、90年代インディーズ・シーンで異端児とも言われていた。1998年に自身が運営するShimmy Discを売却してから、音楽を辞めようと思ったこともあったが、何とか断続的に活動を行っていた。そんな彼にソロアルバムの発表の場を提供し、Shimmy Discの復活をサポートしたのが、Joyful Noise Recordingsであった。

 

Joyful Noise RecordingsはKramerに対してJoyful Noise 2020 Artist In Residenceとして5枚組ボックス・アルバム "Make Art, Make Love, Die" を作ること提案する。その中の1枚が “And The Wind Blew It All Away” でShimmy Discより単品でリリース。これ以外は、映画音楽作品や朗読作品といった感じで、Kramerを多面的に捉えたボックス・アルバムであった。限定販売の為、すぐに完売となる。映画音楽作品 ”Music For Films Edited By Moths“ と朗読作品 ” Words & Music Book One“ もShimmy Discよりリリースしています。

Artist In ResidenceとしてJoyful Noise Recordingsから支援を受けたことに感謝しつつも、不安もあったのでしょうね。こんな発言もしています。音楽を通じて、また別のアーティストと一緒に音楽を作ることが出来るだろうか、このまま大晦日を迎えることが出来るだろうか、娘の声をもう一度聞くことが出来るだろうか、そして、愛を感じることが出来るだろうかと考えながら、このアルバム制作時の心境を語っています。この内省的な発言から90年代に破茶滅茶な行動していたKramerとは思えない感じがした。

 

そんな状況の中、痛々しくも美しく、最終的には希望に満ちたアルバムを作り上げました。全10曲収録でラスト曲のLeonard Cohennoカヴァー曲Winter Lady以外は、Kramerのオリジナル曲です。すべて本人ひとりで作り上げている。スロコアと称されるバンドを幾つも見出してきたKramerが、原点に戻ってサイケデリック・フォークを奏でていることに安心しました。ダウナーな彼のヴォーカルを中心にシンプルながらも洗練されたサウンドがいい感じに響き渡る。エクスペリメンタルやアヴァンギャルドといった要素を取り込ますに、妖しげな雰囲気を醸しながらKramerらしさを表している。様々な思いが蘇る傑作アルバムです!

 

 

 

KramerがShimmy Discを復活させていたことを知る切っ掛けとなったDaniel Johnstonの2000年4月のライブ音源について書いています。