ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

エレファント6界隈のバンドのひとつ、米インディーズ・バンドElf Powerの新作!

Elf Power

Elephant 6界隈のバンドのひとつ、米インディーズ・バンドElf Powerの5年振り14作目となる新作 “Artificial Countrysides” がリリースされました。本日はその新作について取り上げます。彼らが未だにElephant 6界隈のバンド云々と言われているので、Elephant 6についても書いています。

 

Elf Power はジョージア州アセンズで結成。Andrew Riegerのソロ・プロジェクト的なことで、作った曲をライブで行うためにメンバーが集まりました。1995年リリースの自主制作されたデビュー・アルバム “Vainly Clutching At Phantom Limbs” が話題となり、1997年リリースのセカンド・アルバム “When The Red King Comes” では、同じくアセンズを拠点とするThe Olivia Tremor ControlのBill DossとWill Cullen Hart、Neutral Milk HotelのJeff Mangum、Of MontrealのKevin Barnesら総勢10名以上のメンバーが集まって制作された。

 

ここに集まったメンバー達が、アセンズを拠点としたインディーズ・バンドのコミュニティ集団Elephant 6の面々です。様々なバンドと情報交流しながら、一緒に盛り上がって行こうとしていた。バンドのメンバー、サポートメンバー関係無く、皆でひとつの作品を作り上げると言った雰囲気が満載であった。このアルバム “When The Red King Comes” はNYのメジャーレーベルArena Rockでリリースされたが、レーベル運営も行っていたElephant 6でもリリースされました。このあとの1999年 “A Dream In Sound”、2000年 “The Winter Is Coming” のアルバムもElephant 6サポートにて制作されている。

 

Elephant 6の中心的な役割を果してきたNeutral Milk Hotelが1999年に解散、The Olivia Tremor Controlが2000年に活動休止します。Elephant 6としての活動が停滞したのも確かです。このことで、2000年代に入ってからElf Powerのアルバムに物足りなさを感じる様になっていた。2002年に全曲カヴァー・アルバム “Nothing's Going To Happen” を、2008年にアセンズ出身のシンガーソングライターVic Chesnutt(1964-2009)とのコラボレーションアルバム “Dark Developments” をリリースするなど、様々な試みを行ってきた。その後も、定期にアルバムはリリースされていたけど、どうしてもElephant 6時代の勢いは感じられなかったのです。

 

Elf Power / Artificial Countrysides

新作 “Artificial Countrysides” は、前作 “Twitching in Time” 以来の5年振り14作目で新たに契約したYep Roc Recordsからのリリースです。このレーベルは1997年にGlenn DickerとTor Hansenによって設立され、近年のNick Loweのアルバムも手掛けています。Andrew RiegerはオーナーであるGlenn Dickerと20年近い交流があったとのことですが、今回やっとリリースすることになったようです。

 

ヴォーカルでギタリストのAndrew Riegerの他は、ギタリストのDave Wrathgabar、ドラマーのPeter Alvanos、キーボードプレヤーのLaura Carterが参加。Dave Wrathgabarはデビュー作からのメンバーで2000年代中頃にElf Powerを離れていますが、前作より復帰しています。Peter Alvanosは前々作からの参加です。Laura CarterはNeutral Milk Hotelのメンバーでもあり、デビュー作からアートワークを含めてマルチに関わっています。彼女はレコーディングのみで、ライブパフォーマンスは別のメンバーになっています。これまでになく少数精鋭のラインナップです。

 

Andrew Riegerは “試行錯誤の過程を経て、死ぬほどリハーサルをしてからレコーディングをするのではなく、思いつくままに曲を作っていく。その方が僕らにとってはより面白い音楽になると感じた” と話しています。甘くメロディックなヴォーカルラインを活かすために、演奏はコンパクトでシンプルに纏め上げています。Elf Powerの持っているサイケなフォーク・ロックの魅力を小気味よくストレートに掻き鳴らしている。様々なゲストが参加して、ああでもないこうでもないと言って行うよりも、Andrew Riegerの好きなようにやって、バックのメンバーがそれを支える構図であります。これが一番だと思った。Elephant 6時代を越えた傑作です!!

 

Elephant 6の御三家バンドと言えば、Apples in Stereo、The Olivia Tremor Control、Neutral Milk Hotelです。御三家バンドが活動していない現在、しっかりと活動し続けていたのが、Elf Powerであり、Of Montrealであります。Of Montrealについては、Kevin Barnesのキャラを活かして奇抜でユニークなパフォーマンスを行っており、音楽的にも高い評価を受けている。Elephant 6界隈のバンド云々と言われることは少なくなっている。Elf Powerについても、そろそろElephant 6界隈の・・・は要らないと思った。

 

とは言え、Elephant 6の90年代後半のインディーズ・シーンに与えた影響は大きい。御三家バンドを中心に再確認してみました。

Elephant 6 - Wikipedia

Elephant 6は米インディーズ・バンドのコミュニティ集団で、80年代後半にRobert Schneider、Bill Doss、Will Cullen Hart、Jeff Mangumの4人が学生時代にデモテープを作って、遊びでやり始めたことから始まっています。90年代に入るとRobert Schneiderはコロラド州デンバーを拠点にApples in Stereoを結成し、Bill DossとWill Cullen Hartはジョージア州アセンズを拠点にThe Olivia Tremor Control、Jeff Mangumはルイジアナ州ラストンを拠点にNeutral Milk Hotelとして活動します。

4人は各バンドのサポートメンバーでもあり、他のバンドとも様々な交流を行いながら、ひとつのコミュニティを形成して行きます。その中でRobert SchneiderがレーベルElephant 6 Recording Co.を立ち上げたことで、メディアより注目を浴びます。サイケでチープなポップサウンドを基本としながらも、各バンドの独自性は失わずに横の繋がりで、勢力を拡大して行きました。90年代インディーズ・バンドの歴史を塗り変えたと言っても過言ではなかった。

ただ繁栄も長くは続かなかった。Neutral Milk Hotelが1999年に解散、The Olivia Tremor Controlが2000年に活動休止します。双方とも注目されたことに対するプレッシャーが原因なのでしょうか?それでも、The Olivia Tremor Controlが2009年にライブ活動を再開して、Jeff MangumがAll Tomorrow's Party Festival 2012のキュレーターを行ったことで、2013年から再結成ツアーをNeutral Milk Hotelとして行っている。

ところが、The Olivia Tremor ControlのBill Dossが2012年に動脈瘤で急変し亡くなったことで事態は一変する。ライブツアー中だっただけに、ファンや関係者のショックは大きかった。新作の音源も出来ていたにも関わらず、未だにリリースされていない。Bill Dossも参加していたApples in StereoのRobert Schneiderは “生涯の友人、協力者、そしてバンド仲間を失ったことに心を痛めています。素晴らしい、面白い、非常に創造的なBill Dossいなければ、Apples in Stereoの世界はあり得ない” と声明を発表してバンドの活動休止をしている。2017年にジョージア州アセンズにてApples in Stereoはインディーズ・バンドの音楽フェスに親分的な扱いでのヘッドライナーとして参加しているが、その後の活動は確認されていない。