ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Richard Youngsの新作 “Modern Sorrow” は、自身の声をサンプリングやビブラート変調して作り上げた、ポップでコンテンポラリーな怪作!

エクスペリメンタル・フォークからアヴァンギャルドなポップ・ミュージック、そしてノイズからエレクトロニクスまで多彩なジャンルを奏でてきたスコットランドグラスゴーの奇才Richard Youngs。これまでも数多くのアルバムをリリースしており、無尽蔵なアイディアで多くのリスナーを魅了してきました。今回、Oren AmbarchiのレーベルBlack Truffleより新作がリリースされました。

 

Richard Youngs / Modern Sorrow

Primary

レコード・オンリーでリリースされた本作は、A面1曲、B面1曲の2曲収録となっています。本作はギターを使用せず、自身の声をサンプリングやビブラート変調して、ポップでコンテンポラリーといった2 つの側面を表した不思議なアルバムを作り上げています。

 

A面のアルバム・タイトルナンバーModern Sorrowは、Richard Youngsのヴォーカルとピアノの音を中心にドラムマシンによるエレクトロニックなリズムを取り入れ、オルガン・ドローンがさりげなくサウンド全体を纏め上げている。R&Bやラップといった雰囲気も感じさせつつ、ミニマルで穏やかに桃源郷へと導いてくれます。神々の領域をも凌駕しようとしたソウルフルな名曲に仕上げています。Richard Youngsの新たなる世界感を表したと言える本当にヤバい曲です。

 

B面のBenevolence I + IIは、2部構成になっています。前半がドラムマシンとオルガン・ドローンがトーン、トーンと間隔を開けて鳴り響く。そこにRichard Youngsのビブラート変調された声が絡む。これが声だと思う人は誰もいなと思う。後半はオルガン・ドローンが無くなり、少し人間味らしい声が絡む展開。ドラムマシンのリズムは前半後半も同じで、二つの声がひっそりと絡む展開。コンテンポラリーとアンビエントの生み出す静寂な世界。この曲も凄いです。

マスタリングをリリース元Black TruffleのオーナーOren Ambarchiと親交の深いJoe Taliaが、行っていることも興味深い。あとピアノにスコットランドのフォーク・バンドModern StudiesのJoe Smillieがゲスト参加しています。それ以外の、オルガン、ドラムマシン、そして声とデジタル・ツールの組み合わせは、Richard YoungsによるDIY制作です。声に焦点を当てる彼のアイデアとぶっ飛んだ音楽センスに脱帽しました。傑作というよりも最高に素晴らしい怪作ですね