ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Industrial Music For Industrial People 「燃え尽きるよりサビつきたいっっ!!!」

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昨年10月にディスクユニオンから発行されていた雑音だらけのディスクガイド本であります。1977年にThrobbing Gristleがリリースした1stアルバム「The Second Annual Report」のジャケットに記載されていたキャッチコピーが「Industrial Music For Industrial People / 工業産業従事者の為の工業産業音楽」であった。ウィキペディアでは、工業生産される大衆音楽へのアンチテーゼ(皮肉)として書かれたと解説している。この言葉から誕生したと言われるのがインダストリアル・ミュージックである。当時、パンクが流行り始めていたころでもある。新たなる動きが出ていたが、その中でも異彩を放っていたのも確かであった。この「Industrial Music For Industrial People」を本のタイトルに持ってくるあたりに筆者(持田保)の思いがヒシヒシと伝わってくる。そして、この本の帯に記載されているキャッチコピーが「燃え尽きるよりサビつきたいっっ!!!」なのである。メチャメチャ、かっこいいですね。

 

本書では、Throbbing Gristleをはじめとして、Nurse With Wound、New Blockaders、Muslimgauzeといった私にとっては馴染みのものから、M.B、Foetus、Death In Juneなど新たに興味を持たせてくれそうなもの、そして日本のノイズものまで、全511タイトルを紹介している。上記に挙げたバンド、アーティストはバイオグラフィーも掲載して複数枚アルバム紹介している。入手出来るかどうかは別にして、何を聴いたらいいのか非常に分かり易く記載されている。特にNurse With Woundフリークの私にとっては、10タイトルの関連アルバム(Current93、Diana Rogersonなども含めて)が紹介されており、非常に興味深い。メイン扱いではないものでも、例えば、The Dead CやThe Nihilist Spasm Bandなど、そのバンドの代表作をバイオグラフィーも含めて、的確な レビューが記載されている。

 

それと、この本が面白いのは、ディスクガイド以外のコラムにもある。インダストリアル・ミュージック誕生時の音楽シーンの状況や、川崎予備校生金属バット殺害事件の犯人がWhitehouseの大ファンだったというエピソード、そして筆者の工場現場での労働から生まれる事になったこの本の秘話など、読み物としても充実している 。

 

ノイズ、インダストリアルは音楽としてマイノリティーであるが、まだまだ刺激的な音楽が山の様にある。この本を読んで少しでも興味を持ってくれたなら嬉しい。私もこの本によって、次に聴きたい音楽を発見できたのだから。 私のバイブルとなる本であることは確かである。