ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

「ロックでなければなんでもいい」と言い放ってから43年!今が一番ロックしているWireの新作「Mind Hive」

英国ポストパンクの先駆者Wire。彼らの初期のキャッチフレーズは「ロックでなければなんでもいい」だった。あれから43年経った今も勢力的に活動し続けています。現在はColin Newman(ヴォーカル、ギター)、Graham Lewis(ベース、ヴォーカル)、Robert Gotobed(ドラムス)のオリジナル・メンバー3人に加えて、2010年よりMatthew Simms(ギター、シンセサイザー)が参加しています。このブログでも取り上げているかと思いきや、個別記事では書いていませんでした(汗)  2020年1月に新作がリリースされたので紹介します。

 

Wire / Mind Hive

2017年リリース「Silver / Lead」以来の新作。これまでのように歌詞をGraham Lewis、曲をColin Newmanが中心となり、サウンド構築は4人全員で行っている。プロデュースとミックスはColin Newman、エンジニアはMatthew Simmsが担当。全9曲でオープニング・ナンバー「Be Like Them」のヘヴィなギター・ワークの曲で始まり、ラスト「Humming」のバラード的な曲で締めくくり、Graham Lewisも1曲歌っています。

 

シンセサイザー過半数の曲で取り入れ、曲によってはアコースティック・ギター、オルガン、スタイロフォン、ハーディ・ガーディなども駆使している。ポストパンクに留まらすにミニマル、ドローンといった雰囲気をも魅せながら軽快でポップな曲からエクスペリメンタルで不穏な曲まで収録。どの曲も刺激的で格好いい。これまでになく、様々な要素を取り入れ、緩急を付けてドラマチックに攻め込んできます。常に進化し続け、時代にしっかりとリンクしてくる辺りは流石です。フレッシュさも兼ね備えたこんなベテラン・バンドって他にあるのだろうか? しかも、Wireらしさは少しも失われずに新たな側面を表した素晴らしい1枚です。

 

尚、2020年後半には、キャリアを網羅したドキュメンタリー映画『People In A Film』の公開が予定されている。もちろん2004年に脱退したBruce Gilbertのインタビューとかも有るようです。これは是非観たいですね。

 

音源の方は、この1曲に絞りきれないので、Youtubeで4曲アップします。

オープニング・ナンバー「Be Like Them」 

 

アルバム先行シングル「Cactused」

 

Graham Lewisのヴォーカル曲でハーディ・ガーディを駆使した「Oklahoma」

 

ラスト曲「Humming」

 

今回、Wireの新作以外に各メンバーのプロジェクトやソロ活動のアルバムも購入したので併せてアップします。

UUUU

Graham Lewis、Matthew SimmsのWireのメンバーとSpiritualizedのアルバムにも参加していたTim Lewis、TomagaのドラマーValentina MagalettiによるプロジェクトUUUUの2018年リリースの12インチ・シングル。アヴァンギャルドでエクスペリメンタルに鳴り響くニューウェイヴの世界といった感じで面白い!

Graham LewisとMatthew SimmsはUUUU以外にも新たなるプロジェクトFittedを結成して、2019年にアルバムをリリースしている。Fittedについては、この記事を書いている時に知りました。この2人、本当に勢力的に活動しています。

 

Slows / Enormous Pause

Matthew SimmsのSlows名義による2018年リリースのカセットアルバム。オルガンとシンセでアンビエント・ドローンの世界を構築。単なるギタリストじゃないですね。最近だとBill Fayのアルバムにも参加しているようです。 

 

Wireの新作「Mind Hive」について、新たな側面を表したと上記で書いているが、やはりGraham LewisとMatthew Simmsの存在が大きい。彼らがプロジェクトやソロ活動で得たものが、今回の新作に少なからず反映されている感じがする。フロントマンとしてColin Newmanがバンドのプロデュースが行えているのも、各メンバーとの信頼関係が良好だからこそだと思う。今が一番ロックしているWireを是非聴いて欲しい!

 

 

 

愛娘が全面参加した夫婦デュオBig Bloodの新作「Do You Wanna Have a Skeleton Dream」

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アメリカ・メイン州のCaleb MulkerinとColleen Kinsellaによる夫婦デュオBig Blood。サイケデリック、フリーク・フォーク、エクスペリメンタル、アヴァンギャルドをごちゃ混ぜにしたサウンドを奏でるバンドです。彼らの新作がFeeding Tube RecordsよりVinylオンリーでリリースされました。

 

Big Blood / Do You Wanna Have a Skeleton Dream

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これまでは、サポートメンバーやゲストを入れてアルバム制作をしていましたが、本作は2人の愛娘Quinnisa Kinsella Mulkerinが参加して3人で作られています。彼女は2007年生まれで今年13歳になります。過去のアルバムに少しだけ参加することは何回かありましたが、全面参加は今回が初めてです。

 

Quinnisa Kinsella Mulkerinの幼少時のヴォイスSE(ほんの数秒ですが)の2曲を含めた全11曲の中で、彼女はリード・ヴォーカル、ドラムス、ギター、トロンボーンとマルチに大活躍しています。もちろんColleen Kinsellaのヴォーカル曲も健在です。娘のキュートなバッキング・ヴォーカルが絡んで、ソウルフルな雰囲気までをも醸し出しています。娘と母親のヴォーカル・アンサンブルを中心に、エキセントリックな要素を控えめにし、さらに音数を少なめにしている。サウンド・メイキングを行っているCaleb Mulkerinは歌物をじっくりと聴かせたかったのでしょう。ラスト曲にシューベルトの歌曲「アヴェ・マリア」を持ってくる辺りはBig Bloodらしさも伺えます。

 

父Caleb Mulkerin、母Colleen Kinsella、娘Quinnisa Kinsella Mulkerinの家族愛を感じるアルバムでもあります。QuinnisaがこのままBig Bloodとして活動するか分りませんが、彼女が参加したことでBig Bloodの新たな側面を魅せてくれたのも確かです。ただ、「Insecure Kids」という曲もありますので、そう簡単に親の思い通りにならないことを表している気もします(笑)  彼女が今後どのように成長していくかも楽しみです。いずれにせよ、Big Bloodの動向には注目しなければなりませんね。

 

 

2017年にもBig Bloodについて、バンド経歴も含めて色々と書いています。

 

 

 

2020年4月のディスカホリック

新型コロナウィルスの影響によりテレワークや休業でStay Home が多くなっていると思います。しかし、私はいつも通り何も変らず、24時間濃厚接触しながら仕事している状況です(笑) たまの休みは、のんびりと音楽を聴いている。立ち止まることで様々なことが見えてくることもあります。皆さん、焦らすに気をつけて生活しましょうね。

 

今月のディスカホリックは6タイトルと少なめの購入実績です。先月ぐらいから、海外の注文が届かずに、国内に切り替えたのも多い。早く落ち着いて欲しいです。

 

 

Big Blood / Do You Wanna Have a Skeleton Dream(Vinyl) 購入先Feeding Tube Records 購入価格$46.50(5,353円)

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Colleen KinsellaとCaleb Mulkerinを中心としたBig Bloodの新作。これまではサポートメンバーやゲストを入れてアルバムを作って来ましたが、2人の娘が参加して3人で作られています。エキセントリックな要素は控えめですが、じっくりと聴くことが出来ます。

 

 

Sean McCann / Puck(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,615円

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今のアメリカを代表するアンビエント、ドローン作曲家と言えば、もうこの人しかないいでしょう。2019年に自身のレーベルRecitalからリリースされた本作は、これまで以上に様々な要素を取り入れています。アルバムジャケットもユニークで良いですね。

 

 

Drøne / The Stilling(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,822円

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イギリスのレーベルTouchの創設者Mike HardingとLocustとしても活躍しているエレクトロニックス・プレーヤーMark Van HoenによるDrøneの新作。多彩なゲストが参加して作り上げたエクスペリメンタル・ドローンの世界。

 

 

Tame Impala / The Slow Rush(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格1,790円

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Tame Impalaの5年振りの新作。前作を踏襲しつつ、よりエレクトロニックでドリーム・ホップ化しています。このサウンドをバンド編成で行うライブ、映像が絡むことで宇宙の彼方へ導いてくれそうです。このままだと8月は厳しいでしょうね。


 

Psychic Sounds Ensemble / Sonic Fermentations(Vinyl) 購入先Store15Nov 購入価格4,520円

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レーベルPsychic Sounds周辺のミュージシャン達にLAFMS(Los Angeles Free Music Society )系の面々も集結したPsychic Sounds Ensembleの2019年後半にリリースされた1stアルバム。ジャス?サイケ?ノイズ?様々な要素が交差する得体の知れない不穏なサウンド

 


Windy & Carl / Allegiance And Conviction(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,380円

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レコード店を営みながら90年代より活動する夫婦デュオWindy & Carlの8年振りとなる新作。Carlのドローン・アンビエントに鳴り響くギターサウンドに絡むWindyのウィスパーヴォイスの世界。 

 

 

 

Giuseppi Logan、R.I.P (May 22, 1935 – April 17, 2020)

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60年代に2枚のアルバムをリリースして、突如音楽シーンから姿を消した。その後、死亡説、失踪説、発狂説などが流れていたという。そして、2000年代後半にホームレスとしか思えないよれよれの爺さんになったGiuseppi Loganが、公園のベンチでサックスを吹いているのを発見されたのである。その後、2010年に新作をリリースして復活するという経歴のジャズ・ミュージシャンです。死因は新型コロナウィルスとのこと。

 

1965年のファースト・アルバムです。

 

2010年の復活した時のアルバムです。

 

 

7年前にGiuseppi Loganを知る切っ掛けなど、色々とこのブログで書いていました。そろそろ新作が聴きたかったです。


2000年代後半にホームレスとしか思えないよれよれの爺さんになったGiuseppi Loganが、公園のベンチでサックスを吹いていた様子です。必死に自己PRしてます。

 


 

Sunburned Hand Of Man「Headless」、これまでのトリッキーでカオスな部分を控えめにしているけど、彼らの名盤の1枚です

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ボストンを拠点にして90年代中頃より、John Moloneyを中心に様々なメンバーが流動的に集まってライブ活動を行なっているSunburned Hand Of The Manの新作がリリースされました。新作といっても2017年に録音された音源で、20本限定のカセット「Intentions」としてリリースしていたアルバムのVinylリイシューです。

 

今回はタイトルを「Headless」に変更してCardinal Fuzzと自身のレーベルManhandとの共同リリースです。ただ、2020年2月に限定300枚のVinylでリリースされましたが、すでにBandcampでは販売終了になっています。彼らにすれば毎度の展開ですが、フィジカル・メディアに拘る身としては厳しいですね。まあ、購入出来たので良しとしましょう。

 

Sunburned Hand Of The Man / Headless

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本作はバンド結成時からのメンバーJohn Moloney、Robert Thomasに加えてGregary War、Jeremy Pisani、Ron Schneidermanの5人が参加。レコーディングとミキシングにNo Neck Blues BandのJason Meagherを起用していることも興味深い。

 

これまでのトリッキーでカオスな部分を控えめにして、ギターをメインにアシッドサイケ・フォーク、クラウトロックの要素を取り入れた展開を打ち出している。冒頭の1曲目「Prism Mirror Lens」がミニマルチックでメローに鳴り響く。アルバムの中では3分台の短めの曲でありますが、まさに本作を象徴とするこの曲に心地よく引き込まれて行きます。その他、自由奔放に各メンバーが音を出してるジャムセッション的な曲では、即興ではなく、アンサンブルに沿って曲が作られている為、安心して身を委ねことの出来る曲ばかりです。彼らのアルバムの中でも、聴きやすくすんなりと心に染みいってきます。アルバムのリリース量が多いSunburned Hand Of Manですが、この「Headless」も彼らの名盤の1枚だと思う。

 

全曲インストかと思いきや、ラスト9曲目「Framework」にヴォーカルが入っています。Robert ThomasとGregary Warの2人だけで録音して追加で収録されたようです。Sunburned Hand Of The Man流のユニークなヴォーカル曲です。アルバム全体の流れからすると逸脱した感じですが、完成度の高いアルバムをそのままリリースするのではなく、少しお遊びがしたかったのかな?と思ってしまった。彼ららしいですね。

 

 

 

 

Bandcampでは、もう「Headless」に続く新作「Covered In Mud」がデジタルで公開されています。まだ、よく聴いていませんが、ヴォーカルを駆使したアルバムです。いずれThree LobedからのVinylリリースも予定されています。こちらも楽しみです。毎度のように少量生産だと思うので買いそびれることのないようにしたいですね。

 

 

Sunburned Hand Of The Manについては、昨年こんな記事も書いています。


 

 

The Steve Hillage Band and Gong 来日決定!

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予てから待ち望んでいたThe Steve Hillage Band and Gongの来日が決定しました!The Steve Hillage Bandと言ってもバックのメンバーはGongですから、勝手にGong Familyと名乗っているだけにもの凄く嬉しいです。が、しかし、日程が8月22日(土)、8月23日(日)なのですよ。フジロックと諸に被っています。嗚呼~

 

8月23日(日)、フジロックを早めに切り上げて川崎へ行くのもキツいし、最終日グリーンのトリが電気グルーヴというのも興味深い。スマッシュが8月21日(金)に声を掛けていれば良いのですが、Steve Hillageのライブ3連投は可能なのか?とも思う。Hillageは、これまでGong、System7、Rovo&System7としてフジロックに出演しているので、フジの素晴らしさも誰よりも一番理解していると思う。もし、フジに来るのなら、フィールド・オブ・ヘブンのトリしかない。21時ぐらいから始まって後は好きにやってくれ!となるのでしょうね。ただ、今回グリーンのトリがTame Impalaなので、自分の妄想だけであれこれ悩んでいます(笑)

 

その前に、8月のライブ・イベントが開催出来るのか?そっちの方が心配です。

 


 

PS

6月12日に公演中止となりました。

 

 

ニュージーランドのThe Garbage&The Flowersの派生バンドEntlangのコンピレーション盤

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92年にシングル・デビューして97年にリリースしたファースト・アルバム「Eyes Rind As If Beggars」が今なおカルト的な人気を博すニュージーランドのインディーズ・バンドThe Garbage&The Flowers。当時、中心メンバーのHelen JohnstoneとYuri Frusinの2人は、他のメンバーを変えてThe Garbage&The Flowers以外にも、幾つかの派生バンドを結成して音楽活動を行っていました。

 

Entlang / The Four Sisters

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その派生バンドのひとつである4人組Entlangのコンピレーション盤「The Four Sisters」が、昨年10月にRose Hobartより Vinylリリースされました。元々95年に7インチシングル、96年に10インチEP、Jewelled AntlerのVarious盤の1曲ぐらいしか音源発表していなかったEntlang。オリジナル盤は自主制作で、マーケットにはあまり流通されてなかった希少盤です。その中から4曲が「The Four Sisters」に収録されています。

 

フォーキーな曲から、ノイジーに炸裂するギター・サウンドビオラが絡む曲など、白昼夢のごとくサイケデリックに鳴り響く。Helen JohnstoneとYuri Frusinのヴォーカルも脱力感一杯に囁くように歌い上げています。彼らがリスペクトしているThe Velvet Underground、あるいはGalaxie 500を想起させる世界を構築。The Garbage&The Flowersの派生バンドの域を超えた素晴らしい内容です。この埋もれていたEntlangを世に引っ張り出して来たレーベルRose Hobartも凄い!

 

リリース元のRose Hobartは、エレクトロニックな音楽をリリースしてきたレーベルBlackest Ever BlackのオーナーKiran SandeとJon Daleが立ち上げた新たなレーベルです。その第1弾がEntlang「The Four Sisters」になります。当初Rose Hobart Bandcampで音源は公開になっていましたが、現在は公開になっていません。その代りにThe Garbage&The FlowersのYouTubeチャンネルで公開になっています。


Entlangの活動は、90年代中頃で終了しています。本体のThe Garbage&The Flowersもファースト・アルバム「Eyes Rind As If Beggars」リリース後は、活動休止状態でありました。2007年に活動を再開しますが、実際に注目を浴びるようになったのは「Eyes Rind As If Beggars」がリイシューされた2013年以降になります。その後、2016年には90年代未発表音源集「The Deep Niche」のリリースを経て、今回のEntlangへと繫がっています。先月のディスカホリックで書いていますが、The Garbage&The Flowersの入手困難と思われていた2016年のカセット音源も購入しています。そろそろ新作が聞きたいところですね。


The Garbage&The Flowersについて、2013年にこんな記事も書いてました。


 

P.S.                                   Entlangのメンバー写真がない為、この記事の冒頭写真はThe Garbage&The Flowers Facebookのプロフィール写真です。因みに、Facebookのカバー写真はEntlang「The Four Sisters」が使われています。