ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

ドイツのBrannten Schnüreが奏でるシュールで不思議なフォークミュージック!

ドイツ・ヴュルツブルクを拠点とするChristian Schoppik、Katie Richによるエクスペリメンタル・ダークフォーク・デュオBrannten Schnüre。数年前からコアな人気を得ており、リリースされるアルバムの殆どが瞬殺で廃盤となっています。入手しようと色々と検索しているのですが、高い価格での取引になってしまうので躊躇していた。デジタル配信については、あまり積極的ではなく、フィジカルを購入しないとアルバム音源を聴くことが出来ないことも多い。

 

今回、3年振り7作目となる新作 “Das Glück Vermeiden” が、自身のレーベルQuirlschlängleよりレコード500枚限定でリリースされました。すでに品薄状態でSOLD OUTや1万円を超える価格で表示されています。自分はタイミング良くDiscogsにて€40.00 EUR(5,964円)で購入することが出来た。日本ではArt Into Lifeさんが、今回限りの入荷ということで扱っていたが、アップしたと思ったらすぐにSOLD OUTになってしまった。

 

Brannten Schnüre / Das Glück Vermeiden

アルバムタイトル ”Das Glück Vermeiden” は、「幸福でないこと」を意味しており、コロナパンデミックで疲弊した感情をコンセプトに作り上げた作品です。Katie Richのストイックなヴォーカルは、子供のように無邪気でありながらも不穏な雰囲気をも醸し出している。その歌声を包み込むように、様々なアコースティック楽器とエレクトロニクスをコラージュのように散りばめたシュールで不思議なフォークミュージックを展開。

 

タイヤの軋み、救急車のサイレン、鳥のさえずり、といった日常風景の音も取り入れながらドキュメンタリー映画を見ているかのような感じで心に染みこんで来る。シュールで不思議な世界で終っても面白いのであるが、アルバムタイトルでもあるラスト曲 “Das Glück Vermeiden” がメルヘンチックに未来へと繫ぐ。もはやダークフォークじゃないですね。短いこの曲はChristian SchoppikとKatie Rich の2人のヴォーカルで「幸福でないこと」に対する出口を見出している。

 

独自の美学と感覚で纏め上げた最高にヤバいアルバムです。再プレス、またはリイシューを早く行って欲しい!!

音源について、色々と聴いて貰いたいのですが、今のところYouTubeでこの1曲のみ公開になっています。もっと大々的にPRしても良いかと思うけど、これもBrannten Schnüreの戦略なのでしょうね。ただ、過去のアルバムの一部は、YouTubeを中心にアップされています。興味のある方は、是非聴いて欲しい!

 

 

そして今年10月には、2015年にオーストリアのFeathered Coyote Recordsよりカセット音源でリリースしていた3作目 “Geträumt Hab Ich Vom Martinszug” が、ベルギーのAguirre Recordsよりレコードとしてリイシューされました。早めに国内で予約を入れていますが、未だ入荷していません。Aguirre RecordsではすでにSOLD OUTになっています。本当に購入出来るのかな?と心配になって来ました。Discogsでは6,000円中ぐらいから10,000円超える価格で表示されていますけどね。

Brannten Schnüre / Geträumt Hab Ich Vom Martinszug

 

 

今年、彼らはBrannten Schnüre以外にも、様々なアルバムをリリースしています。簡単に紹介しておきます。

Lauten der Seele 

今年2月にリリースされたChristian Schoppikの変名ユニットLauten der Seeleとして発表した初のソロアルバム! 1950年代にドイツで制作された故郷をテーマとする映画 "Heimatfilme"  をコンセプトにした作品です。

 

Freundliche Kreisel

今年3月にリリースされたアンビエントポルターガイストと異名を持つBaldruinとBrannten Schnüreによるコラボレーション・プロジェクトです。Brannten Schnüエレクトロ色を押し出した作品となっています。

リリース元の関係もあると思うが、両方ともレコードのみのリリースで国内より意外と簡単に購入することが出来ました。

 

 

Mimi Parker(Low)、R.I.P.

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スロコアの先駆者的なバンドLowのヴォーカル&ドラムスであるMimi Parkerが亡くなりました。まだ、55歳の彼女は2020年に卵巣癌と診断されていたとのこと。昨年の最高傑作である “Hey What” はそんな状況の中で製作されていたのですね。2001年初来日を今は無き原宿アストロホールで観ていて、様々な思入れもあり大好きなバンドです。ご冥福をお祈りします。

 


 

2022年10月のディスカホリック

今年もあと2ヶ月です。そろそろ2022年アルバム・ベスト10を考える時期にもなってきました。個人的にはギターロック系にいいアルバムが、多かった気がします。逆にニューエイジミュージック系はリリース量が多い割には、これと言ったアルバムに出会えなかった感じです。

 

2020年10月のディスカホリックは、レコード7作、CD4作、カセット1作の合計12作品の購入実績となりました。円安なので、なるだけ国内で購入しようと15年振りにTower Records Onlineを使ってみました。価格は安いのですが、取り寄せが多くて確保出来ずにキャンセルになった商品もありました。他社では買えるのにね。せっかく購入してもしっかりと聴けていないのも多いでので、その辺り、もう一度確認する必要も有りそうです。

 

Brannten Schnüre / Das Glück Vermeiden(Vinyl) 購入先Discogs(Mo) 購入価格€40.00 EUR(5,964円)

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ドイツのエクスペリメンタル・ダークフォーク・ユニットBrannten Schnüreの新作。数年前からコアな人気を得ており、リリースされるアルバムの殆どが瞬殺廃盤となっています。デジタル配信も積極的ではなく、フィジカルを購入しないと聴くことが出来ない状況です。今回は本当にタイミング良く購入出来ました。

 

 

Sonic Youth / In Out In(CD) 購入先Diskunion.net 購入価格1,520円

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Sonic Youth が2000年〜2010年にかけて様々な場所でレコーディングを行った未発表曲を収録した作品集。この時代のどのアルバムよりもSonic Youthの実験的な要素を掘り下げた全5曲。寄せ集めのコンピレーション盤ですが、侮ることの出来ないアルバムです。2曲でJim O'Rourkeが参加しています。

 

 

Enhet För Fri Musik / Dokument 1: Improvisationer Och Bandmusik För Vilt Dansande Själar(Vinyl) 購入先Diskunion.net 購入価格2,897円

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先月に引き続いて今月も購入してしまったスウェーデンサイケデリック・フォークバンドEnhet För Fri Musik の2015年作品。今年Aguirre Recordsよりリイシューされました。ノイズ、インダストリアルの重鎮Dan Johanssonを中心としてBlod ことGustaf Dickssonも参加してアウトサイダー的な世界を展開しています。

Enhet För Fri MusikのメンバーでもあるBlod(Gustaf Dicksson)について書いています。


 

Built To Spill / When The Wind Forgets Your Name(CD) 購入先Diskunion.net 購入価格2,232円

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Doug Martsch を中心とするアイダホ州のインディー・ロック・バンドBuilt to Spillの7年振りの新作。 Sub Popからのリリースで、これまでに無く、清々しく勢いのあるサウンドになっていると思う。

 

 

Vox Populi! / Aither(Vinyl) 購入先Diskunion.net 購入価格2,375円Primary

フランスのエスニック・インダストリアル・バンドVox Populi!の1989年作品。

今年リリースされたVox Populi!のアーカイヴ音源について書いています。


 

Roy Montgomery Featuring Emma Johnston / Rhymes Of Chance(CD) Amazon.co.jp 購入価格400円

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ニュージーランドのエクスペリメンタル・ギタリストの2021年作品。Emma Johnstonが2曲歌っています。

 

 

Old Million Eye / The Air's Chrysalis Chime(Vinyl) 購入先Tower Records Online 購入価格4,578円

Dire Wolvesのベーシストとしても活動しているBrian LucasのソロユニットOld Million Eyeの新作。

昨年、Old Million Eyeについて書いています。


 

DWLVS(Dire Wolves) s​/​t(7inch Vinyl) 購入先Stoned to Death Bandcamp 購入価格€12.25 EUR(1,809円)

この2年ほどの間に、サンフランシスコ、フィラデルフィアアムステルダム各メンバー拠点を変えてソロ活動を行っているDire Wolves。そんな状況の中での新曲です。

 

 

Eric Arn & Margaret Unknown / Visions of Krychlič(Cassette) 購入先Stoned to Death Bandcamp 購入価格€11.25 EUR(1,661円)

 

Primordial UndermindのEric ArnとMargaret Unknownによる今年リリースされた2作目となるギター・バトル作品。

Primordial Undermindの新作について書いています。


 

Borja Flames / Nuevo Medievo(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格4,010円

スペイン出身でフランスを拠点に活動しているエクスペリメンタル・アヴァンポップを奏でるBorja Flamesの新作。Catalina MatorralやJune et Jimのユニットで一緒に活動しているMarion Cousinも参加しています。

2年前にMarion Cousinについて書いています。


 

Baba Zula / Hayvan Gibi(2Vinyl) 購入先Jet Set Online 購入価格4,040円

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トルコのバンドBaba Zula の2020年にリリースされたライブ盤。今頃になって、このアルバムのことを知って慌てて購入しました。

3年前にBaba Zulaについて書いてます。


 

Oren Ambarchi / Shebang(CD) 購入先購入先Diskunion.net 購入価格2,750円

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Oren Ambarchi のDrag Cityからリリースされた新作。

Oren Ambarchi の昨年12月リリースのライブ盤について書いています。


 

Oren Ambarchi “Live Hubris” は、石橋英子、Jim O’Rouke、Mats Gustafsson、が参加したミニマルでコズミックな世界!

Oren Ambarchi “Live Hubris” は、2016年にリリースされた傑作アルバム “Hubris” のライブ盤です。2019年に50歳になったOren Ambarchiと彼がオーナーを務めるレーベルBlack Truffleの10周年のお祝いの一環として、ロンドンの Café Oto で行われたライブ・パフォーマンスのドキュメントであります。2021年12月にBlack Truffleよりレコード・オンリーでリリースされ、すぐに完売状態となった人気作です。自分は今年1月にBlack Truffle Bandcampで何とか購入することが出来ました。もっと早めにブログで取り上げようと思っていたが、延び延びになってしまった。少し前にリプレスされたようですが、円安のため購入時よりも高くなっていますね。

 

Oren Ambarchi / Live Hubris

15人編成でBlack Truffleファミリーと言われるメンバーJim O’Rouke、石橋英子、Crys Cole、James Rushford、Joe Talia、Julia Reidy、Will Guthrieの他、Mats Gustafsson、Johan Berthling、Andreas Werliinのスウェーデン人脈も参加しています。Konrad Sprengerの奏でるエレクトロニクスとOren Ambarchiのギターを筆頭に7人のギタリストによるアンサンブルを中心に、曲によってフルート、サックス、3台のドラムなどが効果的に絡んできます。ジャーマン・エレクトロニクス、フリージャズといった雰囲気を醸しながら、ミニマルでコズミックな世界へと導いてくれます。

 

2016年のスタジオ盤 “Hubris” は、緻密に計算されつくした完璧なグルーヴ感を構築した傑作といえるアルバムとなった。今回のライブ盤は、曲構成もHubris Part1からPart3の3曲と同じで、一部メンバーも被っている。にも関わらず “Live Hubris” という別世界を作り上げてしまった。諸処の事情があって最低限の事前準備だけで臨んだライブだったようです。

Part1では、Jim O’Roukeのギターシンセ石橋英子のデジタル処理されたフルートが無機質なエレクトロニクス・サウンドに花を添えています。一方、Part3は、Andreas Werliin、Joe Talia、Will Guthrieによるトリプル・ドラムに絡むMats Gustafssonのバリトン・サックスが自由奔放に掻き鳴らしている。こうしたライブならではのワイルドなインプロヴィゼーションを駆使した結果が、別世界を築いたと思う。各メンバーのテンションの高さとOren Ambarchiに対する思いが一つになって出来た素晴らしいライブ盤です。是非とも大音量で聴いてトリップして欲しい!

 

 

9月にDrag Cityより新作 “Shebang” もリリースされています。注文済みで間もなく届く予定です。こちらも楽しみです。

 

 

10年前にもこのブログでOren Ambarchiを取り上げていました。


 

The Parelsの奏でる摩訶不思議で奇妙なサウンドとは

摩訶不思議なサウンドを奏でるロサンゼルスのEddie RuschaとJim GoodallによるThe Parels。今年リリースされた5年振りの3rdアルバム “Soul Moth” を紹介します。この2人、ノイズ・シューゲイザーバンドMedicineのメンバーでもありました。

 

Eddie Ruscha Talks New Music, Secret Circuit, Classic Past Work, and  Upcoming Projects — Weirdo Music Forever

Eddie RuschaはMedicineのファースト・アルバムのみの参加で、ベースとアルバムデザインを担当していました。このアルバムデザインを共同で行ったいたのが、LAFMS(Los Angeles Free Music Society)の中心バンドSmegmaのメンバーでもあったTom Recchionだったのです。2016年のLAFMSのコンピレーションBoxにも1曲ですが、参加しています。様々なバンドを経て、ソロ・プロジェクトSecret Circuitとしても活動しています。

 

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一方、Jim Goodallは80年代初期からドラマーとして様々なバンドで活動しており、90年代Medicineの結成時からのメンバーで、解散、再結成を経た現在もMedicineとして活動しています。あのノイズバンドWhitehouseのメンバーだった時もありました。

 

The Parels / Soul Moth

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前作同様に、今回もフィンランドのレーベル、Lal Lal LalとIkuisuusの2社からの共同リリースです。Soul Moth(魂蛾)と題された本作からは、サイキックな雰囲気も感じられます。エキゾチック・サイケ、スワンプ・ファンク、ミュージック・コンクリートサウンド・コラージュなど、今あるジャンルを一度解体して再構築したかのような奇妙なサウンドに仕上げています。聴き込むことで、深みにマハっていく厄介な作品です。2人のマルチプレイヤーとしての力量が最大限に活かされた内容となっています。

 

Eddie Ruschaがプロデュースを行っていて、Jim Goodallがアートワーク担当しています。アルバムジャケットもユニークで奇妙です。繭の中に花がある裏ジャケットがちょっと不気味ですね。マスタリングをフィンランドのエレクトロニクス奏者Samuli Tannerが行っています。彼はフィンランドのインプロ・サイケフォークバンドKemialliset Ystävätに参加したり、同国の実験音楽家の巨匠である故Pekka Airaksinenともコラボレーションもしている新進気鋭のミュージシャンです。フィンランドアメリカ(ロサンゼルス)との接点も興味深い。ただ、リリースしているLal Lal LalとIkuisuusは、こうした摩訶不思議なサウンドを全世界から探しているレーベルでもありますしね。

 

The Parelsについては、前作 “Mineral Kingdom” も取り上げています。

 

 

もはや、孤高のギタリストではなくなったSteven R. Smithの2枚の新作!

Steven R. Smithの昨年リリースされたアルバム “In The Spires” を今後を占う重要なアルバム!として記事にした。今年になって新たなる展開を示す2枚のアルバムがリリースされました。彼について当ブログで何回か取り上げており、重複する部分もあると思うが、あれこれ書き綴っていきたいと思う。

 

ロサンゼルスを拠点に活動しているギタリストSteven R. Smith。彼は本人名義の他に、Hala Strana、Ulaan Khol、Ulaan Passerine、Ulaan Markhor、 Ulaan Janthinaと様々な名義で活動を行っています。その多くが自身ひとりによる自宅録音での製作です。ギターをメインに色々な楽器も熟すマルチプレイヤーでもあります。故に他者を受け入れずに、すべて自分で行っていた。私はSteven R. Smithを、孤高のギタリストと呼んでいた。

 

90年代中頃よりソロ活動を行いながら、サンフランシスコのサイケデリック・バンドMirzaのメンバーでもありました。このMirzaには、カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになったGlenn Donaldson、そして現在Dire Wolves、Angel Archerとして活動を行いながらソロ・ユニットOld Million Eyeとしても活躍しているBrian Lucasらが参加していた。Mirza が解散した2000年代初めにはGlenn Donaldsonが立ち上げた音楽集団Jewelled Antlerの中心的バンドThujaにも参加。その頃にSteven R. Smithは東欧フォークに影響を受けたHala Stranaとしても活動しています。

 

Thujaが解散した2000年代後半より、精神的なことで引きこもってしまったようです。そんな状況の中で、1人で音楽制作を行うようになっていた。バスクラリネット奏者Gareth Davisやドローン・アンビエント作家Dirk Serriesとのコラボレーション・アルバムはあったものの、基本的には他者を受け入れずに自分のアイデアを自らの力量によって音楽にすることに没頭していた。ライブ活動も行わず、レコーディングのみ行いリリースするだけになってしまった。

 

Steven R. Smithは音楽の方向性によって名義を使い分けています。私的に区別するとHala Strana(東欧フォーク)、Ulaan Khol(ギタードローン)、Ulaan Passerine(ポストロック、フォーク)、Ulaan Markhor(サイケデリックロック)、 Ulaan Janthina(アンビエントドローン)、そして本人名義(ギターソロ)といった感じかな? アルバムによって様々な要素が入り交じっているため、分りづらい部分もあるのも確かです。そう思うリスナーがいることを本人も理解しているが、名義や音楽性に拘っていて、すべてSteven R. Smithでいいじゃないかと言うことには成らないようです。

 

他者を受け入れずに、すべてを自分で行うことについては、最近になって変化が見られるようになった。ターニングポイントになったのが2019年にリリースされたGlenn Donaldsonとのコラボレーションユニット43 Odesです。たぶん、Glenn Donaldsonが長きに渡って誘いを掛けてたのでしょうね。この43 OdesにはBrian Lucasがゲスト参加しており、アートワークも担当しています。その後、Brian LucasのソロユニットOld Million EyeにSteven R. Smithがパーカッションとしてゲスト参加。昔の仲間達が、内に籠もっていた彼を外に向けさせたことに嬉しさを感じた。

 

昨年リリースのSteven R. Smith “In The Spires” が初期のユニットHala Stranaの東欧フォーク的な雰囲気とUlaanの様々な名義で実践してきたドローン、アンビエント、ノイズを巧く組み合わせた感じです。これまでの様々な要素を纏め上げたSteven R. Smithの集大成とも言えるアルバムでした。それに続く今年リリースされた2枚のアルバムが非常に興味深い作品となっています。

Steven R. Smith / Spring

今年5月にSoft AbuseよりリリースされたSteven R. Smith “Spring” は、バスクラリネット奏者Gareth Davisが参加しています。2010年のコラボレーション・アルバム “The Line がAcross” 以来のコラボです。これまでのアヴァンギャルドなギター・ソロに比べると、より歌に特化したアルバムにしたかったそうです。ヴォーカルは入っていませんが、メロディー・ラインを意識したGareth DavisのバスクラリネットやSteven R. Smithのギターワークが冴え渡っています。バスクラリネット以外の音は、すべてSteven R. Smithが行っており、後からGareth Davisが音を入れることで作り上げています。以前はギターとバスクラリネットの音が真っ向勝負していましたが、今回はSteven R. Smithのサウンドの隙間をGareth Davisが巧く埋めています。聴き込むことで一つの物語を感じるアルバムです。

 

Ulaan Passerine / Sun Spar

今年9月に自身のレーベルWorstward RecordingsよりリリースされたUlaan Passerine名義のアルバムです。Steven R. Smith(ギター、ベース、ドラムス)、Glenn Donaldson(バンジョー、ギター)、Brian Lucas(カシオトーン、テープス)、Gareth Davis(バスクラリネット)、Yvonne Sone(オルガン)、Michelle Bailey(ヴァイオリン)、Nick Collias(フルート)、Filippo Tramontana(フレンチ・ホーン)の総勢8人のメンバーで制作されています。

 

Glenn Donaldson、Brian Lucasといった昔の仲間達や “Spring” にも参加しているGareth Davisを始として管弦楽器のメンバーが参加して、フォーキーなポストロックといった雰囲気を醸し出しています。Steven R. Smithだけでは、決して作り上げることの出来なかった世界だと思う。やはり、カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人としてReds, Pinks & PurplesやSkygreen Leopardsを率いていたGlenn Donaldsonの存在が大きい。Steven R. Smithの様々なアルバムって身構えて聴くことが多いけど、このアルバムだけはまったりとエンドレスに聴くことの出来る傑作です。

もはや、孤高のギタリストではないですね。今年の2作は、音楽的方向性が違っているけど、両方とも素晴らしいです。是非、聴いて欲しい!!

 

 

これまでSteven R. Smithについて、色々と取り上げています。纏めてアップして置きます。

2021年リリース、Steven R. Smith / In The Spire

2020年リリース、Ulaan Janthina

2013年リリース、Steven R. Smith、Ulaan Khol / Ending/Returning

2012年リリース、Ulaan Markhor

 

 

2022年9月のディスカホリック

ブログをやっていて嬉しいことは、取り上げたバンドやアーティストからのリアクションがあることです。今月書いたPrimordial Undermindの新作について、バンドやレーベルからのシェアやリツイートがありました。

FacebookでPrimordial Undermindがシェアしており、名指しでdōmo arigatōとコメントも頂いています。一方、Twitterでは、リリース元Sunrise Ocean Bender Recordsがコメント付でリツイートしてくれました。そのリツイートにPrimordial UndermindのEric Arnがイイネを着けています。自分の好きな音楽について書いているだけですが、本人達からのリアクションは本当に有難いことです。ブログを続ける励みにも成りますね。

 

 

2022年9月のディスカホリックは、CDが5作品、レコードが3作品の購入実績でした。今月はちょっと少なめですね。考えてみると30年以上に渡ってCDやレコードを毎月欠かさずに買い続けてきました。物置には15年近く段ボール箱に入れられ封印されたCD達が大量に放置されています。何年か前にディスクユニオンにCDを200枚買い取って貰い2万円受け取ったことがありました。1枚100円? いや、殆どがマニアック過ぎて10円、20円の世界であった。まだ、買い取ってくれるだけ良かったかも。

 

でも、そうも言ってられない状況のようです。ハードオフ吉祥寺店の話ですが、CD、DVDの買い取りと販売を終了していたようです。中古屋が買い取らない状況は深刻です。これからは自分で処分するしかないのでしょうね? フィジカルメディアに拘るから、そうなると思っている方々も多くいると思うが、今更デジタルやサブスク等に簡単に変更できないのですよ!

 

Alexander Zethson / Residy(CD) 購入先Art Into Life 購入価格2,277円

Alexander Zethson – Residy – Soundohm

レーベルThanatosis Produktionの運営も行っているスウェーデンのピアニストAlexander Zethsonの新作。

 

 

Yokada / Stillness & Sirens(CD) 購入先Art Into Life 購入価格2,167円

2018年リリースのAlexander Zethsonのピアノ、Johan Berthlingのベース、Johan Holmegardのドラムによるジャム・セッション作品。

 

 

Magnus Granberg / Night Will Fade and Fall Apart(2CD) 購入先Art Into Life 購入価格2,827円

スウェーデンの現代室内楽の作曲家であり、即興演奏家としても活動してるMagnus GranbergのThanatosis Produktionからの新作。

 

 

Terry Riley / Organum for Stefano(CD) 購入先Art Into Life 購入価格2,277円

Terry Riley - Organum For Stefano (CD) – Meditations

Terry Rileyの2013年にボローニャにあるサンタ・マリア・デイ・セルヴィ教会で行ったライブ音源。

 

 

Lend Me Your Underbelly / Campfire Acid Folk(Vinyl) 購入先Art Into Life 購入価格3,377円

生物学者、画家としても活動しているオランダのChristian Berendsによる音楽プロジェクトLend Me Your Underbellyの2019年リリースのアルバム。

 

 

Ulaan Passerine / Sun Spar(Vinyl) 購入先Worstward Recordings Bandcamp 購入価格$37.50 USD(5,630円)

Steven R. Smithの変名ユニットUlaan Passerineの新作。何と、90年代に彼が参加していたサイケデリック・バンドMirzaの元メンバーであるGlenn DonaldsonとBrian Lucasがゲスト参加しています。

 

 

Hala Strana / Fielding(Vinyl) 購入先Worstward Recordings Bandcamp 購入価格$42.50 USD(6,380円)

2000年代に活動していたSteven R. Smithの変名ユニットHala Strana。2003年にCDリリースしていた “Fielding” のレコードによるリイシュー。

 

 

Mirza / Last Clouds(CD) 購入先Amazon.co.jp(カイトブック) 購入価格3,320円

90年代に活躍したサイケデリック・バンドMirza の2001年リリースのコンピレーション盤。このブログでも何回も取り上げいるSteven R. Smith、サンフランシスコのポップ職人としてThe Reds, Pinks And Purplesを率いているGlenn Donaldson、Dire WolvesのメンバーでありソロユニットOld Million Eyeとしても活動しているBrian Lucasらが参加していました。彼らの原点とも言うべきバンドです。