2000年代初期からフォークからサイケデリック・ロックまで奏でるアメリカ・バーモント州の夫婦Matt ValentineとErika ElderによるMV & EE。彼らのライブ音源6枚セットが昨年末にリリースされました。今回も自身のレーベルChild Of Microtonesからのセルフリリースです。自分達のやりたいように、制約を受けずに、真の意味でのインディーズ道を追求しています。
MV & EEの場合、ライブ・アルバムがもの凄く多い。これまでも単品やCDR8枚セット、カセット8本セット、など色々とリリースしている。ライブ毎にすべて録音しており、タイミングさえ合えばいつでもリリース出来る音源を数多く残しているのでしょう。カセットの見直しなどで、その時々の瞬間をフィジカルにしたいと思うインディーズ系アーティストやバンドが、多くなっているのも確かです。彼らはデビュー時からライブ音源をフィジカルで残してきた先駆者的な存在だったかも知れませんね。
MV & EE / Green Ark 6 Disc Set(CDR)
本作は2009年から2021年の間に行った6本のライブをライブ毎に収録しています。Matt Valentine、Erika Elderの2人に加えてサポートメンバーとしてCoot Moonがベースやドラム、パーカッション、ペダルシンセとして参加。クレジットを確認するとCoot Moon は、Directionとしても記載されているので、Coot Moonが関わったライブ音源を集めたのでしょうね。
すべてのライブ音源は、サウンドボード録音でオーディエンス・ノイズが少ないので、最初聴いた時はスタジオ・ライブかと思ってしまった。MV & EEはバンド編成の時はMV & EE with The Bummer Road名義を使っていて、多彩なゲストが多数参加して豪華なサウンドを展開することもある。しかし、今回はシンプルに Matt ValentineとErika Elderの2人が醸し出しサウンドを基本に、サポートのCoot Moonがさりげなく絡んでいます。
年代毎に聴き比べてみると、2009年のフォークの佇まいから2021年のサイケデリック・ロックへの様々な変遷を感じます。面白いのは、どのライブもジャムセッション的に即興演奏へとなだれ込んでいるのです。彼らが脚光を浴びる様になった2000年代初期のフリーフォーク・ムーブメントの影響が大きいことを再確認してしまった。フリーフォーク・ムーブメントとは、これまでのフォークにエレクトロニカやインプロビゼーション、ノイズなどを取り込でいく展開で、彼らの精神的な原点として脈々と受け継がれています。
選曲された曲について書くと、ライブの定番曲である “Flow My Ray” は2010年のアルバムLiberty Roseに収録されいます。原曲は端正なフォークなのですが、ライブではそれぞれアレンジも変更になっていて興味深いです。“Mine All Troubled Blues” は初期の名曲で2004年のアルバムLunar Blues収録で、MV & EE with The Bummer Roadの2006年のアルバムGreen Bluesにも収録しています。”East Mountain Joint(EMJ)” も同じくGreen Bluesに収録されているので、これは聴き比べするしかないですね。後は、個人的に彼らの最高傑作と思っている2020年リリースCap Tripsの収録曲 “Operator”、“Dancin' In The Street” がそれぞれ2013年、2016年に演奏されていたことも驚きでした。
このようにMV & EEについて、新たなる発見や再確認をしながらヘビィーに聴き捲っています。
1、CHAMPAGNE OF AUD soundboard live in milwaukee, WI 11/19/09
2、WOOK AF soundboard live in brattleboro, VT 01/19/10
3、INNER PEACE soundboard live in hamburg, GERMANY 11/26/13
4、PAY ONE PRICE soundboard live in becket, MA 08/01/15
5、BURN OUT soundboard live in brattleboro, VT 12/02/16
6、MISSUS COOT pristine aud reel live in north adams, MA 10/02/21
アルバム収録のライブ映像を探しましたが、見つかりませんでした。代わりに2010年のライブ映像と2014年のNelsonville Music Festivalの映像をアップしておきます。
Green Ark 6 Disc Setはここから購入することが出来ます。
昨年MV & EEのMatt Valentineのソロアルバムについて書いています。