ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Magic Tuber Stringbandの新作 “Tarantism” は、音楽セラピスト的な1枚!

アメリカ・ノースカロライナ州ダーラムを拠点とするCourtney WernerとEvan Morganの男女デュオMagic Tuber Stringband。Courtney Wernerの奏でるチェロ、フィドルに絡むEvan Morganのギター、バンジョー、パンプオルガン、シュルティ・ボックス、フィールド・レコーディングを駆使して彼ら独自のアパラチアン音楽を実践していました。今回、5作目となる新作がFeeding Tube Recordsよりレコードでリリースされました。これまでの4作がすべてカセット音源で、Feeding Tube Recordsも3作目 ”When Sorrows Encompass Me 'Round“ をリリースしています。それだけに、初レコード・リリースに期待が高まっているのは確かです。

 

Magic Tuber Stringband / Tarantism

本作はこれまでのアパラチアン音楽をベースにしたフォーク、アンビエント、ドローンの流れを継承しつつ、よりゴスペル的な雰囲気をも醸し出している。アルバムタイトルのタランティズムとは、イタリア南部が起源で15世紀ころ毒グモに噛まれたことで発症する痛みを、タランテラとよばれる軽快なナポリ舞曲の踊りによって治療が行われていたことから来ている。

 

Tarantismの語源となったナポリ舞曲 “Tarantella” も収録されている。イタリアの映画監督Roberto Rosselliniの1950年の映画Stromboliのサントラとしてしても使われていた古楽をサンプルベースとして作られたとライナーに書かれています。民衆の雄叫びもあってスピリチュアルなエネルギーを感じた。一方で “Ruah” におけるチェロとシュルティ・ボックスの擦れたドローン・サウンドからは不穏な要素を見せつけていて、続くOrb​-​Weaverでは、それを払拭するMagic Tuber Stringbandの力強いサウンドを披露している。

Garden Portalからリリースされた前作 “Wind Machines” は、ヴォーカル曲も収録されており、言葉による明確なメッセージを確認することが出来た。今回は全8曲で、少数の楽器とフィールドレコーディングされた音のインスト曲です。アルバム・タイトルから鑑みて、痛みや悲しみを治療しょうとした音楽セラピスト的な1枚なのでしょう。今後も彼らの動向に注目していくしかないですね。

 

 

 

前作 “Wind Machines” について書いています。