ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

2023年アルバム・ベスト10

本年もよろしくお願いします。年明け最初の投稿は2023年アルバム・ベスト10です。2023年にリリースされた新作を基本に選出しています。コロナ・パンデミックが明けて、様々な制限が無くなったことで、各バンドやアーティストの思いが一気に噴出した作品が多かったように思う。特にNo.1に選んだMV&EEは、これまで彼らを少しでも聴いたことのある方なら,「これはいったい何なんだ」と思うリスナーが居ても不思議でない。そのぐらいの衝撃度を持った作品に仕上げている。No.2のRichard Youngsについても、毎度様々な展開で攻めてくるが、予想外のアプローチに驚いてしまった。音楽的クオリティーも高く、Richard Youngsらしさも感じる1枚となっている。その他の作品も非常に素晴らしかったので、ベスト10を選出するにあたって、こんなに苦労するとは思わなかった。嬉しい限りですけどね。

 

No.1  MV&EE / Green Ark

実験的要素を取り入れてサイケ・フリーフォークを奏でてきたMV&EE。2022年にリリースされた6枚組アーカイブ・ライブ音源ボックスで吹っ切れたのでしょうか?本作は新たなる領域へと進化しています。

 

 

No.2  Richard Youngs / Modern Sorrow

アルバム毎に、毎回違った展開をしてくるRichard Youngs。本作の声に焦点を当てたアイディアとギターを使用せずにオルガン・ドローンとドラムマシンを中心としたぶっ飛んだ音楽センスに脱帽です。

 

 

No.3  Gong / Unending Ascending

Daevid Allen亡き後のGongの中で、一番70年代に近い内容となっている。ただし、決して過去の焼き増し的ではなく、今のバンドとして新たなる進化を遂げている。

 

 

No.4  75 Dollar Bill / Power Failures

ギタリストChe ChenとパーカッションニストRick Brownによるデュオユニット75 Dollar Bill。コロナ前の2020年にデジタル配信されていた音源がレコードとしてリリース。寄せ集め的な内容であるが、75 Dollar Billの魅力を凝縮した1枚。

 

 

No.5  Magic Tuber Stringband / Tarantism

Courtney Wernerのチェロ、フィドルとEvan Morganのギター、バンジョーによる男女デュオMagic Tuber Stringband。本作は一つのコンセプトに基づいた音楽セラピスト的な1枚。

 

 

No.6  43 Odes / HWN UN AMN

Steven R. Smith、Glenn Donaldson、Brian Lucasによるユニット43 Odes。彼らが目指した桃源郷への世界!

 

 

No.7  Kammerflimmer Kollektief / Schemen

3人から4人編成となったドイツのエクスペリメンタル・バンドKammerflimmer Kollektief。よりラディカルでエキセントリックに進化、熟成した感じです。

 

 

No.8  Arnold Dreyblatt、The Orchestra Of Excited Strings / Resolve

ニューヨーク出身のアヴァン・ギャルドな作曲家Arnold Dreyblattの10年振りの新作。しかもThe Orchestra Of Excited Strings名義です。これまでのアルバムの中で、よりロック的な魅力が満載!

 

 

No.9  La Tène / Ecorcha​、Taill​é​e

民族音楽をモチーフにミニマルなドローンミュージックを展開しているLa Tène。より一層スピリチュアルでドローン・エスノフォーク的な雰囲気が満載 !

 

 

No.10  Järnakollektivet / Järnakollektivet

未だ正体不明のJärnakollektivet。ディストリビューターを務めるDiscreet Musicがもっと情報を提供しても良いかいと思うけど・・

 

 

2023年12月のディスカホリック

今年最後の更新です。毎度の拙い文章に付き合ってくれる皆さんに感謝です。本年も大変お世話になりました、良いお年をお迎え下さい。私の方は、年末年始も仕事です。老体に鞭打って頑張りますね。いつもように月末近くのディスカホリック(購入履歴)です。12月ですので、年間購入枚数や購入先別についても書いています。2023年アルバム・ベスト10は、年明けとなります。

2023年12月のディスカホリックは、レコード6、カセット1の7作品の購入実績でした。年間では、レコード70、CD25、カセット22でトータル117作品となりました。昨年が146作品なので2割ほど減らしてます。保管する場所の問題など色々ありますから、来年は売ることも視野にいれて、デジタル音源を活用したPCオーディオも考えたいと思う。でも、ここ何年か同じようなことを言っているので、たぶん前には進んでないかな?物に拘って音楽を聴いてきた世代ですから、そう簡単に変えられないですね。

 

The Garbage And The Flowers / In Valhalla(10inch Vinyl) 購入先Garden Seat Bandcamp 購入価格$80.00 AUD(8,256円)

ニュージーランドのサイケ・フォークThe Garbage And The Flowersの4曲収録された50枚限定の10インチレコード。昨年の6人編成によるミニ・アルバム “Cinnamon Sea” のインディーズ・ギターバンドといった様相を示したのに対して、本作は3人編成でシンプルにサイケ・フォークを奏でています。

 

 

DWLVS(Dire Wolves)/ Easy Portals(Vinyl) 購入先Centripetal Force Bandcamp 購入価格$47.00 USD(7,416円)

2019年のヨーロッパ・ツアー以降は、パンデミックの影響などもあって各メンバー個々の活動をしてきたDWLVS。やっと全員が集まって作られた新作。より即興性を高めて、ダークでプログレッシブな方向へと変化している。

 

 

75 Dollar Bill / Singularity 06: Anchor Dragging Behind(Vinyl) 購入先The state51 Conspiracy 購入価格£46.25 GBP(9,090円)

Karlrecordsからリリースされた新作 “Power Failures” に魅了されてから、2020年リリースのライブ盤、そして今回の今年2月にリリースされた片面1曲収録の12インチレコードまで購入してきました。後はプライベート・リリースしていたリイシュー・カセット音源を購入するかな?

 

 

Eternal Music Society / Eternal Music Society(Cassette) 購入先Eternal Music Society Bandcamp 購入価格kr125.00 SEK(1,843円)

スェーデンのアヴァン・フォークEnhet För Fri Musikのメンバーであり、ソロ・ユニットLedaとしても活動しているポストインダストリアル女性マルチ奏者Sofie Herner。彼女がドラマーとして参加したということだけで、購入したEternal Music Societyのカセット音源。バキバキと掻き鳴らされるサウンドに圧倒されます。

 

 

John Coxon / Real Magic Vol.1(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格4,178円

Spiritualizedのサポート・メンバーとしても活動しているJohn Coxonが、自身が運営に携わるレーベルTreaderからリリースしたソロ・アルバム。ギター、パーカッション、CDJターンテーブルを使ったアヴァン・ギャルドな作品。ブルース的な雰囲気も感じさせつつ、独自の世界観を披露しています。

 

 

Catherine Christer Hennix / Solo for Tamburium(2Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格5,260円

哲学者、数学者の顔も持つスウェーデンの伝説的作曲家Catherine Christer Hennixのベルリンで開催されたMaerzMusik 2017で録音された作品。

 

 

William Henry Meung / Hiraeth And Limerence(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格4,450円

ニュージーランドのWilliam Henry Meungによるローファイ・フォークやノイズを絡めた不思議な作品。

 

 

年間の購入先別です。やはりBandcampでの購入が多いです。直接バンドやレーベルと繋がりが出来るメリットもあるけど、送料が高く付く。そこが悩むところでもあります。国内のショップに頑張って仕入れて欲しいけどね。

その国内のショップでいうのならTobira Recordsが、私の好みにあった音楽を扱っています。実店舗も兵庫県加西市にあるので行ってみたいけど、北海道の田舎町に住んでいるので遠いです。今月も3作品の購入をしています。

あと、海外だとDiscreet Musicです。実店舗の展開をしながらレーベル運営も行っています。スェーデンのアンダーグランド・シーンに嵌ったのもDiscreet Musicのおかげだと思う。レーベルの作品自体は、Tobira RecordsやArt Into Lifeでも扱っているので、入手しやすくなっています。今月購入したEternal Music SocietyはDiscreet Music絡みです。本人達のBandcampでの購入の方が安かったのでした。

 

Bandcamp 27作品


Amazon.co.jp 18作品

https://www.amazon.co.jp

 

Tobira Records     15作品


Disk Union 14作品


Discreet Music 11作品


Art Into Life 7作品


Discogs 5作品

https://www.discogs.com/

 

Aguirre Records 4作品


Linus Records 4作品


Juno Records 4作品


Reconquista 2作品


ライブ物販 2作品

 

Tower Records 1作品


HMV 1作品


The state51 Conspiracy 1作品


Sulatron Records 1作品

https://www.sulatron.com/xoshop/store-maintenance-mode.php

 

 

Gongの新作 “Unending Ascending” Daevid Allenの理念を継承しつつ、今のバンドとして進化した傑作!

1969年にDaevid AllenとGilli Smythにより結成され、数多のメンバー変遷を経ながら現在も活動しているGong。ところが、2015年にDaevid Allenが癌で死去。彼の遺志を引き継いて残されたメンバーがGongを存続させます。彼らは精力的にライブ活動を行い、日本でも2018年10月と今年5月にライブを行っている。いずれも元GongのSteve Hillageとの素晴らしいライブを披露しています。そんな彼らの4年振りとなる待望の新作がリリースされました。Daevid Allen亡き後のGongのスタジオ・アルバムとして3作目となる “Unending Ascending” を取り上げます。

 

Gong / Unending Ascending

本作は2019年の前作 “The Universe Also Collapses”、 2016年の前々作 ”Rejoice! I'm Dead!“と同じメンバーKavus Torabi(vo, g)、Dave Sturt(b, vo)、Fabio Golfetti(g, vo)、Ian East(sax, fl)、Cheb Nettles(ds, vo)の5人です。Gongの長い歴史のなかで、ここまでメンバーチェンジが無かったことも驚きです。結束力が強いのと、個々のメンバーの力量がしっかりと活かされている証だと思う。これはライブを観ると一目瞭然です。

 

今回、ゲスト・ヴォーカルとしてSaskia Maxwellが、3曲(Ship Of Ishtar、Lunar Invocation、Asleep Do We Lay)に参加している。これはGilli Smythを意識したウィスパーヴォイス的な展開です。プロデューサーとして前作のミックスドを行ったFrank Byngが、Gongと共同で行っています。ジャケット・デザインの曼荼羅アートはDaevid Allenによるものです。今のGongの精神的な支えになっていることは言うまでもありませんね。

 

これまでのように10分を越える曲は無く、比較的コンパクトに纏められた全8曲を収録。殆ど曲間はなく、あるいは音の途切れがないまま次の曲へ進む展開は、小気味よく感じる。Gongらしさを受け継ぎながら、決して過去の焼き増し的な内容ではなく、新たなる進化を遂げている。アルバム・タイトルUnending Ascending(終わりのない上昇)からも伝わってきます。

オープニングナンバー “Tiny Galaxies” は、Kavus Torabiのヴォーカルを中心としたシンプルな曲ですが、望遠鏡を持って宇宙に目を開けてくださいと歌っている。また別の曲 “O, Arcturus” ではWith love from Planet Gongと歌っていることから、宇宙をテーマに妄想たっぷりな世界を表していることは確かです。Daevid Allenが居ても居なくても、この部分はしっかりと反映されていますね。

 

サウンド面では5人の英知が結集しており、グランジポスト・ロックアンビエント、60年代サイケポップといった要素を絡めて、変拍子も交えたアンサンブルで攻め込んでくる。メンバーのなかで特に注目したいのはIan Eastです。彼の奏でるサックス、フルートが、曲に様々な表情と勢いを与えている。70年代のGongを支えたDidier Malherbeとは、違うベクトルでの凄さをIan Eastに感じてしまった。今のGongにとって彼の存在が大きいことを改めて確認してしまった。

 

Gongファンと言うと、70年代しか知らない方々も多いと思う。そんなリスナーにこそ、ぜひ聴いて貰いたい。本作はDaevid Allenの理念を継承しつつ、今のバンドとして進化した傑作です。

 

 

 

 

Steven R. Smith、Glenn Donaldson、Brian Lucasによるユニット43 Odesの新作 “HWN UN AMN” に思いを寄せて…

このブログでは毎度お馴染みのSteven R. Smith。カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになったGlenn Donaldson。Dire Wolves、Angel Archerのメンバーとして活動を行いながらソロ・ユニットOld Million Eyeとしても活躍しているBrian Lucas。この3人によるユニット43 Odesの2作目となる新作 ”HWN UN AMN” がEiderdown Recordsよりレコードでリリースされました。これはもう、取り上げるしかないです。個々のメンバーの音源やブログで取り上げた記事のシェアを含めて、43 Odesの思いを書いていきたいと思う。

 

3人は90年代のサンフランシスコを拠点とするサイケデリック・バンドMirza として活動していました。Darla Recordsより2枚のアルバムをリリース。当時のDarla RecordsSci-Fiスペース・ロックを中心にBliss Outシリーズとして興味深いバンドを数多く手がけていた。私は1997年リリースのデビュー・アルバムAnadromous (The Bliss Out Vol. 7)で、Mirzaの存在を知ったのであった。このカオスティックなサウンド、めちゃカッコいいです。この後、もう1枚アルバムをリリースして解散してしまう。

Mirza / Anadromous (The Bliss Out Vol. 7)より

 

 

Glenn Donaldson

Glenn Donaldson はMirza解散後の1999年に実験音楽家Loren Chasseと音楽コミュニティJewelled Antlerを立ち上げます。レーベルも運営して、自分たちの作品やこれだと思うインディーズ・バンドの作品をCDRにてリリースしていた。そのJewelled Antlerの中心的なバンドThujaにGlenn Donaldson、Loren Chasseらと共にSteven R. Smithも参加。サイケデリックなフォークドローン・ノイズを奏でていた。当時はフリー・フォーク・ムーブメントがコアに盛り上がっていたが、2000年代中頃にブームが下火となるとJewelled AntlerやThujaも役割を終えたようにひっそりと消滅する。

Thuja / Pine Cone Temples(Full Album)

ただ、ここで終わらないのが、Glenn Donaldsonの凄いところであります。彼はJewelled Antlerの時からDonovan Quinnと組んでいたThe Skygreen Leopardsをよりポップでサイケなフォークへと進化させ、その流れは彼の現在やっているバンドThe Reds, Pinks And Purplesに引き継がれていく。彼の周りには、いつも様々なミュージシャンが集まるようになり、いつしかカリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになっていく。今年になってCarly PutnamとのユニットHelpful Peopleもスタートさせている。

The Skygreen Leopards / The Jingling World of The Skygreen Leopards

The Reds, Pinks And Purples / The Town That Cursed Your Name

Helpful People / Brokenblossom Threats

改めて思ったが、Glenn Donaldsonを個別に取り上げたことが無かったのでした。今度、機会があれば書くしかないですね。

 

 

Steven R. Smith

もはや、孤高のギタリストではなくなったSteven R. Smithの2枚の新作! - ディスカホリックによる音楽夜話

Steven R. Smithについては、これまで何度も取り上げているので、それらを参考にして欲しい。ライブを行わずに様々な名義(Hala Strana、Ulaan Khol、Ulaan Passerine、Ulaan Markhor、Ulaan Janthina)を使って、1人でアルバム制作に没頭していったのであります。マルチプレーヤーで他者との交流もしていなかった彼のことを、私は孤高のギタリストと呼んでいた。リリース量も多くて、今年も既に3作リリースしている。9月にリリースされた最新カセット音源 ”Arroyo Tree Complex” をアップしておきます。


 

Brian Lucas

Primary

Brian LucasはMirza解散後、同じくMirzaのメンバーであったMark Williamsと組んでFather Beardとして活動していた。ただ、本人的には音楽から離れて自分を見つめ直す時間が必要とのことで、タイに移住して生活していたとも語っている。その時にソロ・ユニットOld Million Eyeを立ち上げている。2010年代中頃にDire Wolvesにベースとして参加。Mirzaのアルバム・ジャケットは彼のデザインであったことから、Dire Wolvesのアルバム・ジャケットも何作か手掛けていた。今年10月にDire Wolvesの新作 "Easy Portals" がリリースされました。


 

43 Odesの結成については、Glenn DonaldsonがSteven R. Smithに一緒にやろうといつも声掛けを行っていたようです。ただ、Steven R. Smithが拒否していた。特に仲が悪かったということではなく、心の準備が出来ていなかったとのこと。やっと2018年に2人でレコーディングが始まって、アルバム・ジャケットをBrian Lucasに依頼することで43 Odesが結成される。そのアルバムはEiderdown Recordsよりカセット音源として2019年にリリース。Jewelled Antler時代のThujaを思わせるような内容であった。その後、Steven R. SmithはBrian Lucasのソロ・ユニットOld Million Eyeのアルバム “The Incandescent Switch” にゲスト参加。心の病が無くなったSteven R. Smithは、昨年Glenn Donaldson、Brian Lucasらがゲスト参加したUlaan Passerine名義による大傑作アルバム “Sun Spar” を作り上げている。

43 Odes

Old Million Eye / The Incandescent Switch

Ulaan Passerine / Sun Spar

 

 

結局、43 Odesの新作について、ここまでのことを書かなくては、語れなかったのであります。

43 Odes / HWN UN AMN

 

本作はSteven R. Smithのスパイク フィドルバリトン プサルテリー、ブズーキ、ハーモニウムといった民族楽器を中心にして、彼のHala Stranaのような東欧フォーク的コンセプトを網羅している。それに対してGlenn Donaldsonはバンジョー、スペース ハープ、ギター、ベース、パーカッション、ドラム マシンを駆使してメロディーやリズムを引き出して曲のパランスを取っている。そこにBrian Lucasのテープ音源、ループ音源が色を添える展開となっている。

 

アルバムの1曲目 “HVO OV HVO” でGlenn Donaldsonの奏でるパンジョーが、ポップに鳴り響きながら、サイケデリックな世界へと導く。曲ごとにその風景を変えつつ、徐々にゆっくりと43 Odesの目指す桃源郷へと変化していくのが分かる。そして、ラスト曲 “UNU” で現実に引き戻そうとしている。この曲にBrian LucasのOld Million Eyeを思い浮かべてしまった。全曲インストで歌詞は無いけど、3人の吟遊詩人による思いが伝わってくる作品となっている。

 

Steven R. Smith

spike fiddle, baritone psaltery, organ, electric piano, bouzouki, harmonium, moog synth, electric guitar, spike cello, tapes

Glenn Donaldson

banjo, bowed banjo, space harp, guitar, bass, percussion, drum machine, synth, casio

Brian Lucas

tapes, loops, cover painting

 

Recorded by 43ODES

Mixed by Glenn Donaldson

 

 

2023年11月のディスカホリック(来年3月11日のSlowdive東京公演に行きます)

今年のフジロックで素晴らしいライブを披露してくれたSlowdive。来年3月11日に東京の豊洲PITにてライブが行われます。これまでに、フジロックで3回、2017年の単独公演も観ているだけに、もう行くしかないですね。オフィシャル先行でチケットを確保しました。豊洲PITは初めて行く会場だけに、近場で泊まることを考えた。ただ、豊洲周辺の宿代が高いのに驚きました。函館から羽田の往復航空券+宿泊のセット企画で60,000円から70,000万円もするのであった。そんなことで、品川で宿を確保。こちらはセット企画でも45,000円です。新橋からゆりかもめ新豊洲に行く感じかな。今月Slowdiveの新作も購入しました。まだ未開封ですけど、しっかり聴きこんでライブに行きたいと思う。楽しみです!

https://smash-jpn.com/live/?id=4065

 

2023年11月のディスカホリックはレコード8、CD3の11作品の購入実績でした。そろそろ年間アルバムベスト10を考えなくてはと思いつつ、未だに購入したレコード、CDなど、聴けてないものも多い。何々をしながら音楽を聴くタイプじゃないので、ゆっくりと音楽を聴く時間が欲しいかな?

 

Slowdive / Everything Is Alive(Vinyl) 購入先Linus Records 購入価格3,828円

Slowdiveの6年振りとなる新作。

 

 

Explosions In The Sky / End(Vinyl) 購入先Linus Records 購入価格3,828円

2021年にサウンド・トラック盤のリリースはあったが、Explosions In The Skyのオリジナル・アルバムとしては7年振りの新作。

 

 

Sunwatchers / Music Is Victory Over Time(Vinyl) 購入先Disk Union Online 購入価格3,520円

パンク、ジャズ、マスロックなどジャンルの垣根をぶっ壊して掻き鳴らされるSunwatchersの3年振りの新作。

 

 

 

Gong / Unending Ascending(Vinyl) 購入先Disk Union Online 購入価格4,290円

故Deavid Allenの遺志を継ぎ現在も活動を続ける新生Gongの3作目となる新作。

 

 

 

Rhys Chatham & David Fenech / Tomorrowstartstonight(CD) 購入先 Disk Union Online 購入価格2,002円

No Waveとの関りも深いNYの実験音楽家Rhys Chathamとフランスを拠点に活動しているマルチ奏者David Fenechのコラボ作品。

 

 

75 Dollar Bill Little Big Band / Live At Tubby's(2Vinyl) 購入先Amazon.co.jp 購入価格4,174円

今月、新作を取り上げた75 Dollar Billのバンド編成による2020年リリースのライブ盤。

 

 

 

Gareth Davis / In Vivo(CD) 購入先Linus Records 購入価格2,068円

Steven R. Smithの共演者としても活動しているバスクラリネット奏者Gareth Davisの2021年のアルバム。Steven R. Smithも参加しています。

 

 

Gareth Davis、Jan Kleefstra、Romke Kleefstra / Tongerswel(CD) 購入先Linus Records 購入価格770円

Gareth Davisのバスクラリネット、Jan Kleefstraのポエムリーディング、Romke Kleefstraのギターによる2011年リリースのミニマル作品。

 

 

Enhet För Fri Musik / Det Finns Ett Hjärta Som För Dig(Vinyl) 購入先Discogs(Possible‐Musics) 購入価格€48.50 EUR(8,029円)

Enhet För Fri Musikの2017年リリースのアルバム。入手困難とされていたが、Discogsで何とか購入出来た。

 

 

 

Leda / Neuter(Vinyl) 購入先Discreet Music 購入価格€32,99EUR(5,643円)

Enhet För Fri Musikのメンバーとしても活動しているSofie HernerのソロユニットLedaの新作。

 

 

Livskraft / Livskraft(Vinyl) 購入先Discreet Music 購入価格€32,99EUR(5,643円)

Livskraft LP

スウェーデンの正体不明のLivskraft。分かっていることは Järnakollektivetのメンバーが絡んでおり、彼らの謎の工房で録音されたとのことです。サンプル音源しかないですが、いい感じです。

 

 

 

ベルギーのアヴァン・ギャルドなフォークを奏でる鬼才Antoine Loyerと合唱隊Megalodons Maladesによるコラボ作の第2弾!

ベルギーのアヴァン・ギャルドなフォークを奏でる鬼才Antoine Loyerの今年6月にリリースされた5作目となる新作 “Talamanca” を紹介します。2021年の前作 ”Sauce chien et la guitare au poireau” と同じくブリュッセルの合唱隊Megalodons Maladesとの共作です。この前作がフランスのサイケ・バンドBégayerとのスプリット・アルバムで、A面がAntoine Loyer & Megalodons maladesサイト、B面がBégayerサイトといった構成でした。両者ともにフランスのレーベルLe Sauleよりアルバムをリリースしているレーベル・メイトであるが故に成し得た企画であり、2つのバンドの魅力を巧く纏めた傑作アルバムとなった。今回はAntoine Loyer & Megalodons maladesによるフル・アルバムとなります。

 

Antoine Loyer & Megalodons malades / Talamanca

本作もフランスのLe Sauleからレコードでのリリースです。Antoine LoyerのヴォーカルとMegalodons maladesからの3人による女性ヴォーカル&コーラスを軸にして、ギター、リュートコントラファゴット、ピッコロ、ハーモニウムロンメルポット、フラウト・トラヴェルソ、パーカッションの古楽器を含めたアンプラグド楽器が独特なアンサンブルを展開。民族音楽やクラッシックのエッセンスを取り込んだアヴァン・ギャルドなフォーク・ミュージックですが、Megalodons maladesのヴォーカル&コーラスのおかげで、愛らしくポップに聴かせてくれる。

前作同様にBégayerのLoup Ubertoが1曲Percheron frelichonを歌っています。あとベルギーの小学生と一緒に作った3曲 Demi​-​lune、Robin l'agriculteur d'Ellezelles、Pierre​-​Yves b​è​gueは、これまで以上に幅広く聴いて欲しいといったAntoine Loyerの思いが伝わってくる。アルバムタイトルであるTalamancaは、本作が録音されたスペインから独立運動を行っているカタルーニャ州の村の名前です。様々なメッセージも含んだAntoine Loyerの世界を聴いて欲しい!

 

 

“Talamanca” には収録されていませんが、Pierre​-​Yves b​è​gueのAntoine Loyerによるソロ・ヴァージョンです。子供たちの声もしっかりと反映させています。

 

 

前作 ”Sauce chien et la guitare au poireau” について書いています。


 

ギターと木箱による打楽器カホンを駆使した75 Dollar Billの世界!

Secondary, 2 of 2

ギタリストChe ChenとパーカッショニストRick Brownによるデュオユニット75 Dollar Bill。ブルックリンで2012年に結成して地道にライブ活動を行い徐々に注目を浴びるようになります。2019年リリースのアルバム “I Was Real” が、英国の音楽誌The Wireの年間ベスト・アルバムNo.1に選出されています。The Wire誌ですから、メインストリームと関係なく独自の視点で選んでいることに注目ですね。

Che Chenは、秋山徹次、向井千惠とのコラボレーションなど、日本のアンダーグランド・シーンとも繋がっているのも興味深い。そのほか、Pauline Oliveros、Eliane Radigue、Yoshi Wada、Sun Circleを集めた名作コンピレーション “Attention Patterns” の監修を行い、マルチに活動している。一方、Rick Brownは80年代初期より音楽活動を行っており、自分は90年代のAlan Licht、Sue Garnerらと結成したインディーズ・バンドRun OnでRick Brownを知った。Run OnはAlan Lichtのソロ活動に専念したいとのことで解散してしまう。その後、Rick Brownの活動をフォローしきれていなかったのでした。

 

今回、75 Dollar Billの新作が、実験的な音楽を積極的に扱っているドイツのレーベルKarlrecordsよりリリースされました。Karlrecordsはこのブログでも取り上げたことのあるKammerflimmer Kollektiefの新作もリリースしており、その時にKarlrecords Bandcampのフォロワーとなった。新作が出るごとに色々と案内メールが来ていたのでした。

 

75 Dollar Bill / Power Failures

本作はコロナ・パンデミックの影響でライブ活動などが制限される中で、これまでのリハーサル音源やジャム・セッション音源、ライブ音源を再構築して2020年に “Power Failures” としてデジタル配信しました。それをKarlrecordsが新たにリマスターして2枚組レコードでリリースしたアルバムです。Che Chenのギターを中心にソプラノサック、フルート、バスリコーダーなども駆使し、そこにRick Brownの木箱による打楽器カホン、マラカス、ハンドメイドのホルン、カウベル、電子機器が絡む世界。

 

曲によって様々なゲストが参加している。1曲目 ”Power Failure #2“ は、アルトサックスとギターにSteve Maing、ヴァイオリンにRun OnのメンバーであったSue Garnerが参加して、フルバンドといった趣でポストロック的な雰囲気を醸し出している。この2人、これまでも75 Dollar Bill のサポーターとして色々なアルバムに参加している。

 

3曲目 ”15 (IRA)“ は、Yo La TengoIra Kaplanが参加しており、フリーキーなギターを堪能することが出来る。これはライブイベントのリハーサル時に偶々行ったジャム・セッションの録音だそうです。Ira Kaplanからすれば、何も考えずに自由奔放に弾いただけなのにと思っているかもしれない。

 

圧巻なのは19分を越えるラスト7曲目 “... Noguchi Garden In Long Island City” です。Che Chenのギターワークがしっかりと反映された曲です。それを支えるRick Brownは、前半はホルンの音をさりげなく響かせ、途中でカウベルを組み合せ、最後は木箱による打楽器カホンで締めている。75 Dollar Bill流のアメリカン・ブルースといった感じで、故Jack Roseを思い出してしまった。

録音された時期や場所、そして編成人数も違う音源を集めて作られた新作 “Power Failures” でありますが、75 Dollar Billの培ってきた要素をこの1枚にぶち込んだ感じがする。今後、どのように変化していくか楽しみです。

 

 

 

ブログ読者であり、お互いにフォローしている本多重夫 -Shigeo Hondaが、75 Dollar Billの2020年にリリースされたライブ盤 “Live at Tubby's” について書いています。Steve Maing、Sue Garnerらが参加しての7編成で、名義が75 Dollar Bill Little Big Bandになっています。この記事を読んでアマゾンに注文を入れました。