ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Gongの新作 “Unending Ascending” Daevid Allenの理念を継承しつつ、今のバンドとして進化した傑作!

1969年にDaevid AllenとGilli Smythにより結成され、数多のメンバー変遷を経ながら現在も活動しているGong。ところが、2015年にDaevid Allenが癌で死去。彼の遺志を引き継いて残されたメンバーがGongを存続させます。彼らは精力的にライブ活動を行い、日本でも2018年10月と今年5月にライブを行っている。いずれも元GongのSteve Hillageとの素晴らしいライブを披露しています。そんな彼らの4年振りとなる待望の新作がリリースされました。Daevid Allen亡き後のGongのスタジオ・アルバムとして3作目となる “Unending Ascending” を取り上げます。

 

Gong / Unending Ascending

本作は2019年の前作 “The Universe Also Collapses”、 2016年の前々作 ”Rejoice! I'm Dead!“と同じメンバーKavus Torabi(vo, g)、Dave Sturt(b, vo)、Fabio Golfetti(g, vo)、Ian East(sax, fl)、Cheb Nettles(ds, vo)の5人です。Gongの長い歴史のなかで、ここまでメンバーチェンジが無かったことも驚きです。結束力が強いのと、個々のメンバーの力量がしっかりと活かされている証だと思う。これはライブを観ると一目瞭然です。

 

今回、ゲスト・ヴォーカルとしてSaskia Maxwellが、3曲(Ship Of Ishtar、Lunar Invocation、Asleep Do We Lay)に参加している。これはGilli Smythを意識したウィスパーヴォイス的な展開です。プロデューサーとして前作のミックスドを行ったFrank Byngが、Gongと共同で行っています。ジャケット・デザインの曼荼羅アートはDaevid Allenによるものです。今のGongの精神的な支えになっていることは言うまでもありませんね。

 

これまでのように10分を越える曲は無く、比較的コンパクトに纏められた全8曲を収録。殆ど曲間はなく、あるいは音の途切れがないまま次の曲へ進む展開は、小気味よく感じる。Gongらしさを受け継ぎながら、決して過去の焼き増し的な内容ではなく、新たなる進化を遂げている。アルバム・タイトルUnending Ascending(終わりのない上昇)からも伝わってきます。

オープニングナンバー “Tiny Galaxies” は、Kavus Torabiのヴォーカルを中心としたシンプルな曲ですが、望遠鏡を持って宇宙に目を開けてくださいと歌っている。また別の曲 “O, Arcturus” ではWith love from Planet Gongと歌っていることから、宇宙をテーマに妄想たっぷりな世界を表していることは確かです。Daevid Allenが居ても居なくても、この部分はしっかりと反映されていますね。

 

サウンド面では5人の英知が結集しており、グランジポスト・ロックアンビエント、60年代サイケポップといった要素を絡めて、変拍子も交えたアンサンブルで攻め込んでくる。メンバーのなかで特に注目したいのはIan Eastです。彼の奏でるサックス、フルートが、曲に様々な表情と勢いを与えている。70年代のGongを支えたDidier Malherbeとは、違うベクトルでの凄さをIan Eastに感じてしまった。今のGongにとって彼の存在が大きいことを改めて確認してしまった。

 

Gongファンと言うと、70年代しか知らない方々も多いと思う。そんなリスナーにこそ、ぜひ聴いて貰いたい。本作はDaevid Allenの理念を継承しつつ、今のバンドとして進化した傑作です。