ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

2023.5.11 The Steve Hillage Band and Gong@川崎Club Citta

The Steve Hillage BandとGongによる夢のジョイント・ライブに行ってきました。The Steve Hillage Bandといっても現在は、Steve HillageとパートナーであるMiquette Giraudyの2人とGongのメンバー5人が参加した編成となっています。Steve HillageとMiquette Giraudyの2人は、70年代Gongの黄金期を支えてきたメンバーでもあります。Daevid Allenが亡くなったあと、彼の遺志を引継いでGongを継続させたメンバー達を支えたのは、間違いなくSteve Hillageでありました。The Steve Hillage Bandを復活させたことに様々な思いも伝わってきます。

 

ライブは2部構成で、最初にGongの演奏から始まります。メンバーはDave Sturt(ベース)、Fabio Golfetti(ギター)、Ian East(サックス、フルート、クラリネット)、 Cheb Nettles(ドラムス)、Kavus Torabi(リード・ヴォーカル、ギター)の5人です。まずは、Fabio Golfettiのグリッサンド奏法によるギター音が響き渡る中、各メンバーがステージに登場してきます。

 

オープニング曲は昔の誰もが知っている曲ではなく、2019年のThe Universe Also Collapsesからの “Forever Reoccurring” でした。20分を越えるドラマチックな曲で、今のGongが行おうとしている全てを凝縮した曲でもあります。スペーシィーでサイケデリックに鳴り響く世界は、まさに新生Gongの幕開ともいえる曲でスタート。最初に戸惑っていた観客のボルテージを、この曲で一気に盛り上げた感じもする。選曲は2016年のDaevid Allen追悼盤とも言えるRejoice! I'm Dead! からの曲 “Kapital”、“Rejoice!” も演奏し、ライブのみの未発表曲も披露していました。もはや、過去のバンドではなく、今を見て欲しいといった思いが伝わって来ます。この1部では昔の曲は無かったのでした。

各メンバーの力量も演奏にしっかり反映されていた。うつむき加減で顔の表情を見せない Cheb Nettlesのドラムはいつもの様にパワフルであった。それに絡む Dave Sturtのベースがしなやかにサウンドの土台を築き上げている。グリッサンド奏法など様々なギターワークを披露するFabio Golfettiは、長きに渡ってDaevid Allenを支えてきたことが伺える。Ian Eastの様々な管楽器の音色があってこその、Gongであることも再確認した。そして、リードヴォーカル、ギターとして自由奔放に駆け回るKavus Torabiの姿があった。

 

個人的に圧巻なのは、全員でヴォーカルをとる曲もあって4人が横一線に並んだ時に、バンドとしての結束力も感じた。後ろでこっそりとCheb Nettlesも歌っていたし、Ian Eastがヴォーカルに負けじとノイジーにサックスを掻き鳴らしていたのが印象的。カリスマ的な存在であったDaevid Allenですが、それを5人全員で乗り越えてきたGongです。このライブならDaevid Allenも喜んでいると思えるような素晴らしいライブであった。

 

25分ほどの休憩を挟んで、2部はThe Steve Hillage Bandです。自分の中ではSteve Hillageというと、どうしてもSystem 7のイメージが付きまとう。これまでSystem 7のライブを何回も見ている部分が大きいと思う。Steve Hillageのプログレ的なギターワークとMiquette Giraudyのシンセサイザーが絡んで、テクノ、トランス、アンビエントを奏でてきたSystem 7。今回、Gongをバックにしてバンド編成として原点回帰するのだから、どうなるのか楽しみでもあった。

 

選曲の方はSteve Hillage の70年代ソロ曲のオンパレードです。1曲だけソフト・マシーンの1st アルバムに収録されていた “Why Are We Sleeping?” のカヴァーも行っていた。70歳を超えても、そのギターの音色は衰えることなく、70年代のソロでも90年代以降のSystem 7であっても基本は変わっていない。Steve Hillageは淡々とギターとヴォーカルを熟しながら徐々にトランス状態に入っていく感じであった。そんな彼を支えるバックの面々は非常にいい仕事をしていた。Dave SturtとCheb Nettlesのリズム隊の2人は、曲に合わせるがごとくパワフルであり繊細にサウンドの根幹を構築。Miquette Giraudyはキュートなヴォーカル、エレクトロニクスなどでサウンドに彩りを付けて存在感を示していた。バンド編成での初来日だけにファンとしては、たまらにライブであったことは言うまでもない。

 

はい、これにてライブは終了です、とはならないですね。まだGongの過去の名曲を演奏していません。アンコールの声援にも力が入って盛り上がったとき、Steve Hillage、Miquette Giraudyも含めて出演者7人全員が登場。“You Can't Kill Me”、“I Never Glid Before”、“Tropical Fish : Selene”、“Master Builder” の4曲を熱演です。これまでGongのライブを初来日から観てきた私にとって、ここまでパワフルな演奏は初めてかもしれません。本当に素晴らしいかったです。結成してから54年も経っているGongですが、新旧様々な要素を取り入れて新たなるスキームへと進化したのです。今後もファンであり続けていくことを再確信したライブでもあった。

 

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