ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Randall Nieman率いるFüxaの22年作 “Covered In Stars” は、Sonic Boomに対するオマージュを表したアルバムです。

Fuxa – Covered In Stars

1994年にRandall NiemanとRyan Andersonの2人が中心となって活動を始めたFüxa。90年代のDarla Recordsが、Bliss Outシリーズとしてエレクトロニックスを駆使したスペースロックを多く取り上げており、密かなSi-Fiブームを起こしていた。Füxaもその一角を担うバンドとして名を知られるようになる。2000年代に入るとRandall Niemanのソロ・プロジェクト的な様相を呈するようになり、アルバム毎に多彩なゲストが参加するようになります。彼はレーベルMind Expansionのオーナーでもあり、Füxaのアルバムを始めとしてMartin Rev (Suicide)、The Telescopesなどのアルバムも手掛けている。

 

本日は昨年10月にリリースされた “Covered In Stars” を紹介します。2015年のNeil Mackayとのコラボレーション・アルバム “Apollo Soyuz” 以来で、Füxa単独名義としては2014年 “Dirty Frequencies”  の次となるアルバムです。

 

Füxa / Covered In Stars

”Covered In Stars” はRocket Girlからピクチャー仕様のレコードとしてリリース。これまでと同様に多彩なメンバーが参加して製作されています。元Galaxie 500のメンバーでLunaを結成したDean WarehamとLunaのメンバーで彼のパートナーでもあるBritta Phillips。後期のSpacemen 3から初期のSpiritualizedのメンバーで、現在はSlipstreamとして活動しているMark RefoyとJon Mattock。90年代のエレクトロ・パンクを奏でていたAdd N To (X)のメンバーだったAnn Shenton。この80年代後半から90年代のインディーズ・シーンを彩ったメンバーが参加。この面々は、これまでもFüxaのアルバムに参加していて、Randall Niemanとのしっかりとした信頼関係であることが伺える。

 

マスタリングはSlowdiveのSimon Scottが担当で、プロデュースにはSpacemen 3の最後のアルバムにゲスト出演し、Sonic Boomが結成したSpectrum初期のメンバーであったRichard Formbyも参加しています。アルバム・ジャケットやピクチャーディスクのデザインは、80年代のエレクトロ・ポップバンドTalk Talkのアートを長く支えてきたJames Marshが担当しています。宇宙の彼方へと導いてくれそうな感じがいいですね。

 

 

オープニング曲 “Help Me Please” はSonic Boomのカヴァー曲です。Sonic Boom がJason Pierceとの確執があったSpacemen 3 在籍時の1989年にソロ・アルバムをリリース。そこからの1曲です。本作ではBritta Phillipsがヴォーカルを取っています。もちろんギターはDean Warehamで、原曲にも関わっていたMark Refoy、Richard Formbyも参加している。Sonic Boomの原点であり、個人的にも大好きな曲でもあります。

 

Sonic Boom絡みでいうと、”Mary“ もSpectrumのカヴァー曲です。2008年のIndian Giverに収録されており、Randall Niemanも参加していたアルバムです。Maryとは、交通事故で亡くなったStereolabのMary Hansenに対する思いを綴った曲です。原曲に比べると2倍速の速さでエレクトロ色を強めた曲に仕上げています。

 

この2曲以外にも、興味深い曲があって ”Sun Is Shining“ は、Ann ShentonとRandall Niemanの共作でFüxaの2013年のDirty Dに収録されていた曲をリニューアル。サイケノイズとシューゲイザーを備えたSpacemen 3 を思わせるようなサウンドに仕上げている。それともう1曲 “Real Wild Child” はオーストラリアのロックンロール歌手Johnny O'Keefeのカヴァー曲で、のちにIggy Popもカヴァーしている。この辺りの選曲はRichard Formbyのセンスかなと思ってしまった。

 

本作には直接的な参加はしてないけど、Sonic Boomに対するオマージュを表したアルバムです。それをSonic Boomと関係の深いメンバーを集めて作り上げてしまった。加えて参加したメンバーの魅力も引き出したうえで、Füxaとしてのエッセンスも鏤めている。Randall Niemanはバランス感覚に優れたアーティストだと思う。元々Sonic Boomのライブ・サポートを長く行ってきたこともあるだけに、そろそろ2人のコラボレーション・アルバムをリリースして欲しいと思った。