「ロックお経」と題された本作は、パーカッショニストJon Lelandとシンセサイザー奏者Marc Riordan、そしてSun Arawのギター、ヴォーカルの3人による生演奏をベースに作られています。トロピカルでオーガニックな雰囲気のグルーヴを醸しながら、ファンキーでコズミックさも感じさせます。これまでになくポリリズミックで不思議なサウンドにSun Arawのすっとぼけたようなヴォーカルが絶妙な塩梅で絡んできます。複雑なアンサブルを、いとも簡単にサウンド構築するサポート・メンバーの力量も凄い。2人のメンバーは、2017年のアルバム「The Saddle Of The Increate」にも参加していただけに息もぴったりです。恍惚感と酩酊感に満ちあふれた中毒性たっぷりの全4曲を収録しています。これまで共演してきたThe Congos、Laraajiらの影響もしっかりと反映されているのも面白い。このアルバムで桃源郷へと導いてくれるのなら、「ロックお経」といっても問題ないですね。何もかも忘れてエンドレスで聴いていられる究極の1枚です。この編成でライブが観たい~
8年前にジャマイカの伝説的ヴォーカル・グループThe Congosとの共演盤「 Icon Give Thank」について、書いていました。
ベルギーのレーベルCrammed Discの創始者でもあるMarc Hollander率いるAksak Maboul の40年振りの3rd「Figures」(2枚組)がリリースされました。2014年には80年代前半に録音されメンバー間の主導権争いもあってお蔵入りとなっていた未発表音源「Ex-Futur Album」もリリースされているが、こちらはVeronique Vincent & Aksak Maboul with The Honeymoon Killers名義で幻のアルバムとされていた。「Ex-Futur Album」のリリースが切っ掛けでライブ活動を再開したAksak Maboul。ライブの高評価もあって、今回の新作リリースまでたどり着いたのであります。
Aksak Maboul / Figures
現在のメンバーはMarc HollanderとVeronique Vincentを中心に2人の愛娘Faustine Hollanderも参加。Marc Hollanderの作り上げる曲にVeronique Vincentのヴォーカルが入り、1980年の2nd「Un Peu De L'Âme Des Bandits」にも参加していたHenry CowのFred FrithやArt Zoyd、Univers ZeroのMichel Berckmans、TuxedomoonのSteven Brownなど多くのサポート・ゲストによって「Figures」のサウンドが構築されています。
「Figures」は、2nd「Un Peu De L'Âme Des Bandits」のアヴァンギャルドでシリアスなR.I.O(Rock In Opposition)を意識したサウンドに比べると、よりポップで華麗に鳴り響いている。個人的にはVeronique Vincentの存在が大きいと思っている。80年代前半にVeronique Vincent をヴォーカルとして起用していたThe Honeymoon KillersとAksak Maboulの合体によってニュー・ウェーブ的なポップ路線へと舵を切ってしまった。その流れを継承した感じでもあります。そのサウンドは「Ex-Futur Album」で聴くことが出来ます。ただ、本作ではこれまでのアヴァンギャルドな雰囲気はそのままでポップになる、まさにアヴァン・ポップなサウンドを作り上げたのです。そこに1st「Onze danses pour combattre la migraine」のジャズ、エクスペリメンタル、エレクトロニクス、ミニマルなどの要素が加わったAksak Maboulの集大成とも言える素晴らしいアルバムです。彼らの時代を越えた最高傑作だと断言します。
Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone and Bass Guitar
ミニマル、ドローンミュージック、実験音楽、アンビエント、サイケデリックなどの音楽を中心に扱っているMeditations。その通販サイトで偶々出会ってしまったサックス奏者Sam GendelとベーシストSam Wilkesによる2018年リリースのコラボレーション・アルバム「Music for Saxofone and Bass Guitar」に嵌まってしまった。レコードとカセットでリリースして瞬く間に完売したとのことです。中古市場でも高値がついていたらしく、最近になってカセットがリイシューされました。2人について詳しく無いのですが、両者ともLAを拠点に様々な音楽活動を行っています。
本作はジャズ・テイストに加えて、サイケ、ミニマル、アンビエントなどの要素も絡めたサウンド。サックス、ベースの音を中心に、曲によってエレクトロニックス、リズムボックス、ヴォイスがさり気なく雰囲気を盛り上げている。様々な試みを行っているが、空気感は一貫していて、アヴァンギャルドで有りながらも優しく心に染みこんでくる。瞑想的で独特の響きを持って桃源郷へと導いてくれる素晴らしいアルバムです。ただ、個人的に桃源郷と書いてしまったが、最後の曲が「You'll Never Get To Heaven」でしたね(笑)