ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

Sun Arawの奏でるロックお経とは

ジャマイカの伝説的ヴォーカル・グループThe Congosとの共演盤「Icon Give Thank」(2012年リリース)やニューヨークの電子音楽家でニューエイジ・ミュージックの巨匠Laraajiとの共演盤「Professional Sunflow」(2016年リリース)が、話題となったLAのSun ArawことCameron Stallones。常に独自のサイケ道を追求しているSun Arawの新作「Rock Sutra」が自身のレーベルSun Ark Recordsよりリリースされました。

 

Sun Araw / Rock Sutra

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「ロックお経」と題された本作は、パーカッショニストJon Lelandとシンセサイザー奏者Marc Riordan、そしてSun Arawのギター、ヴォーカルの3人による生演奏をベースに作られています。トロピカルでオーガニックな雰囲気のグルーヴを醸しながら、ファンキーでコズミックさも感じさせます。これまでになくポリリズミックで不思議なサウンドにSun Arawのすっとぼけたようなヴォーカルが絶妙な塩梅で絡んできます。複雑なアンサブルを、いとも簡単にサウンド構築するサポート・メンバーの力量も凄い。2人のメンバーは、2017年のアルバム「The Saddle Of The Increate」にも参加していただけに息もぴったりです。恍惚感と酩酊感に満ちあふれた中毒性たっぷりの全4曲を収録しています。これまで共演してきたThe Congos、Laraajiらの影響もしっかりと反映されているのも面白い。このアルバムで桃源郷へと導いてくれるのなら、「ロックお経」といっても問題ないですね。何もかも忘れてエンドレスで聴いていられる究極の1枚です。この編成でライブが観たい~

 

 

 

 

8年前にジャマイカの伝説的ヴォーカル・グループThe Congosとの共演盤「 Icon Give Thank」について、書いていました。


 

 

Aksak Maboulの40年振りとなる新作、時代を超えた最高傑作!

ベルギーのレーベルCrammed Discの創始者でもあるMarc Hollander率いるAksak Maboul の40年振りの3rd「Figures」(2枚組)がリリースされました。2014年には80年代前半に録音されメンバー間の主導権争いもあってお蔵入りとなっていた未発表音源「Ex-Futur Album」もリリースされているが、こちらはVeronique Vincent & Aksak Maboul with The Honeymoon Killers名義で幻のアルバムとされていた。「Ex-Futur Album」のリリースが切っ掛けでライブ活動を再開したAksak Maboul。ライブの高評価もあって、今回の新作リリースまでたどり着いたのであります。

 

Aksak Maboul / Figures

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現在のメンバーはMarc HollanderとVeronique Vincentを中心に2人の愛娘Faustine Hollanderも参加。Marc Hollanderの作り上げる曲にVeronique Vincentのヴォーカルが入り、1980年の2nd「Un Peu De L'Âme Des Bandits」にも参加していたHenry CowのFred FrithやArt Zoyd、Univers ZeroのMichel Berckmans、TuxedomoonのSteven Brownなど多くのサポート・ゲストによって「Figures」のサウンドが構築されています。

 

「Figures」は、2nd「Un Peu De L'Âme Des Bandits」のアヴァンギャルドでシリアスなR.I.O(Rock In Opposition)を意識したサウンドに比べると、よりポップで華麗に鳴り響いている。個人的にはVeronique Vincentの存在が大きいと思っている。80年代前半にVeronique Vincent をヴォーカルとして起用していたThe Honeymoon KillersとAksak Maboulの合体によってニュー・ウェーブ的なポップ路線へと舵を切ってしまった。その流れを継承した感じでもあります。そのサウンドは「Ex-Futur Album」で聴くことが出来ます。ただ、本作ではこれまでのアヴァンギャルドな雰囲気はそのままでポップになる、まさにアヴァン・ポップなサウンドを作り上げたのです。そこに1st「Onze danses pour combattre la migraine」のジャズ、エクスペリメンタル、エレクトロニクス、ミニマルなどの要素が加わったAksak Maboulの集大成とも言える素晴らしいアルバムです。彼らの時代を越えた最高傑作だと断言します。

聴いて貰うと、かなり現代的でハイセンスなサウンドに仕上がっています。StereolabAnimal Collectiveといったバンドの名前が上がってくるのも納得です。レーベル運営も行っていることで、様々な音楽を知り尽くしたMarc Hollanderの手腕が遺憾なく発揮されている。プロデュースはもちろんMarc Hollanderですが、娘のFaustine HollanderもCoproducedとしてクレジットされています。今後もAksak Maboul周辺やレーベルCrammed Discに注目していくしかないですね。

 

 

 

1977年リリースのMarc Hollanderのソロ・ユニットとして始まったAksak Maboulの1st。

  

Aksak Maboul単独名義として1980年リリースされた2nd。

 

2014年リリースのVeronique Vincent & Aksak Maboul with The Honeymoon Killers名義による80年代前半に録音された未発表音源

 

 

 

2020年6月のディスカホリック

このブログ、2012年6月19日にスタートして8年が経ちました。ミクシーの2005年の頃からディスカホリックという言葉を使って書き続けてきました。コアな音楽を取り上げているのでアクセス数もチョボチョボですが、海外アーティスト本人からのアクセスが有ったりするとやはり嬉しいです。拙い文章ですが、今後もコツコツと地道にやって行くだけですね。8年前、最初に書いた記事をアップします。未だにアクセス数の上位に入っています。

 

 

2020年6月のディスカホリックは15タイトルの実績でした。今月は素晴らしいアルバムが多いです。先に記事で書いたのもありますが、更に個別に取り上げて行きたいと思う。

 

The Strokes / The New Abnormal(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格1,723円

7年振りの新作。待つだけのことはありました。格好いいです。フジロックが来年に延期になったけど、楽しみですね。 

 

 

 

Aksak Maboulの新作を含めて3作品

Aksak Maboul / Figures(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,800円

まさかの40年振りとなる新作!アヴァンポップで華麗に鳴り響く世界。素晴らしいです~

 

新作「Figures」が素晴らしかったので、1st、2ndアルバムも購入しました。

Marc Hollander、Aksak Maboul / Onze Danses Pour Combattre La Migraine    (CD)    購入先Amazon.co.jp 購入価格3,457円

1977年リリースのMarc Hollanderのソロ・ユニットとして始まったAksak Maboulの1st。

 

Aqsak Maboul / Un Peu De L'Âme Des Bandits(CD) 購入先Amazon.co.jp  (Rarewaves-jp)   購入価格1,703円

Aksak Maboul単独名義として1980年リリースされた2nd。

 

 

 

Sun Araw / Rock Sutra(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,066円

Sun Arawの新作。 このリズミカルで不思議なサウンド、良いですね~

 

 

 

Dire Wolvesのライブ・アルバム2作品

Dire Wolves Just Exactly Perfect Sisters Band / Flow & Heady(Vinyl) 購入先  Feeding Tube Records 購入価格$45.50(5,117円)

2019年9月13日、コペンハーケンで行われたFestival Of Endless Gratitudeのライブ音源。

 

Dire Wolves Just Exactly Perfect Sisters Band / Knee Deep In The Buchla  (Cassette)   購入先Stoned To Death Bandcamp 購入価格€10.50(1,315円)

A面は2019年9月11日プラハでのライブ音源、B面は2019年9月12日ハンブルクでのライブ音源+ダブミックス音源です。Flow & Headyと併せて2019年9月は乗りまくっていたのでしょうね。

 

 

 

Curanderos / Curanderos(CD) 購入先WOW HD 購入価格1,147円

2017年にリリースされたBardo PondのGibbons兄弟によるサイドプロジェクトCuranderosの1stアルバム。

 

 

 

Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone and Bass Guitar(Cassette) 購入先Meditations 購入価格2,205円

 

前回の記事で取り上げました。

 

Music for Saxofone and Bass Guitar」が素晴らしかったので、Sam Gendel、Sam Wilkesの個々のアルバムも購入しました。

Sam Gendel / Satin Doll(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格1,975円

 

2020年リリースの新作。Nonesuchからのリリースです。 

 

Sam Wilkes / Live On The Green(Vinyl) 購入先Meditations 購入価格2,881円

2019年リリースのライブ盤。Sam Gendelもサックスで参加しています。 

 

 

 

エレクトロ・アコースティック先駆者Luc Ferrariの2作品

Luc Ferrari / Dialogue Ordinaire Avec La Machine、Sexolidad(Vinyl)  購入先Meditations 購入価格2,141円

 

2019年にリリースされたLuc Ferrariの2009年にCDでリリースされていたアルバムの初ヴァイナル盤。

 

Luc Ferrari / Photophonie(Vinyl) 購入先Meditations 購入価格2,141円

 

2019年にリリースされた生誕90周年を記念したアルバム。

 

 

 

Kavus Torabi / Hip To The Jag(CD) 購入先Kavus Torabi Bandcamp 購入価格£14.30(1,964円)

現GongのヴォーカリストKavus Torabiのソロ・アルバム。

 

 

 

Arnold Dreyblatt / Star Trap(Vinyl) 購入先Meditations 購入価格2,872円

Arnold Dreyblattは、Pauline Oliveros、La Monte Young、Alvin Lucierの下で音楽を学んだアメリカの作曲家です。彼の90年代の未発表アーカイブ音源による新作。

 

 

 

2人のSamが奏でるサックスとベースのための音楽

LEAVING RECORDS on Twitter: "Sam Gendel & Sam Wilkes new album ...

 

Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone and Bass Guitar

waltz online | Sam Gendel and Sam Wilkes | Music for Saxofone and Bass  Guitar | カセットテープの通販

ミニマル、ドローンミュージック、実験音楽アンビエントサイケデリックなどの音楽を中心に扱っているMeditations。その通販サイトで偶々出会ってしまったサックス奏者Sam GendelとベーシストSam Wilkesによる2018年リリースのコラボレーション・アルバム「Music for Saxofone and Bass Guitar」に嵌まってしまった。レコードとカセットでリリースして瞬く間に完売したとのことです。中古市場でも高値がついていたらしく、最近になってカセットがリイシューされました。2人について詳しく無いのですが、両者ともLAを拠点に様々な音楽活動を行っています。

 

本作はジャズ・テイストに加えて、サイケ、ミニマル、アンビエントなどの要素も絡めたサウンド。サックス、ベースの音を中心に、曲によってエレクトロニックス、リズムボックス、ヴォイスがさり気なく雰囲気を盛り上げている。様々な試みを行っているが、空気感は一貫していて、アヴァンギャルドで有りながらも優しく心に染みこんでくる。瞑想的で独特の響きを持って桃源郷へと導いてくれる素晴らしいアルバムです。ただ、個人的に桃源郷と書いてしまったが、最後の曲が「You'll Never Get To Heaven」でしたね(笑)

 

今回、このアルバムはカセットで購入しました。昨今のカセットブームを意識したのか、パッケージもユニークです。スリーブを小さくカセットケースに貼り付けてあってシンプルです。そこに茶封筒がセットになっていて、アルバムタイトル、アーティスト名、リリース元、曲名が記載。収納には困りますが、もの凄くお洒落に感じます。前回のブログ記事でカセット音源の購入量増えてることを書いた。レコードやCDに比べるとスリーブなどの情報量に限界があるけど、カセット音源に拘るアーティストの中には、レーベルも含めてパッケージを重要視してる方々が多い気がする。

 

 

 

「Music for Saxofone and Bass Guitar」のおかげで、この2人のSamにも興味を持ち、個々のアルバムも購入しました。まもなく届く予定です。

Sam Gendel / Satin Doll

2020年リリースの最新作。Nonesuchからのリリースです。

 

Sam Wilkes / Live On The Green

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2019年リリースのライブ盤。Sam Gendelもサックスで参加しています。

 

 

 

カセットテープ音源の購入量増えています

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CDの売り上げが世界的に落ちている状況の中で、レコード同様にカセットテープ音源の売り上げが伸びている。ストリーミング、ダウンロードといった音楽配信サービスが様々有りながら、やはり物に拘るリスナーは居るのでしょう。インディーズ・バンド辺りは音楽供給を配信で済ませることも多い。ただ、自分達の作品を形に残したいと思った時に、レコードよりはコストの安いカセットでリリースすることも納得出来る。CDはデーターでしかないことに気づいたのかも?カセットでのリリース量が増えているのも売れている要因でしょうね。単なるノスタルジーでなく、カセットテープの全盛期を知らない若者が新しい音楽メディアとして捉えたのも大きいと思う。

 

最近ネットで発見したカセットテープに関する記事二つをアップします。非常に興味深いです。


上記の両記事で話題となっているカセットテープ専門店「waltz(ワルツ)」のホームページです。まだ、行ったことがないので行ってみたいですね。

 

自分のブログでも2018年にポータブル・カセットプレーヤー、そして2019年にカセットデッキを購入した時の状況を書いています。ブログにも書いていますが、デッキを購入した時点ではカセットテープ音源9本しか持って無かったですが、現在は27本になっています。カセット・オンリーのレーベルも多くなっていますので、さらに購入量が増えていくでしょうね。


 

 

Charlemagne Palestine、長年の友人であるTony Conradに捧げたトリビュート・カセット音源

可愛いぬいぐるみを使ったインスタレーションを行うアート作家としても知られ、Terry Riley、Steve Reichなどと並ぶミニマル音楽の作曲家Charlemagne Palestine。初期の頃から実験的でオシレーターやホワイト・ノイズを駆使したミニマル・ドローン・ミュージックは、ミニマル界のアウトサイダー的な扱いをされていた。ただその分、ロックやテクノに多大な影響を与えたのは確かです。

 

今回、長年の友人であり、2016年惜しくも逝去したTony Conrad(1940ー2016)に捧げたトリビュート・カセット音源を入手したので紹介したいと思う。この作品が2017年にリリースされていたことを今頃になって知りました。

 

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Charlemagne Palestine - STTT THOMASSS ...

長いタイトルのこのアルバムは、1曲26分ほどの演奏がA面、B面両方に収録されています。ライナーノーツには1963年から70年までマンハッタンの教会で朝5時〜5時半の間毎日ベルを演奏していたCharlemagne Palestineの所へ、Tony Conradも来ていたと言った内容が書かれています。2人が知り合う切っ掛けだったのでしょう。Charlemagne Palestineのトニーと呼びかけるヴォーカルで始まり、ポエムを読みベルの演奏に繫がって行きます。まさに2人の原点を描いたサウンドです。

 

曲は2カ所の場所で録音されています。イントロの呼びかけからポエムまでの2分ほどが、2017年3月8日に詩人のClemente Soto Velezにちなんで建てられた文化施設で、ベルの演奏は2017年4月7日にNYの教会で行われています。日付に注目です。Tony Conradは3月7日生まれで、4月9日に亡くなっています。びったりと合って居ませんが、この時に合わせたかったのでしょうね。両方ともにライブ録音で、オーディエンスの声や回りの音なども入っています。Charlemagne PalestineのTony Conradに対する哀悼がしっかりと伝わってきます。



2人は60年代より共演も多く行っています。Charlemagne Palestineのミニマルに実験的なドローン要素の影響を与えたのはTony Conradとされています。まだ、まだ、この2人の埋もれた音源が多数あると思うので、是非リリースして欲しい! 尚、Charlemagne Palestineは現在も勢力的に活動を行っています。

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Tony Conradについては、こんな記事も書いていました。


 

 

フジロック2020、中止です!

正式発表はこれからですけどね。こんな状況だけに仕方ないです。来年に期待しましょう!


 

正式発表!

これを書いた時点では無かったですが、本日の11時に中止ではなく延期の正式発表がありましたね。来年も8月開催です。延期だからチケットはそのままキープしても良いとのと。キープしてくれた人には、何か面白いプレゼントを考えているようです。楽しみだなあ。