ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

オーストリア・ウィーンのデュオSky Burrow Tales、フリー・フォーク・ムーブメントの雰囲気を彷彿させる世界!

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オーストリア・ウィーンを拠点としている Ulrich RoisとSwantje Musaによる夫婦デュオSky Burrow Tales。Ulrich RoisはFeathered Coyote Recordsのレーベル・オーナーでもあり、自身のプロジェクト・バンドBird Peopleとしても活動しています。彼を支えてきたSwantje MusaとのSky Burrow Talesは2019年にライブ活動を始めて、昨年2本のカセットをリリース。今年になってフル・アルバムがLPでリリースされたので紹介します。

 

Sky Burrow Tales / Seafarin' & Backporchin'

本作はA面Seafarin' 、B面Backporchin'として、それぞれ3曲づつ全6曲が収録されています。Ulrich RoisのギターにSwantje Musaのベース、シンセを中心としてシュルティボックス、シタール、ダン・バウ、テルミン、フィールド・レコーディングスなども駆使して個々の曲に特徴を持たせている。ヴォーカル曲では浮遊感溢れる歌声がさり気なく取り込まれていて、歌物というよりは曲全体でイメージを膨らませている感じ。フォーク、ドローン、サイケデリッククラウトロックといった要素を絡めながら、2000年代中頃のフリー・フォーク・ムーブメントの雰囲気を彷彿させてくれる。 白昼夢を見るように延々と聴いていられる傑作!

よく聴いていくと、A面には海辺の水の音、B面には森林の小鳥のさえずりが、曲の始めや曲間、そして曲の終わりにそっと挿入されている。アルバム・スリーブはまさにそれを表した写真が掲載されている。改めてA面B面をそこで分けたのか?思ってしまった。彼らの様々な思いもメッセージとして伝わってくる素晴らしいアルバムです。

 

2月9日にアップされたアルバム発売を記念した自宅でのライブ映像です。彼らは自分達のライブをオンラインで定期に配信しています。


 

 

Sky Burrow Talesの本作以外の音源もアップしておきますね。 

2020年4月のライブ・ツアーで配布しようと思っていた3曲収録のカセット。コロナの影響でツアー中止になったとのことです。

 

2020年10月にCanopy Weekendsよりリリースされた4曲収録のカセット。

 

2011年より活動しているUlrich RoisのプロジェクトBird Peopleの2020年のカセット・アルバム。ジャムセッションをベースにしてサイケデリックを伝えています。

 

 

ウクライナのシンガー・ソングライターSvitlana Nianio(Світлана Охріменко)、彼女の不思議な世界に魅了されています

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ウクライナを拠点に活動しているシンガーソングライターSvitlana Nianio。90年代初期にチェンバー・サイケ・フォークバンドCukor Bila Smertで活動していました。Cukor Bila Smert解散後は、1996年にOleksandr Yurchenckoとのコラボレーション作品「Знаєш Як? Розкажи、Лiсова Колекцiя」をカセットにてプライベート・リリース。1999年にソロ・デビューアルバム「Kytytsi(Китиці)」をポーランドのレーベルKoka Recordsからリリースしてからは、ポーランドやドイツでも活動を始めます。90年代はSvitlana Nianio名義としてアルバム2枚のみで、2006年に音楽シーンから姿を消してしまうのです。

 

しばらくの間、音楽活動もしないで遊んでいたと語るSvitlana Nianioは、2015年に突如Soundcloudで新曲の配信を行ったのです。2017年にはウクライナやイギリスでのフェスでライブ活動も始めます。それに合わせるかのように再評価もされ、過去のアルバムがリイシューされるようになりました。ただ、すぐに売り切れてしまい現在入手困難になっている状況です。そんな中、昨年には2016年録音の音源を纏めた新作アルバム「Zviy(Звій)」がカセットでリリースされています。今回はSvitlana Nianioについて、色々と書き綴っていきたいと思う。

 

Svitlana Nianio & Oleksandr Yurchencko / Znayesh Yak? Rozkazhy、Lisova Kolekciya(Світлана Охріменко、Олександр Юрченко / Знаєш Як? Розкажи、Лiсова Колекцiя)

 

1996年にカセットでプライベート・リリースされたこのアルバムは、A面が1995年録音のZnayesh Yak? Rozkazhy、B面が1996年録音のLisova Kolekciyaの2作品をカップリングしてウクライナ語で表記されています。Znayesh Yak? Rozkazhyはカセットとして2017年にウクライナのレーベルDelta Shockよりリイシュー。その後、2020年にLPとしてイギリスのレーベルNight SchoolとSkireより共同リリースとなる。一方、Lisova Kolekciyaも2017年にSkireよりLPとしてリイシューされます。尚、彼女と共にその傑作を作り上げた相方Oleksandr Yurchenkoは、健康上の問題で音楽業界から引退しているようです。ただ、彼の90年代音源が昨年リリースされています。早く復活して、Svitlana Nianioとのコラボレーションを再開して欲しいです。

「Svitlana Nianio & Alexander Yurchencko」の画像検索結果             

Svitlana Nianio & Oleksandr Yurchencko / Znayesh Yak? Rozkazhy(Світлана Охріменко、Олександр Юрченко / Знаєш Як? Розкажи)

 

カセットの方はすでに完売でLPをDiscogsで購入。リリース元のNight SchoolとSkireでは、この2月にLPを追加生産することになっている。すぐに完売になるので興味のある方は早めの購入をお勧めします。Oleksandr Yurchenkoのパーカッシブに鳴り響くハンマー・ダルシマーの音に絡むSvitlana Nianioの不穏で甘美な歌声とカシオ・キーボードのチープな音。これらをミックスしてエキセントリックでアヴァンギャルドな雰囲気を醸し出しています。

 

Svitlana Nianio / Lisova Kolekciya(Світлана Охріменко / Лiсова Колекцiя)

 

入手困難でDiscogsで見つけた時には $135.00の高値になっていたが、思わず購入してしまった。Oleksandr Yurchenkoとのコラボレーションであるが、LP化になった時にSvitlana Nianioの単独名義になっている。2台のカシオ・キーボードとサウンドエフェクトを絡めたミニマル・サウンドにSvitlana Nianioの歌声が伸びやかに映える展開。美しくアンビエントに鳴り響いています。こちらも素晴らしいアルバムです。

 


Svitlana Nianio / Kytytsi(Світлана Охріменко / Китиці) 

 

1999年のソロ・デビューアルバム。2018年にオリジナルの版元Koka RecordsよりCDにてリイシュー。このKoka Recordsはポーランドウクライナアンダーグラウンドミュージックと伝統音楽を専門としています。Svitlana Nianioのアルバムの中では比較的に購入し易いです。日本のArt Into Lifeで購入。この記事を書いている時点でまだ在庫を持っていました。東欧フォークといった感じで、子守歌的な雰囲気もあって安心して聴いていられる。ピアノ、ギター、アコーディオン、ハープ、弦楽器を組み合わせてクラシック、ミニマルの要素も駆使して穏やかに鳴り響く。パッケージも素晴らしく3面の紙ジャケ仕様で18ページのブックレットが貼ってあり、8枚のイラスト・カードが封入されています。たぶん本人が書いたイラストなのでしょうね。

 「Svitlana Nianio "Kytytsi"」の画像検索結果

 

 

Svitlana Nianio / Zviy(Звій)

 

昨年新作として2016年録音作品をベルギーのレーベルSloow Tapesより限定70本のカセットでリリース。瞬殺廃盤となったが、昨年11月にDiscogsで見つけて注文をする。ところが輸送中に紛失して未だ届かず。返金はして貰ったけどね。デビュー作以来のアルバムとなる本作はSoundcloudで聴くことが出来る。東欧フォークの雰囲気を醸し出しながら、ミニマルに纏め上げた傑作。彼女の不思議な世界に魅了されています。これまでのアルバムの集大成とも言えるだけに、何としても欲しい!  リリース元Sloow Tapesにリイシューのお願いメッセージを送っているけど・・・


 

現在も様々なメンバーとセッションやコラボレーションを行っているようです。それらが早く形となってリリースされるようになって欲しいですね。

 

 

2021年1月のディスカホリック

2020年1月のディスカホリックは13タイトルの購入実績でした。


今月もBandcampでの購入が多いです。音楽配信サービスが音楽の聴き方の主流となっている中で、フィジカルメディアに拘るリスナーはまだまだ多くいることをBandcampの躍進が証明したと思う。2008年から音楽販売・配信サービスを行っており、アナログとデジタルが共存する場を提供している。しかも、アーティストやレーベルが直接グッズやアルバムなどを販売できるシステムとなっています。
このことはレコード会社がアーティストを抱え込めなくなったとも言える。これまでのリリースはレコード会社の意向があり、売り上げ予算があって大量にプレスして市場流通させなければならない。そのやり方がもはや通用しなくなったのです。

独自の制作で少部数しか生産出来ない場合、Bandcampを活用したいと思うアーティストが増えたのも確か。カセット音源の見直しがされたのもBandcampのおかげかもしれない。制作費が安く、少量生産が可能ですしね。アーティストからすれば、Bandcampの手数料15%を引かれたとしても直接入金されることで収益率も上がるし、リスナーと直接繫がるメリットも大きい。

私はBandcampを通じて、多くのアーティストと繫がることが出来た。中には日本に呼んでくれよ!とか、日本のレーベルを紹介してくれと言った相談を受けたこともあった。このブログで個別に取り上げたら、CDRやレコードを無償で送ってくれたアーティストもいました。単なるリスナーですが、レーベルも含めて音楽の送り手との距離感が縮まることで、音楽の楽しみ方が増えたと思っている。

 

 

Sunburned Hand Of The Manの2タイトル。

Sunburned Hand Of The Man / Absolute Flake In The Forest(CDR) 購入先Sunburned Hand Of The Man Bandcamp 購入価格$17.50(1,890円)

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Sunburned Hand Of The Man / Burnieleaks 3(CDR) 購入先Sunburned Hand Of The Man Bandcamp 購入価格$17.50(1,890円)

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今月のブログ記事で取り上げています。 


 

Joan Of Arc / Tim Melina Theo Bobby(CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格2,420円

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 前回のブログ記事で取り上げています。


 

Neil Campbell関連4タイトル

Neil Campbell / Roll the vole to the owl(Cassette) 購入先Neil Campbell Bandcamp 購入価格£6.65(964円)

 

2020年リリース。カリンバ、フルート、ヴォイスを駆使したフォーキーな作品。

 

Neil Campbell / The Ancient Volcanic Center Of Scotland(Cassette) 購入先Neil Campbell Bandcamp 購入価格£6.15(891円)

Image of NEIL CAMPBELL "The ancient volcanic centre of Scotland" tape 

2015年リリース。エレクトロニクス、ノイズを巧みにコラージュさせて、ミニマルでアンビエントに纏めた傑作!

 

Stewart Keith and Neil Campbell / GASIO 2020(CDR) 購入先Neil Campbell Bandcamp 購入価格£6.15(891円)

2020年リリース。Stewart KeithがカシオCT-400、Neil CampbellがカシオSA-35を駆使したユニークな電子音楽。ゲームソフトの音楽に使えそうなサウンドです。

 

Stuart Estell and Neil Campbell I / II(CDR) 購入先Neil Campbell Bandcamp 購入価格£6.15(891円)

 

2020年リリース。ピアノ、メロディカメロディオンウクレレ、テープ、電子音を駆使したちょっと変ったドローンの世界。

 

 

Bird People / Molting(Cassette) 購入先Was Ist Das? Bandcamp 購入価格$15.50(1,670円)

夫婦デュオSky Burrow Talesとしても活動し始めたFeathered Coyote RecordsのオーナーUlrich Rois率いるBird Peopleの2020年作のアルバム。ジャムセッション的にサイケデリックを伝えています。


 

The Left Outsides / A Place To Hide(CDR) The Left Outsides Bandcamp 購入価格£14.00(2,026円)

2018年に行われたロビン・ヒッチコックのロンドン公演のオープニング・アクト時のライブ音源。彼らの素晴らしさが伝わってきます。

 

 

Thurston Moore / By The Fire(2CD) 購入先Amazon.co.jp 購入価格1,836円

 

2020年の新作。Sonic Youthを彷彿させるギター・サウンドに思わずにんまり。ベースとしてマイブラDeb Googeが参加。盟友Steve Shelleyが1曲ドラムを叩いています。

 

 

Reynols / Gona Rubian Ranesa(Vinyl) 購入先Outlier Communications Bandcamp 購入価格$57.00 CAD(4,827円)

スタジオ・アルバムとしては、17年振りの新作です。ダウン症を患うヴォーカルでドラマーのMiguel Tomasinが、音楽シーンに復帰出来たことだけでも嬉しい。

 

 

MV & EE / Cap Trips(CD) 購入先mvandee.blogspot.com 購入価格$27.75(2,675円)

夫婦デュオMatt Valentine&Erika Elderの新作。フォーキーな佇まいだけど、サイケデリックに攻め込んでくる傑作!

 

 

Wet Tuna / Eau'd To A Fake Bookie Vol. 3(CD) 購入先mvandee.blogspot.com 購入価格$27.75(2,675円)

 

MV & P.G. Six(Matt Valentine&Pat Gruber)によるサイケデリック・ユニットWet Tunaの新作。 

 

 

Joan Of Arc のファイナル・アルバム、解散ではなく廃業!

1996年の結成時より、シカゴのアヴァン、ポストロックをリードしてきたJoan of Arc。彼らのファイナル・アルバムが昨年12月にリリースされました。中心メンバーのTim Kinsellaは9月の段階で2017年よりこのアルバムを作り始めていたことをメッセージとして公表していた。その中で解散ではなく廃業したと言っている。これまでの自分達の築き上げてきたコミュニティや文化は絶滅して、それを維持していくことが不可能になったと語っています。

 

Joan of Arcがデビューした頃とは、音楽マーケットや音楽の聴き方が大きく変化しており、それに対するTim Kinsellaのけじめのつけかたなのでしょう。様々なプロジェクトなども行って来た彼にすれば、生真面目な対応とも思ったが、それだけJoan of Arcが重要だったことを再確認する。

 

Joan of Arcがファイナル・アルバムで何を伝えるかにも興味を持ってしまった。本国のリリース元Joyful Noise Recordingsはレコードとカセットのみのリリースだったので、今回は歌詞・対訳付の国内盤限定のCDを購入しました。

 

Joan Of Arc / Tim Melina Theo Bobby

Joan of Arcといえば、Tim Kinsellaのユニット的な感覚で様々なメンバーが関わりながら活動してたが、本作は現在のラインナップであるTim Kinsella、Melina Ausikaitis、Theo Katsaounis、Bobby Burgの名を冠したタイトルでちょっとウルッとしてしまった。2008年来日の時に仙台のBIRDLANDで彼らを観ている。Theo Katsaounis、Bobby Burgのリズム隊2人は参加していたが、女性ヴォーカルのMelina Ausikaitisはまだ先のことである。このメンバーでのライブは2014年、2016年と日本で行われたが、見損なったことを本作を聴いて今更ながら後悔してしまった。

 

全10曲で、Tim Kinsellaのヴォーカル5曲、Melina Ausikaitisのヴォーカル3曲、そしてインスト2曲の構成になっています。歌詞の世界も興味深い。1曲目「Destiny Revision」では"Let go、Let go、Revising My Destiny"と歌っており、8曲目「Cover Letter Song」では" I got derams and I got goals:I’m gonna be the next Tim Kinsella"と自らの名前までも持ち出してポジティブに歌い上げている。ただ、ラスト曲「Upside Down Bottomless Pit」では "It’s all an upside down bottomless pit and there’s no way to know above from below. There’s no bleachers. no sidelines. no out of bounds"と締めくくっている。ここにTim Kinsellaの苦悩と葛藤を伺うことが出来る。Melina Ausikaitisも2曲目「Something Kind」でIn the dawn of Something Kind. I’m the one taking you from behind you get the tits and periods and you’re the one who get pregnantと歌っている。えっ、彼女、妊娠してしまったのか? と言った感じでプライベートも含めて自分達の心境をさらけ出しています。

 

この4人の他、Nate Kinsella (American Football)、Jeremy Boyle、Todd Matteiといった旧メンバー、そしてTim Kinsellaとのコラボレーション・ユニットGood FuckのJenny Pulseが参加しています。関わったメンバー全員の英知を結集させてJoan of Arcの轟音ギターが鳴り響く曲からエレクトロニクスな曲まで様々な要素を凝縮した10曲です。四半世紀に渡って活動してきた彼らの集大成と呼ぶに相応しい傑作!これで廃業なんて寂しさも感じる。

 

I got derams and I got goals:I’m gonna be the next Tim Kinsella(俺には夢があり、目標があったから:俺は次のティム・キンセラになりたい)早く戻って来て欲しい!

 

 

今月のSunburned Hand Of The Man

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昨年9月から毎月何かしら購入しているSunburned Hand of the Manです。12月後半にBandcamapで注文した2枚のCDRが1月1日に届いてしまった。メンバーのJohn Moloneyからは、こんなメッセージも頂きました「Thanks again Hiroshi! We really appreciate your support. Hopefully we will get to come to Japan in the next year or so. Happy New Year. best, John」まさにHappy New Yearって感じです。彼らの場合、リリース量が多くて少量生産なので見つけた時は、即購入しないと直ぐに販売終了になってしまいますからね。

 

Sunburned Hand of the Man / Absolute Flake In The Forest

2020年12月リリースの新作。デジタルとCDRのみの販売でCDRは限定30枚です。彼らのBandcampをいつもチェックしていたのですが、見つけた時には残り5枚になっていました。郊外にあるメンバーの自宅の庭なのでしょうか?週に1度集まってセッションを行っていた時の音源です。リラックスした雰囲気で自由奔放に録音されたことが伝わってくる好盤。4曲目のヒップホップ的なヴォーカルもあり、遊び心も満載です。

  

Sunburned Hand of the Man / Burnieleaks 3

2019年リリースのCDR。こちらもリリース時は限定30枚だったようです。ほんのわずかの枚数がBandcampに追加でアップされていました。購入出来て良かったです。2019年1月から3月までのLive and Practiceとなっています。スタジオでの練習を含めてのセッション録音なのかな?こちらはトリッキーなことをせずに纏め上げた音源です。

  

2枚のCDRは自身のレーベルManhandからのリリースです。市販のCDRに音源を焼いてジャケットと一緒にビニール袋に入れてあり、チープ感溢れるハンドメイドとなっています。少量生産のため一般流通は殆どありません。Sunburned Hand Of The Manにすれば、音源の内容ではなく、その時の記録として残したいという気持ちなのかもしれません。これがリリース量を上げている要因です。価格も7ドル前後なので送料を入れても比較的安く購入出来る。購入し損ねたとしても2020年アルバム・ベスト10のNo.1に入れた彼らの「Headles」のように自主制作されたあとに通常のレーベルCardinal Fuzzからリリースされることもあります。今回購入の特に「Absolute Flake In The Forest」は完成度が高いので、レコードとして他のレーベルからリリースがあっても良いかと思う。集め始めると切りが無いけど・・

 

 

 

追伸:                               

この記事を書いている時にThree Lobed Recordingsから新作が3月にリリースされる情報を知りました。これまでの自主制作によるセッション録音やライブ音源ではなく、レーベル主導のスタジオ録音とのことです。エクスペリメンタルな音楽が好きな方には定評のあるレーベルだけに楽しみです。

 

Sunburned Hand Of The Manについては、以前にも色々と取り上げています。


 

Magik Markers「2020」、7年の充電期間を経て新たなる出発点に立つことが出来た素晴らしいアルバム!

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このブログの2020年アルバム・ベスト10のNo.9に選んでいたMagik Markers「2020」。個別に取り上げていなかったので、色々と書いてみたいと思う。2001年にコネチカット州ハートフォードElisa Ambrogio(ヴォーカル、ギター)、Leah Quimby(ベース)、Pete Nolan(ドラムス)の3人で結成。2006年にLeah Quimbyが脱退してからデュオとして活動していたが、前作辺りからアルバムにゲスト参加していたJohn Shawが正式メンバーとなって再び3人組になります。ノイズやエクスペリメンタルを中心としたサイケデリックサウンドを中心に活動していた。2004年にSonic Youthのオープニング・アクトを勤めたことで大きな注目を集める存在となり、Thurston MooreのレーベルEcstatic Peace!からアルバムがリリースされたこともありました。2000年代は年に2~7作もリリースしていた彼らですが、7年振りの新作としてDrag Cityから昨年10月にリリースされたのが「2020」であります。

 

Magik Markers / 2020

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本作は2017年から録音が始まっている。長期間にわたって制作時間が取られています。このことは、彼ら個々のプライベートを大切にしたいという思いから、時間が合うときに少しずつ作られたようです。Elisa Ambrogioは西海岸のシアトルに定住し、Pete Nolanは大学で修士号を取得。そしてJohn Shawは養蜂を始めたとのことです。彼らの生活はかつてのように音楽を中心としていません。自分達のアイデンティティーを確立したうえで、どう音楽と向き合って行くかを問うたアルバムでもあります。

 

Elisa Ambrogioのヴォーカルはこれまで以上にダウナーな雰囲気を醸し出し、全体のサウンドも様々な要素を取り入れている。オープニングナンバー「Surf's Up」は、混沌とした今を象徴するような暗黒ビーチ・ポップソングでアルバム全体の縮図的な曲でスタートする。もちろんノイズやガレージといった彼らの持ち味を最大限に引き出した曲も配置しながら、ダーク・アンビエント、ドローンなども駆使して積極的に攻め込んできます。ラスト曲「Quarry (If You Dive)」は、不安や欲望を押さえながら優しくフォーキーな子守歌といった感じでアルバムを締めくくっています。

 

この7年間、散発的な音楽活動は個別にしていたと思うが、走り続けていたことを少し止めて充電したことで、新たなる出発点に立つことが出来た素晴らしいアルバムだと思う。何時の日かライブを見てみたいバンドでもありますね。

 

 

 

 

2020年アルバム・ベスト10

毎年恒例のアルバム・ベスト10です。2020年にリリースされた新作の中から、選んでいます。こんな事をミクシー時代から15年以上もやっています。音楽業界、コロナの影響で厳しい状況でありました。その中でも素晴らしい音楽に出会えたことに、改めて感謝です。このベスト10以外にも傑作と思うアルバムが幾つもありますので、これからまた個々に取り上げて行きたいと思っています。今年もよろしくお願いします。

 

 

No.1  Sunburned Hand Of The Man / Headles

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これまでのトリッキーな部分を控えめにしてアンサンブル中心に纏め上げています。新たな展開を打ち出してメローに鳴り響くSunburned Hand of the Manの世界。


 

No.2  Wire / Mind Hive

時代としっかりリンクしつつ、フレッシュさも兼ね備えたこんなベテラン・バンドって他にあるのだろうか? しかも、Wireらしさは少しも失われずに新たな側面を表した素晴らしい1枚です。


 

No.3  Aksak Maboul / Figures

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これまでのアヴァンギャルドな雰囲気はそのままでポップになる、まさにアヴァン・ポップなサウンドを作り上げています。時代を越えた彼らの最高傑作!


 

No.4  Marion Cousin & Kaumwald / Tu Rabo Par'Abanico

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Marion Cousinの凛とした哀愁を感じさせる歌声をぶち切るがごとく散りばめられた異端エレクトロ・ノイズの数々。伝統と実験の融合から生み出された素晴らしい世界。


 

No.5  The Left Outsides / Are You Sure I Was There?

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今の混沌とした状況をメランコリックに伝えつつも、どことなく温もりをも感じる。映画のサウンド・トラックストーリーテリングを意識したようなアシッド・フォークの世界。


 

No.6  Sun Araw / Rock Sutra

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ポリリズミックで不思議なサウンドにSun Arawのヴォーカルが絡む恍惚感と酩酊感に満ちあふれた中毒性たっぷりの世界。


 

No.7  Big Blood / Do You Wanna Have a Skeleton Dream

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父Caleb Mulkerin、母Colleen Kinsella、娘Quinnisa Kinsella Mulkerinの家族愛を感じるアルバム 


 

No.8  The Strokes / The New Abnormal

7年振りの新作。待つだけのことはありました。格好いいです。フジロックが楽しみですね。 


 

No.9  Magik Markers / 2020

マサチューセッツの3人組Magik Markersの7年振りのアルバム。ノイズ系ロックにダウナーな雰囲気をも取り入れた意欲作。

 

 

No.10  Ulaan Janthina / Part Ⅰ、Part Ⅱ

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Steven R. Smithの新なるユニットUlaan Janthina。今後2作まとめてCDでリリースする予定もあるようです。