Anne Briggsの音楽の神秘と美しさを尊重しながら、英国のアシッド&トラッドフォークを独自の視点で捉えています。ヴォーカル曲は歌そのものを前面に押し出して、Devin Hoffのコントラバスなどの音がさり気なく、時には力強く鳴り響いて素晴らしいです。インストにアレンジされた曲はDevin Hoffだからこそ作り上げたと思う仕上がりで、Anne Briggsへのオマージュを感じることが出来ます。ヴォーカル曲とインスト曲をバランス良く配置した全9曲。Devin HoffによるAnne Briggsの世界を聴いてみてください!
Anne Briggsの存在については、Devin Hoffが取り上げたことで初めて知りました。Wikipediaによるとジミー・ペイジなどの曲や音楽インスピレーションの源泉となったとも書かれています。最も過小評価されている歌手の一人でありながら、商業的な成功を望んでないので、今後も表舞台に出ることは無さそうですね。まさにカルト・レジェンドと言うべき存在であります。
L.A.F.M.S.(Los Angeles Free Music Society)は、Le Forte FourのメンバーであったJoe Potts、Rick Potts、Chip Chapmanらによって1974年に Captain BeefheartやFrank Zappaなどに影響を受けたアヴァンギャルドなアーティストの集団として結成されました。Le Forte Fourを始めとして、Smegma、Doo-Dooettes、その他ノイズやインプロなどのフリー・ミュージックを奏でるバンドやアーティストが参加。レコード製作、ライブ主宰を中心に、アートやファンションといった分野まで現在も幅広く活動を行っています。
本日はJoe Potts率いるL.A.F.M.S.オールスターズ・ノイズ・オーケストラAirway の新作 “Live At Zebulon” が昨年12月にリリースされたので紹介します。AirwayはJoe Pottsの1977年にリリースした7インチシングルのタイトルでした。音によるサブリミナル効果や幻覚症状が如何に引き起こされるかを考えていたらしい。その試みをより深く実践しようとメンバーを集めて1978年にAirwayとして最初にリリースされたのが「Live At LACE」です。これまでに日本のノイズバンド非常階段とのスプリット・アルバム2作を含めて6作リリースされています。すべてライブ音源であります。サブリミナル効果や幻覚症状をリスナーに喚起させるには、一発勝負のライブ現場しかあり得ないということなのでしょうね。
流石、L.A.F.M.S.オールスターズと言われる面々ばかりです。その中でちょっと興味深いことを発見しました。何と、イギリスのアヴァンギャルド・バンドVolcano The Bearの Aaron Mooreがドラマーとして参加しています。音楽的方向性は一致していますので、今後コラボレーションなど新たな展開に期待出来そうですね。
今年はPelt派生バンド、Black Twig Pickers、Spiral Joy Band、Eight Point Starの新作がリリースされました。どれも素晴らしいアルバムでしたが、最後にPelt本体の9年振りとなる新作がリリースされれば、もうこれしかないですね。故Jack Roseと正面から向き合った傑作!
No.6 Six Organs Of Admittance / The Veiled Sea
90年代後半よりギタリストBen Chasnyのソロ・プロジェクトとして活動しているSix Organs Of Admittance。本作は多彩な要素を含んで、単なるギタリストで終りたくないという意欲を感じると共に、でもギタリストであることを再確認させられるサウンドを巧く纏め上げた傑作!
No.7 Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone and Bass Guitar More Songs
2人とも今や大人気のミュージシャンです。2018年リリースのMusic for Saxofone and Bass Guitarの第1弾の流れを踏襲しつつ、本作ではより自由でエクスペリメンタルなサウンドに仕上がっています。素晴らしいアルバムです。
No.8 Antoine Loyer & Megalodons malades、Begayer / Sauce chien et la guitare au poireau
Richard Youngsはヴォーカル、ギター、ベース、リズムボックスを駆使して1人で録音しています。フォーク、スペース・ロック、トロピカリアといった雰囲気を感じさせつつ、シンプルな演奏でリズムボックスがボコポコ鳴り響く中で、ヴォーカルがより一層際立つ作りです。奇をてらった仕掛けはないけど、彼の淡々とした歌声が心に突刺さってくる傑作です。
Dave Ruder が関わってきたバンドやプロジェクトのメンバーThee RepsのSam Morrison(ピアノ)、thingNYのIsabel Castellvi(チェロ)も参加しています。彼らが自宅で録音した音源をミックスしたのがCloud Becomes Your HandのStephen Cooperです。寄せ集めた音源を一貫したトーンで雰囲気良く纏め上げているのが凄い。Stephen Cooperについては、早くCloud Becomes Your Handを復活させて欲しいと思っていますが。
まずはLowのバイオグラフィ的なことを書きます。1994年に3人組としてアルバム・デビューします。インディーズ界の異端児Kramerが、1st “I Could Live In Hope”と2nd “Long Division” のプロデュースをしたことで注目されました。初期から中期にかけてLowを支えていたベーシストZak Sallyは2ndからの参加でした。当時、隆盛を誇ったグランジへの反発として、物憂げなメロディとスローテンポなリズムをミニマリスティックに掻き鳴らしていた音楽やバンドなどをスロウコアと呼んでいた。Lowはその先駆者的な存在でもあった。
1999年にシカゴの実験的なレーベルKrankyに移籍。1999年 “Secret Name”、2001年 “Things We Lost in the Fire”、2002年 “Trust” の3枚のアルバムをリリースしている。個人的に “Things We Lost In The Fire” が好きなアルバムで、レコーディング職人として売れっ子だったSteve Albiniがレコーディング、ミックスに参加していました。有名なChristmas限定アルバムをリリースしたのもこの時期ですぐに廃盤となったが、のちにKrankyがリイシューして、現在はSub Popが何年か期間を空けてリイシューしてる。この頃のLowが好きなファンが多いのも確かです。その後、バンドとしての様々な試みが始まります。
2004年にSub Popに移籍して “The Great Destroyer” をリリース。オルタナティブ色を強調していて、これはこれで良い感じに纏め上げていたが、どことなく普通のロックバンドになった感じがしていた。2005年にベーシストZak Sallyが脱退。代りのベーシストを入れて、様々な要素を取り入れたアルバム ”Drums And Guns” を2007年にリリース。ちょと違うと感じがして、これでLowも終ったと思ったが、商業的には大成功を収める。新たなファンを獲得する一方で、1部のファンが離れていたのも確かであった。
そんな中、あのRobert Plantが2010年のソロ・アルバム “Band Of Joy” でLowの “The Great Destroyer” からの曲を2曲もカヴァーしたのでした。“Band Of Joy” のプロデューサーBuddy MillerがLowの音楽を紹介したようです。Robert Plantはインタビューで「The Great Destroyerは素晴らしい音楽だ!Jerry Lee LewisとHowlin' Wolf のそばでいつも家の中で遊んでいる。すべての余地がある」と語っています。普通のロックバンドになった・・・じゃなかったですね。慌てて何回も聴き直してしまった。Alan Sparhawkはサイドプロジェクトでブルースやゴスペルを中心としたバンドThe Black-Eyed Snakes、Retribution Gospel Choirなどでも活動していたことをその時に知った。Alan Sparhawkの音楽センスはただ者じゃないことを再確認したのであります。
“The Great Destroyer”からのMonkeyとSilver Riderの2曲が、Robert Plantにカヴァーされています。両方アップしますので聴き比べてください。
2011年に4年振りとなる新作 “C'mon” をリリース。4年のインターバルはLowにとっては長い期間だったのです。Robert PlantのカヴァーはAlan SparhawkにLowと向き合う切っ掛けなったのかもしれませんね。それで、Lowが出した回答は原点回帰と言える90年代後半から2000年代初期のサウンドでした。この“C'mon”のサウンドでLowが戻って来たとホッと一安心したファンも多いと思う。その流れを引継いで2013年にWilcoのJeff Tweedyプロデュースで “The Invisible Way” をリリース。アルバムデビュー20周年ということもあってこれまでのLowの集大成を表したアルバムとなった。
2015年リリースのBJ Burtonをプロデューサーに起用した “Ones And Sixes” は、Lowらしさを維持しつつも、ザラついたサウンドとエレクトロニックなリズムを駆使したアルバムとなった。新たな展開と思っていたが、これはまだ序章でしかなかったのです。続く2018年リリースの ”Double Negative“もBJ Burtonプロデュースで、彼らのこれまで培ってきたスロウコア的サウンドにノイズやシンセの音が鏤められて、よりダイナミックで幻想的に聞えます。 この変貌ぶりに驚いてしまったが、もう後戻りは出来ないといった彼らの信念を感じたアルバムだった。