スウェーデンのピアニストでコンポーザーでもあるAlex Zethson。Trondheim Jazz Orchestra、Fire! Orchestra、Angles 9などのメンバーであり、レーベルThanatosis Produktionも主宰しながら様々な活動を行っている。彼を中心に実験的ジャズ、現代音楽、民族音楽、ロックなど様々な形態の即興音楽シーンで活躍する13人のミュージシャンで構成されたAlex Zethson Ensembleの2021年にリリースされた1st作に魅了されています。
Alex Zethson Ensemble / Some Of Them Were Never Unprepared
ガムランやクラウトロック、 Tony ConradやArnold Dreyblattに影響を受けて作曲したとAlex Zethsonは語っています。ピアノ、ギター、チェロ、コントラバス、ヴァイオリン、シェイカー、ドラム、ゴングを駆使した ”Some Of Them Were Never Unprepared” のPart 1、Part 2による2曲を収録。
Part 1はガムランの雰囲気を醸し出すようにトン、トン、トン、といったパーカッシブでクールなミニマルミュージックを展開。ストイックな前半から後半の徐々にばらける感じがドローン的で刺激的なアンサンブルです。Arnold Dreyblattの ”Propellers In Love” に通じる部分もあって、影響を受けたことに納得。
Part 2は緩やかで自由奔放に音を掻き鳴らしている感じ。コントラバスの重低音をベースに各パートが自己主張をしながら一体となって攻め込んできます。Tony Conrad & Faustの “Outside The Dream Syndicate” を思わせるといったレビューも有ったが、まさにクラウトロックを室内楽アンサンブルで行うとこうなるのでしょう。臨場感溢れる素晴らしい楽曲です。
Torbjörn Zetterberg,、Contrabass Elsa Bergman、Contrabass Leo Svensson、Cello My Hellgren、Cello Anna Lindal、Violin & Contact Mic Josefin Runsteen、Violin Giannis Arapis、Guitar Anton Toorell、Guitar Kasper Agnas、Guitar Andreas Hiroui Larsson、Drums & Gongs Niclas Lindström、Shaker Karin Ingves、Piano Alex Zethson、Piano
The Telescopes / Live At Corsica Studios & Vinyl Factory Session(Cassette) 購入先Improved Sequence Bandcamp 購入価格€12.00 EUR(1,644)
The Telescopesの2011年のライブ音源と2019年セッション録音をカップリングした新作カセット。
昨年リリースの ”Songs Of Love And Revolution” は2021年間ベストNo.2に選んでいます。
J Spaceman And J Coxon / Play The Red Krayola Live 1967(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格3,380円
Spiritualizedの2人、J. SpacemanことJason Pierceと John Coxon によるデュオ作がリリース。2019年10月にNYで行われたArt & Language展のために制作された音源です。何とアルバムタイトルが “Play The Red Krayola Live 1967” です。
The Red Crayola / Live 1967(CD) 購入先Diskunion Net 購入価格1,359円
Spiritualizedの2人、J. SpacemanことJason Pierceと John Coxon によるデュオ・アルバムがリリース。2019年10月にNYで行われたArt & Language展のために制作された音源が、 John CoxonのレーベルTreaderよりレコード・オンリーでリリースされました。何とアルバムタイトルが “Play The Red Krayola Live 1967” となっています。
コンセプチュアル・アートの集団として1969年に結成されたArt & Languageは、The Red Krayolaとのコラボレーションを通じて音楽とアートのコンセプトを訴えてきました。80年代初期からThe Red Krayola with Art & Languageとして、これまでに6作リリースしています。Art & LanguageとってThe Red Krayolaは外せない存在であります。ただ、今回のArt & Language展にThe Red KrayolaのMayo Thompsonは参加していません。ライブ映像は流れていますが、実際にライブを行ったのはJason Pierceと John Coxonの2人だけです。2人はThe Red Krayolaの代役なのか?ちょっと気になりますね。
J. Spaceman、John Coxon / Play The Red Krayola Live 1967
本作は1967年にAngry Arts Festivalで行われたThe Red Crayolaのライブセットをカヴァーするという企画です。当時はKの KrayolaではなくCのCrayolaの表記でした。初期のThe Red CrayolaはKよりもアヴァンギャルドでカオティックなフリーサイケ・サウンドを奏でていました。ライブになるとさらに即興な要素が加わって過激で再現不可能なパフォーマンスを行っていた。このAngry Arts Festivalでの音源は “Live 1967” として1998年にDrag CityよりCDでリリースされている。Jason Pierceと John Coxonはオリジナル音源を個別に聴き、2人の思い描くThe Red Krayola Live1967を作り上げてしまったのです。
The Red Crayolaのオリジナル・ライブは午後に1回、夕方に2回行われました。1セット1曲の3曲による構成です。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの即興演奏にフェクターによる電子的なノイズを絡めてソリッドでタイトに鳴り響かせています。それに対して、Jason Pierceと John Coxonの2人は、2本のギターを中心にして、カリンバ、ミュージック・ボックス、ハーモニカ、メトロノームを駆使してジャンクでノイジーに攻め込んできます。こちらも3曲収録ですが、オリジナルとは似ても似つかない展開です。でも、これはカヴァーなのです。50年以上前の曲を現代に蘇させようとした2人のメッセージが込められていると思う。如何にしてフリークアウトをさせて楽しませるかと言うことに関しては一緒です。Mayo Thompsonも喜んでいるに違いない。
尚、アルバムジャケットはArt & Languageによる2018年作品とのことです。
The Red Crayolaによる1967年Angry Arts Festivalのライブ音源です。1998年にDrag CityからCDでリリースされた時は、3曲とも収録されていますが、短めに編集されている。その代りに、同じく1967年Berkeley Folk Music Festivalのライブ音源が収録された2枚組CDとなっています。
Art & Language展のダイジェスト映像です。Art & Languageの創設メンバーであるMichael BaldwinとMel Ramsdenを中心にディスカッションなどが行われています。54分ぐらいからJason Pierceと John Coxonのライブ映像も観ることが出来ます。
70年代からジャズ、カントリー、フォーク、ブルース、ロックなど自由奔放にジャンルの垣根をぶっ壊しながら独自の音楽を構築してきたアメリカのギタリストEugene Chadbourne。これまでにDerek Bailey、Han Bennink、John Zorn、Jimmy Carl Black、Sun City Girls、灰野敬二などあらゆる人とのコラボレーションやバンド活動も含めて、現在も幅広く活動を行っている。90年代にCDで1、2枚は持っていたと思うが、カセットやCDRを中心にセルフ・リリースも多いため、フォローしきれていなかった。
Eugene Chadbourneの自作曲と2人による共作曲に加えて、Alvin Lee(Ten Years After)のBad Scene、Lowell George(Little Feat)のWillin'、Woody GuthrieのHang Knot、Nick DrakeのHangin On A Starのカヴァー曲を含めた全9曲を収録。パンキッシュな乗りからローファイなフォークまで、ネジが2、3本緩んだルーズな雰囲気がもの凄く心地良い!
各メンバーが自由奔放に生き生きと力強くしっかりとしたサウンドを展開しています。だからこそ、インストヴァージョン ”Island Of Silence” もあるのでしょう。Island Of Silenceでは、Jack Cooperのヴォーカルをオルガンやギターに変更しています。単なるカラオケではなく、ジャジーでクラシカルなポストロックとして充分に通用する内容です。本編である “Island Of Noise” は、そこにJack Cooperの淡々としたストイックなヴォーカルが絡んできます。このことで、より想像力に富んだバリエーションが何層にも重なって溢れてくる。テーマである「混沌の中に秩序を見出す」ことやアルバムジャケット から伝わってくる動植物の息づかいなど、様々なイメージが浮かび上がってきます。参加したミュージシャンの個性を最大限に生かし切って作り上げた“Island Of Noise”。Jack Cooperの新たなる魅力と可能性を感じさせる素晴らしいアルバムです。