ウクライナのキエフ(キーウ)出身の音楽家Valentina Goncharova。16歳からレニングラード(現サンクトペテルブルク)で、ソ連のクラシック音楽研究に没頭しヴァイオリンを学ぶ。1984年にエストニアに移り、この頃よりクラシックのみならず、フリージャズ、電子音楽、実験的なロックに興味を持つようになっていた。これまで彼女の音源は1989年に8枚組CD BOX “Document - New Music From Russia - The 80's” の1枚として “Ocean” がリリースされていただけでした。
もう1人注目しなければ成らないのがヴォーカルのVeronica Torresです。これまではスポークンワード的に淡々と歌うことが多かった。でも本作ではしっとりとロマンティックにも歌い上げています。その代表曲的な曲ががParquet CourtsのAndrew SavageとのデュエットTears in The Rain (feat. A. Savage)です。Jonathan SchenkeがParquet Courtsのアルバム制作にエンジニアとして関わっていたことが切っ掛けで、このデュエットが企画されました。ヴォーカリストVeronica Torresとしての魅力がアップされたことは確かですね。
本作は歌詞の世界もユニークです。“Blue Nude (Reclined)” はHenri Matisseの切り絵を、“Lying with the Wolf” はKiki Smithの紙画を、それぞれモチーフにしてVeronica Torres が歌詞を書いています。オリジナルアートと歌詞もアップしておきます。
興味深いのは2曲のヴォーカル曲が、いずれもカヴァー曲であります。3曲目 “Angel of Death” が、若くして亡くなった伝説のカントリーシンガーHank Williamsの50年代の曲です。そして5曲目 “Noble Experiment” が90年代のローファイ・カルトバンドThinking Fellers Union Local 282の傑作アルバム “Strangers From The Universe” からの曲であります。この異なる2曲をカヴァー曲として収録するMagic Tuber Stringbandの感性に驚いてしまった。歌詞とオリジナル曲をアップしますので、聴き比べてくだい。
Hank Williams-Angel of Death
死の天使があなたのうしろに降りてくる
あなたは笑いながら言えますか?
自分は間違っちゃいなかったと
正直に言えますか?
死にかけの息をして
死の天使に会う準備をしながら
Thinking Fellers Union Local 282-Noble Experiment
人間であることをやめる時が来たのだ
新しい生き物を見つける時だ
魚や雑草やスズメになりなさい
地球は疲れ果て、あなた方の時間はすべて失われたのです
この2曲の歌詞からHank WilliamsとThinking Fellers Union Local 282の不思議な共通点を見出すことが出来ますね。今の時代を表している様にも思う。
Hank Williamsについては、何も情報を持っていませんが、Thinking Fellers Union Local 282は好きなバンドだけに嬉しいです。Noble Experimentはアルバム “Strangers From The Universe” のラスト曲で、カオスティックにガチャガチャと掻き鳴らす曲が多い中で、最後にしっとりとバラードで締めくくっています。Magic Tuber Stringbandのお陰で、Thinking Fellers Union Local 282について、歌詞も含めて再確認することが出来ました。
4月22日にフジロックの第2弾ラインナップ発表されました。今回はVampire Weekend、Jpegmafia、 The Hu、Bloodywoodの4組です。これでヘッドライナー3組が、Vampire Weekend、Jack White、Halseyに決定しました。第1弾発表の時に地味な感じがすると書きましたが、海外勢がヘッドライナーを収めたことで、ちょっと安心しました。まあ、ここ数年ヘッドライナーは殆ど観てないですけどね。フジロックらしさで言うならモンゴルの伝統的なサウンドと現代のメタルを融合させた The Hu、インド、ニューデリー発、母国の民族楽器でメタルを炸裂するBloodywoodに注目。メタル系に疎い私ですが、欧米じゃないことに興味芯々です。開催まであと3ヶ月、待ち遠しい!