2018年リリースの傑作アルバム “Paradisiacal Mind” の勢いを止めてはならないと思ったJeffrey Alexanderは、定期的にアーカイブ音源や過去のライブ音源をリリースしていた。その思いが伝わったのか、2022年に7インチシングルを ”On a Clear Drop You Can See Forever“ をリリース。メンバーは直接会うこともなくフィラデルフィア、アムステルダム、サンフランシスコで録音された音源を基にオンラインで制作された。その時にDire Wolvesの再活動に期待してくれ!といったアナウンスもあった。そして、2023年11月にやっと新作 ”Easy Portals“ がリリースされたのでした。
The Garbage And The Flowers / In Valhalla(10inch Vinyl) 購入先Garden Seat Bandcamp 購入価格$80.00 AUD(8,256円)
ニュージーランドのサイケ・フォークThe Garbage And The Flowersの4曲収録された50枚限定の10インチレコード。昨年の6人編成によるミニ・アルバム “Cinnamon Sea” のインディーズ・ギターバンドといった様相を示したのに対して、本作は3人編成でシンプルにサイケ・フォークを奏でています。
DWLVS(Dire Wolves)/ Easy Portals(Vinyl) 購入先Centripetal Force Bandcamp 購入価格$47.00 USD(7,416円)
Eternal Music Society / Eternal Music Society(Cassette) 購入先Eternal Music Society Bandcamp 購入価格kr125.00 SEK(1,843円)
スェーデンのアヴァン・フォークEnhet För Fri Musikのメンバーであり、ソロ・ユニットLedaとしても活動しているポストインダストリアル女性マルチ奏者Sofie Herner。彼女がドラマーとして参加したということだけで、購入したEternal Music Societyのカセット音源。バキバキと掻き鳴らされるサウンドに圧倒されます。
John Coxon / Real Magic Vol.1(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格4,178円
あと、海外だとDiscreet Musicです。実店舗の展開をしながらレーベル運営も行っています。スェーデンのアンダーグランド・シーンに嵌ったのもDiscreet Musicのおかげだと思う。レーベルの作品自体は、Tobira RecordsやArt Into Lifeでも扱っているので、入手しやすくなっています。今月購入したEternal Music SocietyはDiscreet Music絡みです。本人達のBandcampでの購入の方が安かったのでした。
本作は2019年の前作 “The Universe Also Collapses”、 2016年の前々作 ”Rejoice! I'm Dead!“と同じメンバーKavus Torabi(vo, g)、Dave Sturt(b, vo)、Fabio Golfetti(g, vo)、Ian East(sax, fl)、Cheb Nettles(ds, vo)の5人です。Gongの長い歴史のなかで、ここまでメンバーチェンジが無かったことも驚きです。結束力が強いのと、個々のメンバーの力量がしっかりと活かされている証だと思う。これはライブを観ると一目瞭然です。
今回、ゲスト・ヴォーカルとしてSaskia Maxwellが、3曲(Ship Of Ishtar、Lunar Invocation、Asleep Do We Lay)に参加している。これはGilli Smythを意識したウィスパーヴォイス的な展開です。プロデューサーとして前作のミックスドを行ったFrank Byngが、Gongと共同で行っています。ジャケット・デザインの曼荼羅アートはDaevid Allenによるものです。今のGongの精神的な支えになっていることは言うまでもありませんね。
このブログでは毎度お馴染みのSteven R. Smith。カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになったGlenn Donaldson。Dire Wolves、Angel Archerのメンバーとして活動を行いながらソロ・ユニットOld Million Eyeとしても活躍しているBrian Lucas。この3人によるユニット43 Odesの2作目となる新作 ”HWN UN AMN” がEiderdown Recordsよりレコードでリリースされました。これはもう、取り上げるしかないです。個々のメンバーの音源やブログで取り上げた記事のシェアを含めて、43 Odesの思いを書いていきたいと思う。
3人は90年代のサンフランシスコを拠点とするサイケデリック・バンドMirza として活動していました。Darla Recordsより2枚のアルバムをリリース。当時のDarla RecordsはSci-Fiスペース・ロックを中心にBliss Outシリーズとして興味深いバンドを数多く手がけていた。私は1997年リリースのデビュー・アルバムAnadromous (The Bliss Out Vol. 7)で、Mirzaの存在を知ったのであった。このカオスティックなサウンド、めちゃカッコいいです。この後、もう1枚アルバムをリリースして解散してしまう。
Steven R. Smithについては、これまで何度も取り上げているので、それらを参考にして欲しい。ライブを行わずに様々な名義(Hala Strana、Ulaan Khol、Ulaan Passerine、Ulaan Markhor、Ulaan Janthina)を使って、1人でアルバム制作に没頭していったのであります。マルチプレーヤーで他者との交流もしていなかった彼のことを、私は孤高のギタリストと呼んでいた。リリース量も多くて、今年も既に3作リリースしている。9月にリリースされた最新カセット音源 ”Arroyo Tree Complex” をアップしておきます。
Brian Lucas
Brian LucasはMirza解散後、同じくMirzaのメンバーであったMark Williamsと組んでFather Beardとして活動していた。ただ、本人的には音楽から離れて自分を見つめ直す時間が必要とのことで、タイに移住して生活していたとも語っている。その時にソロ・ユニットOld Million Eyeを立ち上げている。2010年代中頃にDire Wolvesにベースとして参加。Mirzaのアルバム・ジャケットは彼のデザインであったことから、Dire Wolvesのアルバム・ジャケットも何作か手掛けていた。今年10月にDire Wolvesの新作 "Easy Portals" がリリースされました。
43 Odesの結成については、Glenn DonaldsonがSteven R. Smithに一緒にやろうといつも声掛けを行っていたようです。ただ、Steven R. Smithが拒否していた。特に仲が悪かったということではなく、心の準備が出来ていなかったとのこと。やっと2018年に2人でレコーディングが始まって、アルバム・ジャケットをBrian Lucasに依頼することで43 Odesが結成される。そのアルバムはEiderdown Recordsよりカセット音源として2019年にリリース。Jewelled Antler時代のThujaを思わせるような内容であった。その後、Steven R. SmithはBrian Lucasのソロ・ユニットOld Million Eyeのアルバム “The Incandescent Switch” にゲスト参加。心の病が無くなったSteven R. Smithは、昨年Glenn Donaldson、Brian Lucasらがゲスト参加したUlaan Passerine名義による大傑作アルバム “Sun Spar” を作り上げている。
43 Odes
Old Million Eye / The Incandescent Switch
Ulaan Passerine / Sun Spar
結局、43 Odesの新作について、ここまでのことを書かなくては、語れなかったのであります。
43 Odes / HWN UN AMN
本作はSteven R. Smithのスパイク フィドル、バリトン プサルテリー、ブズーキ、ハーモニウムといった民族楽器を中心にして、彼のHala Stranaのような東欧フォーク的コンセプトを網羅している。それに対してGlenn Donaldsonはバンジョー、スペース ハープ、ギター、ベース、パーカッション、ドラム マシンを駆使してメロディーやリズムを引き出して曲のパランスを取っている。そこにBrian Lucasのテープ音源、ループ音源が色を添える展開となっている。
アルバムの1曲目 “HVO OV HVO” でGlenn Donaldsonの奏でるパンジョーが、ポップに鳴り響きながら、サイケデリックな世界へと導く。曲ごとにその風景を変えつつ、徐々にゆっくりと43 Odesの目指す桃源郷へと変化していくのが分かる。そして、ラスト曲 “UNU” で現実に引き戻そうとしている。この曲にBrian LucasのOld Million Eyeを思い浮かべてしまった。全曲インストで歌詞は無いけど、3人の吟遊詩人による思いが伝わってくる作品となっている。
Steven R. Smith
spike fiddle, baritone psaltery, organ, electric piano, bouzouki, harmonium, moog synth, electric guitar, spike cello, tapes