USボルチモアで結成されたアヴァンギャルドでエクスペリメンタルなバンドHorse Lords は、Andrew Bernstein(サックス、パーカッション)、Max Eilbacher(ベース、エレクトロニクス)、Owen Gardner(ギター)、Sam Haberman(ドラムス)による4人組で、2010年に活動を始めます。これまでに4枚のアルバムを発表しており、今年11月に5作目となる “Comradely Objects” がブルックリンのレーベルRvng Intl.よりレコード・オンリーでリリースされました。国内盤のみCDで、Planchaよりリリースです。ライナーノーツは天井潤之介が書いています。私にとっては珍しく国内盤CDを購入しました。
Horse Lords / Comradely Objects
ミニマルとポリリズムを駆使し、フリージャズ、ポストロック、クラウトロックの要素を絡めながら、独自の世界観をインストゥルメンタル・サウンドで表しています。アヴァンギャルド・ミュージックの巨匠La Monte YoungやJames Tenneyが好んだ “ Just Intonation Tuning System(純正律)” を用いて演奏しています。簡単に言うとギターのフレッドの位置を変えた自作のチューニング・ギターを使用して不協和音を作り出している。チューニング・ギターといえば、すぐにThurston Mooreを思い出してしまう私ですが。そこにサックス、エレクトロニクスがエクスペリメンタルに絡んできます。
さらにポリリズムで複雑に構成されたリズムからは、アフリカやインドといった音楽の影響をも感じさせる。1歩間違えるとバラバラになりそうな音像をスリリングに纏め上げています。小難しいことをやっていながらもポップでスンナリと聴くことが出来るが、心に入った瞬間にHorse Lords の蟻地獄といった世界へと引きずり込まれていきます。コロナの影響でライブのことを考えずに、レコーディングに集中出来たとメンバーは語っています。この4人の高い演奏力とアイディアが詰まった “Comradely Objects” は、新たなる時代の1枚ともいえる傑作です。
なお、本作の収益の一部は、中部大西洋地域の主要な移民団体CASAに寄与されることが、Horse LordsとRvng Intl.の共同で表明されています。インストゥルメンタル・バンドとして、これまでも様々な政治的メッセージを発してきた彼らの取り組みなのでしょうね。